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第36話 激突!水鉄砲サバイバルゲーム!
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「じゃあまずは一旦全員、一定の距離を取って離れてね。そして私が合図したらゲーム開始で」
竹中に言われて、みんな少しずつ距離を取る。
さてこの勝負、ポイを破って勝利すると言っても、簡単に破れるものかは腕が問われる。ゲームではFPSをそこそこやっている俺だが、運動神経は凡人だ。むしろすみれや、竹中の方が良さそうな気さえする。
彩夏ちゃんに関しては未知数だが、皆それなりにVTuberとしてゲームはそれなりには上手だから、油断は出来ないな。しかし唯一の男として、ここはきっちり勝利をもぎ取りたいものだ。俺は手に持ったウォーターガンのトリガーに無意識に力が入る。
静かに潮風と数匹のカモメの鳴き声が聞こえてくる。
「じゃあ、よーいドン! って言ったら開始ね」
一瞬みんなが動き出そうとして固まる。しばらく虚しい間がこの空間を包み込む。
「…………」
全員が無言で何も言わない。こいつまたベタな事をしやがって。
「朱里、真面目にやって」
冷たい声音ですみれがまた竹中の足に向ってウォーターガンを撃つ。
「もー、ちょっとしたお約束じゃん。じゃあよーいドン!」
戦いが始まった。みんな一旦ちりぢりに離れて行くと思いきや、俺以外の3人がいきなり走り出して、ウォーターガンをこっちに遠慮なく撃ってきた。
「渉さん覚悟ですの!」
「まずは兄貴のポイを潰してやるわ!」
「赤坂君さっそく退場してもらうからね!」
3人は全く遠慮と言う言葉をこの世界から抜けたかのように、バシュバシュと躊躇いなく撃ちまくってくる。予想外の展開に動揺して俺はどこか逃げる場所を探す。くそっ、どうしてあいつらこっちばかり撃ってくるんだ。
「おいっ、お前ら何で俺だけ集中砲火するんだー!」
必死に岩壁に向って逃げながら走るが、背中にバシバシと水が当たってくる。まるで打ち合わせでもしたかのような連携だ。しかしそんな密談をしている様子なんてなかったのに。
「どうしてって、そっちの方が面白いに決まってるじゃん。ねぇ、すみれ、彩夏ちゃん?」
「当たり前じゃない」
「わたくしが一番に渉さんのポイとハートを撃って差し上げますの」
3人ともめちゃくちゃ楽しそうに、しかし狙ってポイを潰すために連射する。しかしどうにか盾には丁度良い岩に隠れる事に成功した。ここで迂闊に動けば狙い撃ちに遭うだけだ。少しだけ顔を出して様子を見るとするか。
俺はそっと顔を出すと、じりじりと近づく竹中とすみれがいる。ここから撃って出ても良いが、さすがに分が悪いよな。しかし彩夏ちゃんがいないな。ガンのタンクに水を補給しているのだろうか。
するとちょんちょんと、誰かに肩を叩かれた。
「渉さん、こっちですの」
とっさに後ろを振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた彩夏ちゃんがそこには居た。
「うわっ、彩夏ちゃんいつの間に回り込んでっ!?」
「わたくしは途中からこの岩場に回り込んでいましたの。すぐに渉さんが来るだろうと思って」
可愛らしく喋りながら額のポイを撃とうとしてくる。だめだ、やばい、やられる。とっさに全速力で走り出して岩場から俺は離れた。しかしそこには当然すみれと竹中がいる。完全に挟まれた状態だ。どうする。どうする俺。
「さぁ兄貴、覚悟してね」
「男の子を追い詰めるのって何か興奮する~!」
おいおい竹中の奴、変な発言するの止めてくれないか。こんな状況でこっちが恥ずかしいわ!
