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魔法剣士予選大会編
第三十七話 筋肉VS筋肉
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タチカワス領の魔法剣士部隊との対戦が始まる。
初戦はトマス対フロム・テューブ。
相手は二つ星の『火』のスキルを授かった剣士だ。
単純に星の数であればトマスは分が悪いが、彼は剣技と魔力の濃縮に秀でている。
相手の大きな炎を、トマスの小さな炎が貫通し、剣技でも圧倒する。
トマスの双剣が相手の剣を破壊し、あっという間に決着が付いた。
「へっへー。どんなもんだい! 一つ星の星の実力は」
観客席から、「一つ星コール」が沸き上がる。どうやら、中年の男たちに人気のようだ。
「ちっ、オイラのファンはおっさんばかりかよ」
魔法剣士を夢見たが、一つ星のために諦めた者たちにとって、トマスは文字通り「星」なのだろう。
二人目の相手はグランデユオス。大きな体躯の戦斧使いだ。
ここで、相性の悪さが邪魔をする。重い戦斧をまるで剣のように振り回す。
その攻撃は、防御する小柄なトマスさんの体を吹き飛ばす。
風の属性を纏った戦斧は、トマスさんの小さな炎の矢の勢いも殺し、成すすべがなくなる。
闘技場の端に追いやられたトマスさんは、何度も壁に叩きつけられ、ついには膝を付いてしまった。
審判員が試合を止め、グランデュオスの勝利を宣言する。
トマスさんは地面を叩いて悔しがっていた。
「ちっきしょう。あれじゃぁ手も足もでねぇ……ありゃぁ反則だぜ」
「ハハハ。トマス君。私が君の仇を取ってやろう」
トマスさんと入れ替えるように、意気揚々と闘技場の中心に向かうケカスさんは余裕の表情を見せる。
「『風』同士、正々堂々勝負と行こうじゃないか」
「チビの次はヒョロガリか。相手にならんな」
「貴様、愚弄する気か」
試合が始まると同時に、ケカスさんの風の居合が飛ぶ。
相手は振り回す戦斧に纏わせ、風を竜巻を繰り出した。
風同士がぶつかり、闘技場に台風のような強い風が吹く。
一瞬、互角のように見えた戦いは、段々と優劣の差を見せ始める。
ケカスさんに詰め寄るグランデュオスの竜巻は、次第に大きくなり、その回転速度は一層激しくなるった。
「くっ……逃げ場がない」
竜巻に巻き込まれ、息ができないのか苦痛に顔を歪めている。
しばらく耐えていケカスさんたが、竜巻が収まる頃には窒息し、苦悶の表情のまま、白目を剥いて膝をついていた。
「勝者! グランデュオス」
同じ星の数、同じ『風』属性の勝負は、相手に軍配が上がった。
担架に乗せられ運ばれるケカスさんに目をやりながら、オッツマーミさんが立ち上がる。
「よし、やっと俺の出番か」
中堅のオッツマーミさんは、相手に劣らないほどの体躯をしている。
彼は、体格に似合わず器用な人で、『土』属性を濃縮した岩の魔法剣はオーレス領の魔法剣士部隊一の威力を誇る。
嬉しそうにニヤつくグランデュオスが戦斧の柄で肩を叩きながら言う。
「やっと骨の有りそうな奴が出てきたか」
「ガッハッハ。力比べと行こうか。筋肉ダルマ」
「筋肉ダルマは、おまえもだろう。ふふふ。腕が鳴るぜ」
審判員の合図で、二人が同時にスキルを発動させる。
「『土』岩槌」
オッツマーミは剣に魔力を圧縮し、岩を作り出す。
相手も、戦斧に風の渦を纏わせ振りかぶる。
「うぉりゃぁぁ」
「おぉぉぉぉ」
