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女神との邂逅 1
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「リアム!」
「リアム君!?」
吐血しながら膝から崩れ落ちた僕を慌てたようにメルヴィン先輩が支え、僕の背中に深く刺さる弓矢に眉を寄せる。
僕とメルヴィン先輩を護るように剣を構えたリッカルド先輩が、視線を弓が飛んで来た方向へ目を向ける。
まだかなり距離はあるが、剣や弓を構える数体の骸骨兵士がこちらへと向かって来ていた。
飛んでくる何本もの弓を剣でなぎ払うリッカルド先輩が、僕の状態はどうなのだと聞く。
「肝臓と胃の部分を的確に狙ってきやがった。吐血してる!」
「矢を絶対抜くなよメルヴィン。傷穴から大量出血して最悪死ぬ可能性がある」
「分かってる! リアム君、痛いとは思うけど耐えて」
そう言いながらメルヴィン先輩が気休め程度だけど、と言って痛み止めの魔法薬を飲ませてくれたんだけど、口に含んで飲んでも吐き出してしまった。
「メルヴィン、移動するぞ! 援護を頼む!」
リッカルド先輩は一度僕をうつ伏せにすると、お互い向かい合うようにしてから両脇に手を入れて抱き上げ、僕の腋の下に首を差し入れてから左の肩の上に担ぎ上げた。
腕で僕の両足を固定し、手で手首を握って落ちないようにすると、自由になった右手に剣を握って走り出す。
その間メルヴィン先輩が後方がこれ以上進んで来れないように分厚い氷の壁を作りながら、僕達にシールドを張ったり、周囲から出て来た魔獣を魔法で殲滅していく。
薄目を開けてぼやける視界から見える先輩達は、傷付いて血だらけになりながら、体力や魔力が底をつきそうになっても必死に攻撃を繰り出して前へ進む。
「メルヴィン、こっちだ! そっちはダメだ! ここをまっすぐ行くぞっ!」
直感というのか、リッカルド先輩が選ぶ道はいつも比較的魔獣が少ない道だった。
「くそっ、これ以上はマジでリアム君がヤバい」
リッカルド先輩の服に染み込んだ僕の血を見て焦った風にそう言うメルヴィン先輩に、リッカルド先輩は何も言わずに口を引き結ぶ。
確かに僕の状態は良くないのかもしれないけど、メルヴィン先輩が使用する魔法の威力が極端に減ってきているのが分かるし、僕の手首を掴むリッカルド先輩の握力も弱くなってきていて――
皆が皆、限界が近付いてきていた。
絶望的な状況で、僕は体中に走っていた激痛が徐々に麻痺していくのが分かった。
手足が氷のように冷え、固まっていくような感じがしたと思ったら、次にウトウトとしてくる。
「メルヴィンこっちだ!」
グンッと体が動き、それによって意識が少しハッキリしてきた。
顔を上げて前方――進む先を見れば、苔が生えた木製の壊れかけた扉があった。
リッカルド先輩はその扉に走りながら思いっ切り蹴りつけ、扉が吹き飛ぶのと同時に中へ駆け込む。
「……な、なんだよここ」
「今までいた所とは……全く違った場所に出てきたようだね」
扉があった場所から勢いよく中に入ると、僕達は今までいた薄暗い回廊のような場所から、何もない真っ白な空間に立っていた。
歩みを止めて後ろをリッカルド先輩が振り返れば、扉の周辺で魔獣達がこちらの様子をじっと見つめていたんだけど、しばらくすると後退して闇の中へ消えていった。
どうやら魔獣はこの白い空間の中に入って来れないようだった。
先輩達はそれでも警戒を解かず、周囲になにかないのかと様子を窺っていたその時――
『この部屋に誰かがやって来るなんて……何百年振りでしょう』
突然この白い空間全体に妖艶な女性の声が響くのと同時に、僕達の目の前に一人の女性が立っていた。
額から口元までを白いレースで覆っているので顔は見えないが、頭には綺麗な花冠をかぶり、緩くウェーブがかかった金髪は地面に着くほど長い。
まるで神話が書かれた文献の中にある挿画から出て来たかのような服を着ている女性は、『この部屋にたどり着いた褒美に、そなたらの怪我を治してあげましょう』と言うと手を振る。
すると僕達の体を金色の光が包み込むと……傷付き裂けた皮膚は元の綺麗な素肌に戻り、破けて血だらけになった制服もダンジョンに入る前の綺麗な状態になっていて、僕の背中に突き刺さっていた矢も消えている。
