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なんじゃこりゃ!?

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 なにを言い出すんだこの子は、と思っていると、ミサさんは拳を握り締めながら話し出す。

「私、何度か魔獣を討伐する任務に就いてますが……いつも怖くて、騎士の誇りも全て投げ出してその場から逃げ出したくなる時があるんです。コアを取り出す時も、倒したけど本当は死んでないんじゃないかって……手を出した瞬間に攻撃されるかもしれないんじゃないかって思っちゃうと、コアを取り出す作業も憂鬱で」
「なるほど」
「でもリアムさんは、私とは違って常に平常心で作業をされていて、凄いです!」
「いや……ははは、そうですかね?」

 僕はミサさんに言われた言葉に、心の中で『あれ、そう言われると……なんかおかしいかも?』と呟く。
 普通であれば、こんな魔獣が蠢く場所で、なんでこんなに平然としていられるんだろう。
 ミサさんのように怖いと思ったり、手が震えたりするんじゃないのか?

 でも、本当になんとも思わないんだ。

 怖いという気持ちが一切湧かず、畑で野菜を収穫する時のような気楽な気分で今までコアを取ってた。
 護られているとはいえ、いつ何時魔獣に襲われるか分からない状況で普通にしていられるなんて、おかしいだろ。
 そんなことを考えていたら、ミサさんが「いけない! 討伐組みと少し距離が開いちゃいました。リアムさん、移動しましょう」とミサさんも周囲のコアを抜き取る作業をすると、討伐組がいる方へ走り出す。

 その後ろをついていこうと思って駆け出した瞬間、視界の端で黒い何かが動いたと認識したと同時に――ミサさんの体が真横に吹っ飛んだ。

「……え」

 あまりに急に起こった出来事に思考が止まる。
 ミサさんが倒れた方へ顔を向けると、痛みに呻いた後に意識を手放したようだった。

 ゴクリと唾を飲み込みながらミサさんとは反対方向へ向けると、大木の裏側から伸びる以上に長い腕がゆらゆらと揺れているのが目に入る。

 なにか武器になるものはないかと周囲を見回すもなにもない。
 あるとすれば、吹き飛ばされたミサさんが持っていた剣くらいだ。
 一か八かだと走り出し、ミサさんが倒れているところの近くに落ちている剣に向かって手を伸ばす。
 あともう少しで剣に手が届く――そんな時。

 ドンッ、ドドドッ! と背中全体に重い衝撃が襲う。

 時が止まったような気がした。
 剣に手を伸ばした姿勢のまま、視線を自分のお腹側へと向けると――数本の黒い棒のようなものがお腹から地面へと突き刺さっているのが見えた。

 あ~……これは本当にヤバいかも。

 口と鼻から血を吐きながらそう思っていると、「リアム!」と言うリッカルド先輩とメルヴィン先輩の声が聞こえてきた。
 次に気付いたら、メルヴィン先輩の腕の中に抱き抱えられていた。

「リアム、リアム! おい、目お閉じるな!」
「くそっ、今日に限って治癒師がいないなんて!」

 二人の声にぼんやりしていた意識が少しだけハッキリする。
 視線を少しずらすと、数本の腕のようなものが地面に散らばっているのと、腕の本体である魔獣も地面に倒れているのが見えた。
 それから目をそらして僕を支えるように腕に抱いているメルヴィン先輩を見れば、治癒が使えたらと悔しそうにしている。

 女神様の祝福によって攻撃・防御魔法が最強の魔法師になってはいるけど、それ以外の治癒や浄化は使えないようだった。

 リッカルド先輩は周囲にいた部下の人達に気を失っているだけのミサさんを移動させ、残りは魔獣討伐と浄化を続けるよう指示を出す。
 そして僕と先輩達の三人になってから、リッカルド先輩が「いいかリアム、眠くても寝るな。絶対に目を閉じるな!」と声をかけ続けてくれる。

「メルヴィ……リ……カルドせんぱ」
「喋るなって!」
「ぼく、ぜんぜん……いた、くなく……て……でも、ねむぃ」
「おい、おいっ、リアム!」
「リアム君!」

 もうダメだ、眠くて眠くてしょうがない。

 そう思いながら瞼を閉じて――なぜかパッと目が覚めた。
 目を開けると驚愕した先輩達の顔が飛び込んできた。
 あれ? どうしました?

 今までの眠気はどこにいったのか、目は冴えているし頭もスッキリしたような感じがする。

 それになんだか……事務仕事をしてて酷くなった目のかすみもなくなってるし、体全体が軽いような?
 はて? と首を傾げながら背中を預けていたメルヴィン先輩の腕から起き上がると、メルヴィン先輩もリッカルド先輩も口をポカンと開けて呆けている。

「……り、リアム君?」
「おま……その姿は」
「え? 僕の姿?」

 一体全体なんなんだと不思議に思いながら自分の体を見て、「はぁーっ!?」と叫ぶ。
 全体的に小さくなった体や手足、低い声は声変わり前の高いものになってるし、なにより魔獣に襲われてボロボロになっていた服が学園時代に着ていた制服に変わっていた。

 なんじゃこりゃ!?
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