「渉さん、覚悟ですの!」
「くっ、やはり挟まれたか」
まさに背水の陣。ここでやられるなら、誰か1人でもポイを撃ち破って、道連れにするしかない。女性陣全員がじりじりと近づき、俺のポイを撃ち破らんがために狙いを定めてくる。そして、全員が一斉に掃射してきた、と思ったが一向に誰も撃ってこないではないか。
――スカッ、スカッ。ウォーターガンの空気だけが漏れる音が漏れてくる。
「あれ? あ、やっば。タンクに水が入ってないじゃないの」
すみれが予定外の事に焦っている。
「わたくしもさっき撃ち尽くして、水が入ってないですの」
「げっ。私もだ。水補給してくるから待っててね、赤坂君」
3人とも引きつった笑顔で海へと向かおうとしていく。が、そんな時間を与える俺ではない。先程からこっちは全然撃ってないから、タンクに水はタップリと入っている。
「お前らさっきはよくも3人で遠慮なく撃ってきやがって、覚悟は出来ているんだろうなぁ~」
形勢逆転してこっちが3人にゆっくり近づいていく。
「駄目だよ赤坂君。女の子をそんなふうに一方的に撃つのは、良くないよ。ここは冷静になって」
「そうそう、兄貴。女の子を撃つのは道徳的に良くないって、ほら学校でも習ったでしょ?」
2人が後ずさりながら調子の良いことを言ってるが、
「一体どこの道徳の教科書に載ってるんですかね、それは」
俺は構わず追い詰めていく。
「わたくしは渉さんに撃たれるなら、本望ですの~」
彩夏ちゃんはウォーターガンを地面に置き、逆に近づいてくる。そこはまぁスルーして、まずはすみれと竹中のポイを撃つとしよう。必死に逃げようとする2人を追いかけて、俺は撃ちまくる。
「逃げても無駄だぞ、2人とも。俺のタンクの水はたっぷり入ってるからなぁ」
ウォーターガンのトリガーに力が入る。そしてまずは竹中に向って水を発射させる。
「この卑怯者。私を最初に狙うとは。このシスコン!」
「今その台詞とこの状況は全く関係ないだろ!」
逃げ回る竹中が一瞬こっちを向いた瞬間、見逃さず再度ウォーターガンを発射。見事額のポイにヒットし、破る事に成功した。さすが俺。ゲームで培ったエイム力が今発揮されている気がするぞ。
「まさか、私が最初に陥落してしまうとは……。無念」
竹中は仕方なくウォーターガンをバケツに戻しに行く。よしよし、俺の腕もあながち悪くないな。となれば、今度のターゲットはすみれだな。彩夏ちゃんは水も補給する様子もなく、不思議な事に、こっちの戦いを楽しそうに鑑賞しているし。少し気になったが、今は我が妹を料理してくれよう。
「まずは1人だな。次はすみれだ」
「ちょっと、まだ水を補給してないのに、来ないでよっ」
すみれは一生懸命タンクに海水を補給しようとしているが、焦っているのか少し手間取っている。さっきは良くも兄貴を遠慮なく撃ちまくってくれたではないか、妹よ。
「俺は妹でも手加減なんてしないからな!」
「くっ、ここは一旦引いて、どこかに隠れてやり過ごさないと」
必死に俺がさっき使った岩へと逃げようとする。しかしそんな甘くいくと思うなよ。こうやって逃げまどうのを追い回す鬼側と、人に分かれるゲームもやっている俺に死角はない。すぐに俺は岩へ回り込む。
しかしすみれも感づいてまた戻り、岩の周りでぐるぐると、間合いを詰められない様に逃げようとしてくる。さすがだと称賛するとしよう。こっちの考えを読んでいたとはな。
「しつこいわよ」
「お前もな。いい加減諦めても良いんだぞ?」
「兄貴なんかに負けるつもりなんて、さらさらないからね、私は」
ぐるぐると岩を回って、中々すみれとの決着がつけられずにいた。くそ、このままでは一向に試合が進展しないぞ。一度離れて、その隙を突いてポイを狙った方が良いかも知れんな。
「おーい。まだ決着つかないの~。赤坂君に日焼け止め塗ってもらいたいのになぁ~」
竹中が呑気な様子で日焼け止めを、レジャーシートの上で座って塗っている。竹中の事は無視しておこう。それより俺としてはすみれとの戦いが長引くと思っていたが、
「お2人とも隙だらけですの!」
不意に彩夏ちゃんが俺達のど真ん中に現れた。そしてその両手にはそれぞれウォーターガンが握られている。いつの間にかもう一つのガンを持っていたとは。恐らく、竹中が使い終わった物だろう。
「なっ、彩夏ちゃん!?」
動揺するすみれをよそに、俺は先に彩夏ちゃんのポイを狙い撃ちをしようとする。このままでは、2人ともやられるからな。俺達が争っている間に、水も補給していたようで、タンクにはたっぷり水が入っている。
彩夏ちゃんは最後に後回しにしたのが、後手に回るとは。一番手ごわいすみれと、竹中さえ倒せば、後はさほど苦労せず倒せると思った俺の考えが甘かった。
「さぁ渉さん、すみれさん覚悟なさいませ!」
しかし俺の反応よりも速く、彩夏ちゃんがウォーターガンを速射してきた。
――ブジュッ! ブシュッ!
