魔王様、勇者を育てる。

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第一章

13.魔王様、冒険者になる。

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――それから時間が経ち、次の日の朝を迎えている。


早速キース達は、グリーン・ボアの狩猟を行なうために、冒険者ギルドにやってきていた。


魔物を狩猟し、その素材を街で取引するには冒険者ギルドの許可が必要になるのだ。


「――申し訳ございません。
今日は狩猟に出る冒険者が少なく、とても助かるのですが・・・お子様お一人での狩猟は許可する事ができません」


シャルがギルドの許可を貰いに受付に行くと、許可できないと門前払いされてしまった。


「むぅ・・・ダメなの?・・・」


シャルの見た目が子供だという理由で、許可できないようだ。


「――では、俺達が同行するということではどうだろうか?」


「ご主人様?・・・」


その様子を見兼ねて、キースがそう提案した。


実際シャル一人でもグリーン・ボアの狩猟ぐらい余裕なのだが、狩猟の許可が出ないようなので、仕方なく代わりに行なう。


「・・・それでしたら大丈夫です。
冒険者申請を行ないますので、少々お待ちください」


キースの提案にはすぐに許可がおりた。


――それから少し経ち、キース達は冒険者申請が無事済んだことで、グリーン・ボアの狩猟に向かっている。


「・・・不思議なものだ」


その道中、冒険者ギルドで手渡された許可証であるカードを見つめながらキースが呟く。


「どうしました、キース様?」


呟きにいち早く気付いたのはすぐ側にいたベルであり、様子を伺うように聞いてくる。


「いや、なぜ人間は外見だけで判断するのだろうなと思ってな」


それは先程の冒険者ギルドでの出来事である。


シャルの見た目は子供ではあるが、実力では冒険者の力を優に超えている。


仮にギルドにいた冒険者が束になってかかっても勝てないだろう。


「ふんふん・・・」


今はさっきの出来事を忘れて嬉しそうに歩いているシャルだが、好戦的な種族なら一つ間違えばギルドが無くなってもおかしくはなかった状況だ。


「――やはり人間達には、まだ魔力を見る力が貧しいのでしょうか」


ベルはそう解釈する。


人間達には、それぞれの魔力量を見る力がないのは知っている。


そこで今から数百年前に、魔王まおうであるキースは自らの力である『魔眼まがん』の効果を水晶に取り込み、人間界へと送ったことがある。


人間の魔力でも発動できるように工夫しており、量産可能なように人間界のモノで生み出した。


魔力を計測する事で、効率よく魔力を高めて強くなってもらう計画だった。


だが、今の様子では、それが人々の手に行き渡っていないことが分かる。


――実はそのアイテムは人間達の間で『魔力水晶まりょくすいしょう』という名が付けられ、簡単に魔力量がわかることから、高級品として出回っている。


そのため一部の者しか所持しておらず、キースの考えていた計画のようにはいかなかったのだ。


人間と魔族の価値観の違いでもあった。
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