招き猫のまー君と癒しのマスター

ヤクザの兄貴分と舎弟3

「実は…半グレ集団とトラブルになってしまって…格好がつかないので、兄貴達には知られたくなかった。それが始まりです」

兄貴分は黙って話を聞く。

「金を要求されて…組のツテを使えばドラッグを売れる。そうすれば、奴らも俺をヤクザと信じるし、金の問題も解決できる。そう思って始めました」

「それで、売上はどこへいった？」

「それが…奴ら調子に乗りやがって…次々にドラッグを要求して、奴らの懐に…」

「そうか。分かった。詳しい事は後で聞く」

「兄貴…本当にすみませんでした！俺…どうなってしまうんでしょうか？」

「俺もお前は可愛いもんよ。一緒に頭下げてやる」

「兄貴…！」

舎弟の表情は僅かな希望を見つけて少しだが明るいものに見えた。

「だが、落とし前はつけないとな…それはお前もよく知ってるやろ？」

「……」

舎弟は俯いて、何も喋らなくなった。

兄貴分は、スマホで電話を始める。

「こっちに車を回してくれや。後は詳細を聞くだけや」

もう舎弟はカウンターの机の一点を見つめるだけ。

「半グレの事は任せろや。舐められたらあかん商売やしな。仇は取る」

まるで聞こえていないように固まる舎弟。

「そろそろ行こか…」

舎弟は立ち上がらない。兄貴分の顔を見る事すらしない。

「勘定頼むわ。迷惑かけて申し訳なかった」

兄貴分は、多めに支払いをして、舎弟の首根っこを掴む。腰が抜けて歩けない舎弟を引きずって店のドアを出る。

マスターは、何も言わずにその様子をただただ見守るだけだった。

その後、兄貴分も舎弟も、店に姿を見せる事はなかった。