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25話

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「大丈夫なのですか?」


冒険者は本来、5人までしかパーティーを組むことができない。


それは【後衛職サポーター】の効果が、自分を含めて5人までしか効果が発動しないからである。


僕達【パレード】の場合だと、僕の『付与ふよ』の効果と【回復職ヒーラーのエレナ】の『回復ヒール』が対象外になる。


もし僕達のパーティーに【受付嬢のミリア】が加わった場合、ミリアだけが効果を受けられない状態だ。


「問題ありません。
伊達にギルド職員をやっていませんから、自分の身ぐらいは守れますよ」


僕が心配するまでもないように、笑顔でミリアが「大丈夫」と答えた。


「はい、ミリアさんなら大丈夫です。
こう見えて、凄腕の冒険者ですから・・・」


すると、【大剣使いのクイナ】が過去のミリアを知っているように擁護ようごしてくる。


「もうやめてよ、クイナ・・・。
それは昔の話でしょ。
今は受付のギルド職員なんだから」


クイナの話は本当のようでミリアが照れたように言う。


「ごめんなさい、つい・・・」


クイナとミリアの口振りから2人は昔馴染みであるのはわかった。


実はあまり知られてはいないが、ギルド職員は全員、元々は冒険者であり、それなりの経験をしたものしか職員にはなれない決まりになっている。


クイナの話が本当なら心配は不要ということだろう。


「ただ、私の心配はしなくていい。
だけど同時に私がパーティーに関与することもできないから気を付けてください。
無理だと思ったら逃げること!」


「わかりました」


それはギルド職員であるミリアがいるからといって、頼ることなくパーティーメンバーだけで解決するようにと注意喚起だった。


あくまでも今回、ミリアが同行するのは監視役に過ぎないのだから・・・。


ーー今回、急遽ミリアの参加が決まったことで、このまましばらく個室を利用することにした。


次の攻略である、52階層の情報をミリア含めて話し合う必要があるからだ。


昨日は僕が1人、淡々と情報を話すだけだったが、今回は情報を知るミリアがいるために2人で話す。


僕が話したことに対して、ミリアが冒険達に伝えているように補足を加えてくれる。


「ありがとうございます、ミリアさん。
ミリアさんのおかげで、より詳細な攻略ルートが決められそうです」


「いえいえ。
私としても、まだまだ冒険者さん達に伝えないといけないことがあるのだと再確認することができました」


僕とミリアがお互いに情報を出したことで、お互いが見落としている箇所があることを知り、有意義なものだった。


攻略ルートもスムーズに決まり、後は明日の本番を迎えるだけだ。


「ーー私達、少しミリアさんとお話があるので、ライドさんはお先にどうぞ」


「わかりました」


話も終わり、ギルドから出ようとすると、クイナ達はまだミリアと話があると残る。


僕は改めて1人になり、再度明日のことを考え始めるのだった。

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