岩の槌と風の斧とがぶつかると、鈍い音が闘技場に響く。
互角。お互いに、ニィと口角を上げると、続いて二撃目。
互角。拮抗した二人は互いに距離を取る。次の攻撃準備に入ったのは、グランデュオスだった。
先ほど、ケカスを倒した大きな竜巻を繰り出す。
この技は危険だ。巻き込まれると逃げることができず、窒息させられてしまう。
息ができなければ、魔法剣の発動も困難になり失神は必至だ。
竜巻が、オッツマーミさんの眼前まで迫りくると、竜巻をよけようとせずに剣を地面にさせてスキルを発動させる。
「『土』岩の壁」
刺した剣先の地面が盛り上がり、大きな壁となる。
「ガッハッハ。そよ風そよ風」
「くっ、面倒くさいスキルだな」
だが、それだけでは終わらなかった。
オッツマーミが作り出した壁は次第に大きくなり、竜巻ごとグランデュオスを覆う。
岩の壁に完全に閉じ込められた相手は真っ暗なその中で何を思うのだろうか。
「よし! 仕上げと行こうか!」
彼の体格からはは信じられないくらい高く跳躍し、巨大な岩の槌を剣に纏わせ、窯状の岩ごと叩き割る。
「『土』崩落ぅぅぅ!」
まるで洞窟の崩落が起きたような轟音が鳴り響く。
辺りは土煙が上がり、崩れた岩の下にグランデュオスが倒れていた。
「勝者! オッツマーミ」
剣を高々に掲げ雄叫びを上げる。
「うぉぉぉぉ! 魔法剣は筋肉だぁぁぁ」
「オッツマーミさん。やっぱり僕の魔法剣の座学を理解していなかったんだな……」
長い外套に身を包むキツネ目の長身の剣士。
相手側の中堅、オーガ・コーエンが闘技場の中央に向かって歩いてくる。
「脳筋同士の戦い、面白かったぞ」
「あん? おまえが次の相手か?」
――さっきのタチカワス領とミタカーシ領の戦いには居なかった人だ……。
僕は、このオーガ・コーエンの醸し出す不気味な雰囲気にがとても気になった。
初戦はトマス対フロム・テューブ。
相手は二つ星の『火』のスキルを授かった剣士だ。
単純に星の数であればトマスは分が悪いが、彼は剣技と魔力の濃縮に秀でている。
相手の大きな炎を、トマスの小さな炎が貫通し、剣技でも圧倒する。
トマスの双剣が相手の剣を破壊し、あっという間に決着が付いた。
「へっへー。どんなもんだい! 一つ星の星の実力は」
観客席から、「一つ星コール」が沸き上がる。どうやら、中年の男たちに人気のようだ。
「ちっ、オイラのファンはおっさんばかりかよ」
魔法剣士を夢見たが、一つ星のために諦めた者たちにとって、トマスは文字通り「星」なのだろう。
二人目の相手はグランデユオス。大きな体躯の戦斧使いだ。
ここで、相性の悪さが邪魔をする。重い戦斧をまるで剣のように振り回す。
その攻撃は、防御する小柄なトマスさんの体を吹き飛ばす。
風の属性を纏った戦斧は、トマスさんの小さな炎の矢の勢いも殺し、成すすべがなくなる。
闘技場の端に追いやられたトマスさんは、何度も壁に叩きつけられ、ついには膝を付いてしまった。
審判員が試合を止め、グランデュオスの勝利を宣言する。
トマスさんは地面を叩いて悔しがっていた。
「ちっきしょう。あれじゃぁ手も足もでねぇ……ありゃぁ反則だぜ」
「ハハハ。トマス君。私が君の仇を取ってやろう」
トマスさんと入れ替えるように、意気揚々と闘技場の中心に向かうケカスさんは余裕の表情を見せる。
「『風』同士、正々堂々勝負と行こうじゃないか」
「チビの次はヒョロガリか。相手にならんな」
「貴様、愚弄する気か」
