招き猫のまー君と癒しのマスター

浮気をされたサラリーマン4

まー君が客引きをする前に、バーの扉が開く。そこには、昨日のスーツ姿の男、そして、綺麗な女性がいた。

「いらっしゃいませ」

二人はカウンターに座り、ドリンクを頼む。

「すみません。ビールを」

「こんなオシャレなお店でビール！？私はおすすめカクテルで！」

マスターは注文された飲み物を用意して、カウンターに静かに置いた。

「昨日はありがとうございました！マスターの言う通り、しっかりと話をして良かったです！」

「早とちりし過ぎよ。勘弁してよね」

「実はですね…」

話によると、彼女と一緒にいた男は、弟だった。そして、実家から連れ出したペットの犬が、環境の変化により体調を崩した。そのために頻繁に連絡を取ったりしていたらしい。

「いやー、本当に焦りましたよ。まさか弟さんだったなんて」

「浮気を疑いやがって、この野郎！」

女性は男性の脇腹を目掛けて拳を振るった。そして、お互いに笑顔だった。

「マスターに話をして、大切な人だからこそ、話をしないと。その勇気を出す事ができました」

男は精一杯のお礼を伝える。

「昨日は迷惑を掛けたみたいで申し訳ありません」

女性は謝る。

「いえいえ、こうして、お二人が楽しくお酒を飲む事ができる。それだけで私は嬉しいものですよ」

そうして、昨日とは違った明るい雰囲気でお店は包まれた。

「ありがとうございました！また来ますね！」

二人はそう言って、お店を出て行った。マスターとまー君は、二人でお見送りをした。

まー君はカウンターの上に座り込む

「こらこら、そこには乗ったらいけないよ」

マスターは優しくまー君を撫でる。そして

「本当に弟なのかねえ。まぁ、二人が幸せそうにしているから良いものかな」

静かに座って、熱いコーヒーを飲みながらマスターはまー君に話しかけたのだった。