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38話

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「君は・・・」


そこにいたのは見覚えのある一人の冒険者だった。


「初めまして、ルトといいます」


その冒険者は、トップ冒険者パーティー【竜の爪ドラゴン・ネール】の新メンバーとして加入していた人物ーー【弓使いのルト】だった。


僕の後釜ともいえる存在だ。


「何か御用ですか?」


僕は【竜の爪ドラゴン・ネール】のリーダー【大剣使いのロイ】に会った時、偶然見かけただけなので面識はないはず。


「突然声をかけてしまって申し訳ありません。
一度ライドさんにお会いしたいと思い、声をかけさせていただきました」


「僕にですか?」


ルトは【パレード】に用があるのではなく、僕だけに用があるみたいだった。


「はい。
竜の爪ドラゴン・ネール】メンバーから聞いたのですが、ライドさんがギルドに情報提供を行なっていたというのは本当ですか?」


「え?
確かにそうだけど、それが?」


ルトは僕にギルドへの情報提供者なのか聞きたかったようだ。


特に内緒にしていたわけでもないのですぐに答えるが、今聞かれる意図がわからない。


「やはり。
僕は【竜の爪ドラゴン・ネール】メンバー全員が情報提供者だと思っていたので驚きました」


ルトはこれまでギルドの情報に幾度か助けられたことがあり、その協力がしたくて【竜の爪ドラゴン・ネール】に加入したという。


だけど、【竜の爪ドラゴン・ネール】メンバーはそれに関与しておらず、すべて元メンバーが1人でやっていたと聞いた。


そこでこうして会いにきたのだ。


「勘違いさせて悪かった・・・」


「いえ、むしろ1人の力だけで冒険者達の力になれるとわかり、勇気をもらいました」


実は、ルトはあの攻略の後、【竜の爪ドラゴン・ネール】の加入を辞退したのだという。


理由として、手助けする人がもうそのパーティーにいないこと。


そして、言葉通りに1人でも情報提供ができると知り、自身でパーティーを作る決心をしたそうだ。


ーーそれからしばらく話をしてルトと別れた。


僕が話をしてわかったのは、ルトは人柄もよく、良いパーティーリーダーになれると思った。


それとルトの話では、【竜の爪ドラゴン・ネール】メンバーは全員怪我の完治はしているそうだ。


ただ、ルトがパーティー加入を辞退して、今、失敗の噂が流れていることからメンバーが集まらないらしい。


トップ冒険者パーティーの噂というのは怖いもので、一度の失敗だけで様々な噂が流れている。


僕達が知らなかっただけで、変な憶測までたてられているようだ。


例えば、ルトがパーティー加入を辞退した件も「メンバー内でトラブルが起きた」という根も葉もない噂になっている。


実際それは僕が解雇された時で、ルトは関係ないのだ。


そんな感じで、しばらく【竜の爪ドラゴン・ネール】の復帰は難しいだろう・・・。

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