試合が始まると同時に、ケカスさんの風の居合が飛ぶ。
相手は振り回す戦斧に纏わせ、風を竜巻を繰り出した。
風同士がぶつかり、闘技場に台風のような強い風が吹く。
一瞬、互角のように見えた戦いは、段々と優劣の差を見せ始める。
ケカスさんに詰め寄るグランデュオスの竜巻は、次第に大きくなり、その回転速度は一層激しくなるった。
「くっ……逃げ場がない」
竜巻に巻き込まれ、息ができないのか苦痛に顔を歪めている。
しばらく耐えていケカスさんたが、竜巻が収まる頃には窒息し、苦悶の表情のまま、白目を剥いて膝をついていた。
「勝者! グランデュオス」
同じ星の数、同じ『風』属性の勝負は、相手に軍配が上がった。
担架に乗せられ運ばれるケカスさんに目をやりながら、オッツマーミさんが立ち上がる。
「よし、やっと俺の出番か」
中堅のオッツマーミさんは、相手に劣らないほどの体躯をしている。
彼は、体格に似合わず器用な人で、『土』属性を濃縮した岩の魔法剣はオーレス領の魔法剣士部隊一の威力を誇る。
嬉しそうにニヤつくグランデュオスが戦斧の柄で肩を叩きながら言う。
「やっと骨の有りそうな奴が出てきたか」
「ガッハッハ。力比べと行こうか。筋肉ダルマ」
「筋肉ダルマは、おまえもだろう。ふふふ。腕が鳴るぜ」
審判員の合図で、二人が同時にスキルを発動させる。
「『土』岩槌」
オッツマーミは剣に魔力を圧縮し、岩を作り出す。
相手も、戦斧に風の渦を纏わせ振りかぶる。
「うぉりゃぁぁ」
「おぉぉぉぉ」
岩の槌と風の斧とがぶつかると、鈍い音が闘技場に響く。
互角。お互いに、ニィと口角を上げると、続いて二撃目。
互角。拮抗した二人は互いに距離を取る。次の攻撃準備に入ったのは、グランデュオスだった。
先ほど、ケカスを倒した大きな竜巻を繰り出す。
この技は危険だ。巻き込まれると逃げることができず、窒息させられてしまう。
息ができなければ、魔法剣の発動も困難になり失神は必至だ。
竜巻が、オッツマーミさんの眼前まで迫りくると、竜巻をよけようとせずに剣を地面にさせてスキルを発動させる。
「『土』岩の壁」
刺した剣先の地面が盛り上がり、大きな壁となる。
「ガッハッハ。そよ風そよ風」
「くっ、面倒くさいスキルだな」
だが、それだけでは終わらなかった。
オッツマーミが作り出した壁は次第に大きくなり、竜巻ごとグランデュオスを覆う。
岩の壁に完全に閉じ込められた相手は真っ暗なその中で何を思うのだろうか。
「よし! 仕上げと行こうか!」
彼の体格からはは信じられないくらい高く跳躍し、巨大な岩の槌を剣に纏わせ、窯状の岩ごと叩き割る。
「『土』崩落ぅぅぅ!」
まるで洞窟の崩落が起きたような轟音が鳴り響く。
辺りは土煙が上がり、崩れた岩の下にグランデュオスが倒れていた。
「勝者! オッツマーミ」
剣を高々に掲げ雄叫びを上げる。
「うぉぉぉぉ! 魔法剣は筋肉だぁぁぁ」
「オッツマーミさん。やっぱり僕の魔法剣の座学を理解していなかったんだな……」
長い外套に身を包むキツネ目の長身の剣士。
相手側の中堅、オーガ・コーエンが闘技場の中央に向かって歩いてくる。
「脳筋同士の戦い、面白かったぞ」
「あん? おまえが次の相手か?」
――さっきのタチカワス領とミタカーシ領の戦いには居なかった人だ……。
僕は、このオーガ・コーエンの醸し出す不気味な雰囲気にがとても気になった。
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