「きゃぁっ!」
「ぐふぅっ!」
2丁のウォーターガンであっという間に俺とすみれの頭部のポイは破られてしまった。素早いエイムは恐らくこの誰よりも早く、的確だったと思われる。まさかここまで強かったとは。お嬢様侮りがたし。
「やりましたの。わたくしの勝利ですのー!」
「あはは。彩夏ちゃんに油断していたよ。それにそのエイム力は中々のものだったし」
「勝ったわたくしに対して、渉さんがご褒美として背中にオイルを塗って下さいですの」
その手にはいつの間にか日焼け止めオイルが握られている。最初から塗ってもらうつもりだったのだろうけど、勝者となれば否定しづらいなぁ。
「こらっ。兄貴なんかに塗らせるわけないでしょ。私が彩夏ちゃんに塗ってあげるから、レジャーシートの方に行くわよ」
「あわわわ。残念ですの」
そうして2人は行ってしまった。やれやれ、正直ちょっと塗るのは勘弁してほしかったんだよな。しかし俺のそばにもう1人寄り添ってくる人物がいた。
「赤坂く~ん。私になら塗ってくれても良いよね~?」
竹中が日焼け止めオイルを持ってすり寄ってくる。くそ、そう言えばさっき塗って欲しいって言ってたような。
「お前もすみれ達に塗ってもらえよ」
「やだやだ、赤坂君に塗ってもらいたいんだよ、私は!」
逃げようとするも執拗に追いかけて来て、あくまで塗ってもらうまで逃そうとしない勢いだなこれ。
「とにかく俺はそんな恥ずかしい事はやらないからなー!」
しかし逃げている途中で、竹中が追いかけてくる様子がなくなった。振り返り確認してみると、すみれが朱里の腕を掴んでいたのだ。
「朱里。良い加減にして、こっちに来なさい」
「すみれ何でそんな怒ってるのよ。まさか嫉妬……?」
「なっ、な、何言ってるのよ! そんなんじゃないから! ここは問答無用よ!」
こうして竹中もレジャーシートへと引きづり込まれていったのだった。
竹中に言われて、みんな少しずつ距離を取る。
さてこの勝負、ポイを破って勝利すると言っても、簡単に破れるものかは腕が問われる。ゲームではFPSをそこそこやっている俺だが、運動神経は凡人だ。むしろすみれや、竹中の方が良さそうな気さえする。
彩夏ちゃんに関しては未知数だが、皆それなりにVTuberとしてゲームはそれなりには上手だから、油断は出来ないな。しかし唯一の男として、ここはきっちり勝利をもぎ取りたいものだ。俺は手に持ったウォーターガンのトリガーに無意識に力が入る。
静かに潮風と数匹のカモメの鳴き声が聞こえてくる。
「じゃあ、よーいドン! って言ったら開始ね」
一瞬みんなが動き出そうとして固まる。しばらく虚しい間がこの空間を包み込む。
「…………」
全員が無言で何も言わない。こいつまたベタな事をしやがって。
「朱里、真面目にやって」
冷たい声音ですみれがまた竹中の足に向ってウォーターガンを撃つ。
「もー、ちょっとしたお約束じゃん。じゃあよーいドン!」
戦いが始まった。みんな一旦ちりぢりに離れて行くと思いきや、俺以外の3人がいきなり走り出して、ウォーターガンをこっちに遠慮なく撃ってきた。
「渉さん覚悟ですの!」
「まずは兄貴のポイを潰してやるわ!」
「赤坂君さっそく退場してもらうからね!」
3人は全く遠慮と言う言葉をこの世界から抜けたかのように、バシュバシュと躊躇いなく撃ちまくってくる。予想外の展開に動揺して俺はどこか逃げる場所を探す。くそっ、どうしてあいつらこっちばかり撃ってくるんだ。
「おいっ、お前ら何で俺だけ集中砲火するんだー!」
必死に岩壁に向って逃げながら走るが、背中にバシバシと水が当たってくる。まるで打ち合わせでもしたかのような連携だ。しかしそんな密談をしている様子なんてなかったのに。
「どうしてって、そっちの方が面白いに決まってるじゃん。ねぇ、すみれ、彩夏ちゃん?」
「当たり前じゃない」
「わたくしが一番に渉さんのポイとハートを撃って差し上げますの」
3人ともめちゃくちゃ楽しそうに、しかし狙ってポイを潰すために連射する。しかしどうにか盾には丁度良い岩に隠れる事に成功した。ここで迂闊に動けば狙い撃ちに遭うだけだ。少しだけ顔を出して様子を見るとするか。
俺はそっと顔を出すと、じりじりと近づく竹中とすみれがいる。ここから撃って出ても良いが、さすがに分が悪いよな。しかし彩夏ちゃんがいないな。ガンのタンクに水を補給しているのだろうか。
するとちょんちょんと、誰かに肩を叩かれた。
「渉さん、こっちですの」
とっさに後ろを振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた彩夏ちゃんがそこには居た。
「うわっ、彩夏ちゃんいつの間に回り込んでっ!?」
「わたくしは途中からこの岩場に回り込んでいましたの。すぐに渉さんが来るだろうと思って」
可愛らしく喋りながら額のポイを撃とうとしてくる。だめだ、やばい、やられる。とっさに全速力で走り出して岩場から俺は離れた。しかしそこには当然すみれと竹中がいる。完全に挟まれた状態だ。どうする。どうする俺。
「さぁ兄貴、覚悟してね」
「男の子を追い詰めるのって何か興奮する~!」
おいおい竹中の奴、変な発言するの止めてくれないか。こんな状況でこっちが恥ずかしいわ!
