目が覚めたらそこは未来

みゆき

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記憶を辿る

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ファイルに一通り目を通して、全てを思い出した。

学校ではまるで奴隷。働く場所は失われた。家では壊れた母がよく分からない事を言っている。弟はたまに帰ってきては金をせびる。

もう僕は生きている意味が分からなくなっていた。それくらい、僕も母と同様に心が壊れていたのだろう。

何度も何度も、自ら命を投げ出そうとした。しかし、その一歩を踏み出す事ができなかった。

そう、あれは踏切の前でずっと立ち尽くしていた時だった。

「死にたいのかい?」

見知らぬ綺麗なスーツを着たおじさんが声をかけてきた。

いつもなら、そんなヤバそうな人は無視をしていたけれど、壊れた僕は突っかかる。

「はぁ…?だとしたら、あなたに何か関係ありますか!?」

「踏切に飛び込んだら多くの人に迷惑が掛かるものさ。そして、家族に多額の賠償金請求がいく」

「だからなんですか!?死ぬ事は悪い事ですか!?」

スーツを着たおじさんは、内ポケットから名刺を取り出した。そしてそれを僕に手渡す。

「本当に死ぬ覚悟ができたなら、連絡してきな」

そして、後ろを振り返らず、歩いていき、そのまま視界から消えた。

名刺に目をやると、怪しい内容だった。

国立生命研究所  人材センター
小林  隆

そのように記載された名刺を見ながら、僕は踏切の音を聞いていた。

ファイルの中には、その時の僕の感情まで記載されてあった。そう、聞き取り調査までされていたから。

本当に死ぬなら、このような機関に命を任せたら何かの役に立てるかな。

そう思って、翌日には電話をしていたようだ。

連絡をすると、近所の喫茶店に呼ばれた。そこで、再び、スーツの小林と出会う事になる。

「本当に良いのか?もう後戻りはできないぞ?」

「はい。もう決めた事なので」

喫茶店で飲み物をご馳走になった後、店の前に高級そうな車が迎えに来ていた。

それに乗って、僕は国立生命研究所へ向かう。
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