全てが元の状態に戻っていた。
「リアム君!?」
吐血しながら膝から崩れ落ちた僕を慌てたようにメルヴィン先輩が支え、僕の背中に深く刺さる弓矢に眉を寄せる。
僕とメルヴィン先輩を護るように剣を構えたリッカルド先輩が、視線を弓が飛んで来た方向へ目を向ける。
まだかなり距離はあるが、剣や弓を構える数体の骸骨兵士がこちらへと向かって来ていた。
飛んでくる何本もの弓を剣でなぎ払うリッカルド先輩が、僕の状態はどうなのだと聞く。
「肝臓と胃の部分を的確に狙ってきやがった。吐血してる!」
「矢を絶対抜くなよメルヴィン。傷穴から大量出血して最悪死ぬ可能性がある」
「分かってる! リアム君、痛いとは思うけど耐えて」
そう言いながらメルヴィン先輩が気休め程度だけど、と言って痛み止めの魔法薬を飲ませてくれたんだけど、口に含んで飲んでも吐き出してしまった。
「メルヴィン、移動するぞ! 援護を頼む!」
リッカルド先輩は一度僕をうつ伏せにすると、お互い向かい合うようにしてから両脇に手を入れて抱き上げ、僕の腋の下に首を差し入れてから左の肩の上に担ぎ上げた。
腕で僕の両足を固定し、手で手首を握って落ちないようにすると、自由になった右手に剣を握って走り出す。
その間メルヴィン先輩が後方がこれ以上進んで来れないように分厚い氷の壁を作りながら、僕達にシールドを張ったり、周囲から出て来た魔獣を魔法で殲滅していく。
薄目を開けてぼやける視界から見える先輩達は、傷付いて血だらけになりながら、体力や魔力が底をつきそうになっても必死に攻撃を繰り出して前へ進む。
「メルヴィン、こっちだ! そっちはダメだ! ここをまっすぐ行くぞっ!」
直感というのか、リッカルド先輩が選ぶ道はいつも比較的魔獣が少ない道だった。
「くそっ、これ以上はマジでリアム君がヤバい」
リッカルド先輩の服に染み込んだ僕の血を見て焦った風にそう言うメルヴィン先輩に、リッカルド先輩は何も言わずに口を引き結ぶ。
確かに僕の状態は良くないのかもしれないけど、メルヴィン先輩が使用する魔法の威力が極端に減ってきているのが分かるし、僕の手首を掴むリッカルド先輩の握力も弱くなってきていて――
皆が皆、限界が近付いてきていた。
絶望的な状況で、僕は体中に走っていた激痛が徐々に麻痺していくのが分かった。
手足が氷のように冷え、固まっていくような感じがしたと思ったら、次にウトウトとしてくる。
「メルヴィンこっちだ!」
グンッと体が動き、それによって意識が少しハッキリしてきた。
顔を上げて前方――進む先を見れば、苔が生えた木製の壊れかけた扉があった。
リッカルド先輩はその扉に走りながら思いっ切り蹴りつけ、扉が吹き飛ぶのと同時に中へ駆け込む。
「……な、なんだよここ」
「今までいた所とは……全く違った場所に出てきたようだね」
扉があった場所から勢いよく中に入ると、僕達は今までいた薄暗い回廊のような場所から、何もない真っ白な空間に立っていた。
歩みを止めて後ろをリッカルド先輩が振り返れば、扉の周辺で魔獣達がこちらの様子をじっと見つめていたんだけど、しばらくすると後退して闇の中へ消えていった。
どうやら魔獣はこの白い空間の中に入って来れないようだった。
先輩達はそれでも警戒を解かず、周囲になにかないのかと様子を窺っていたその時――
『この部屋に誰かがやって来るなんて……何百年振りでしょう』
突然この白い空間全体に妖艶な女性の声が響くのと同時に、僕達の目の前に一人の女性が立っていた。
額から口元までを白いレースで覆っているので顔は見えないが、頭には綺麗な花冠をかぶり、緩くウェーブがかかった金髪は地面に着くほど長い。
まるで神話が書かれた文献の中にある挿画から出て来たかのような服を着ている女性は、『この部屋にたどり着いた褒美に、そなたらの怪我を治してあげましょう』と言うと手を振る。
すると僕達の体を金色の光が包み込むと……傷付き裂けた皮膚は元の綺麗な素肌に戻り、破けて血だらけになった制服もダンジョンに入る前の綺麗な状態になっていて、僕の背中に突き刺さっていた矢も消えている。
全てが元の状態に戻っていた。
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