「渉さん、覚悟ですの!」
「くっ、やはり挟まれたか」
まさに背水の陣。ここでやられるなら、誰か1人でもポイを撃ち破って、道連れにするしかない。女性陣全員がじりじりと近づき、俺のポイを撃ち破らんがために狙いを定めてくる。そして、全員が一斉に掃射してきた、と思ったが一向に誰も撃ってこないではないか。
――スカッ、スカッ。ウォーターガンの空気だけが漏れる音が漏れてくる。
「あれ? あ、やっば。タンクに水が入ってないじゃないの」
すみれが予定外の事に焦っている。
「わたくしもさっき撃ち尽くして、水が入ってないですの」
「げっ。私もだ。水補給してくるから待っててね、赤坂君」
3人とも引きつった笑顔で海へと向かおうとしていく。が、そんな時間を与える俺ではない。先程からこっちは全然撃ってないから、タンクに水はタップリと入っている。
「お前らさっきはよくも3人で遠慮なく撃ってきやがって、覚悟は出来ているんだろうなぁ~」
形勢逆転してこっちが3人にゆっくり近づいていく。
「駄目だよ赤坂君。女の子をそんなふうに一方的に撃つのは、良くないよ。ここは冷静になって」
「そうそう、兄貴。女の子を撃つのは道徳的に良くないって、ほら学校でも習ったでしょ?」
2人が後ずさりながら調子の良いことを言ってるが、
「一体どこの道徳の教科書に載ってるんですかね、それは」
俺は構わず追い詰めていく。
「わたくしは渉さんに撃たれるなら、本望ですの~」
彩夏ちゃんはウォーターガンを地面に置き、逆に近づいてくる。そこはまぁスルーして、まずはすみれと竹中のポイを撃つとしよう。必死に逃げようとする2人を追いかけて、俺は撃ちまくる。
「逃げても無駄だぞ、2人とも。俺のタンクの水はたっぷり入ってるからなぁ」
ウォーターガンのトリガーに力が入る。そしてまずは竹中に向って水を発射させる。
「この卑怯者。私を最初に狙うとは。このシスコン!」
「今その台詞とこの状況は全く関係ないだろ!」
逃げ回る竹中が一瞬こっちを向いた瞬間、見逃さず再度ウォーターガンを発射。見事額のポイにヒットし、破る事に成功した。さすが俺。ゲームで培ったエイム力が今発揮されている気がするぞ。
「まさか、私が最初に陥落してしまうとは……。無念」
竹中は仕方なくウォーターガンをバケツに戻しに行く。よしよし、俺の腕もあながち悪くないな。となれば、今度のターゲットはすみれだな。彩夏ちゃんは水も補給する様子もなく、不思議な事に、こっちの戦いを楽しそうに鑑賞しているし。少し気になったが、今は我が妹を料理してくれよう。
「まずは1人だな。次はすみれだ」
「ちょっと、まだ水を補給してないのに、来ないでよっ」
すみれは一生懸命タンクに海水を補給しようとしているが、焦っているのか少し手間取っている。さっきは良くも兄貴を遠慮なく撃ちまくってくれたではないか、妹よ。
「俺は妹でも手加減なんてしないからな!」
「くっ、ここは一旦引いて、どこかに隠れてやり過ごさないと」
必死に俺がさっき使った岩へと逃げようとする。しかしそんな甘くいくと思うなよ。こうやって逃げまどうのを追い回す鬼側と、人に分かれるゲームもやっている俺に死角はない。すぐに俺は岩へ回り込む。
しかしすみれも感づいてまた戻り、岩の周りでