魔王様、勇者を育てる。

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第一章

1.魔王様、勇者を探す。

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ここは、自然に愛されている美しい程の景色が広がる土地ーー【人間界にんげんかい】。


その中央にそびえ立つ巨大な街ーー【王都おうと】。


街は巨大な城を中心に活気ある街並みをそろえ、溢れんばかりの人で賑わっている。


そんな街を悠然ゆうぜんと歩く魔王まおうとその配下ーーベルがいた。


魔王様まおうさまーーいえ、キース様。
城を空けてしまってよかったのですか?」


魔王ことーー【キース・レシア】の後を追うベルが心配そうに尋ねる。


二人は今、魔王城を留守にして王都の街を歩いている。


目的はキースが決めたーーということにある。


「問題はないだろう。
この五百年の間、誰ひとりとして城まで訪れた者はいないからな・・・」


魔王城にいるのは、魔王であるキースとその配下のベルーー二人だけだ。


その二人が留守にしているということは今、魔王城はもぬけの殻。


無数のトラップはあるとはいえ、攻め放題の状況に等しい。


「心配ならベルが城に残っていてくれてもよかったのだぞ」


「そんなことできません。
キース様おひとりで敵陣に向かわれたなどいえば、他の魔族達に何を言われるか・・・」


まさか魔王が自ら敵陣の中心にいるなど誰も考えないだろう。


下級魔族に敗れる人間達に魔王を倒す術はないとはいえ、おひとりで向かわれたとなれば、城を空ける以上に心配が尽きない。


「まぁ、城のことは心配しなくても大丈夫だ。
何かあればすぐにわかる」


キースは不安そうなベルを心配してそう言った。


実は魔王城を形成している核となる部分には魔王の力の一部が使われている。


そのため、城と魔王自身には繋がりがあり、離れた場所にいたとしてもすぐに異常を感知し、一瞬で城に戻ることができる。


「わかりました。
ーー所でキース様、どちらに向かわれているのですか?」


ベルはキースに着いてきただけで、行き先などは聞かされていないことを思い出す。


「とりあえずは、現在の勇者を見ておこうと思ってな・・・」


「まぁ!勇者にお会いになるのですか?」


「いや、遠目とおめからでも姿が見れたらそれでいいと考えている」


キースはまだ勇者を見たことがないため、一目ひとめ見ようと大都市へ来ていた。


ここでなら、勇者の情報が手に入るのではないかと考えて。


二人は情報を持っていそうな人間を探して、時折周りを見渡しながら歩いてゆく。


「ーーん?」


すると、二人の存在がどこか注目を集めているように感じる。


「キース様ーー私達、見られていませんか?」


キースの疑問にベルも気づいたようで周りを警戒していた。
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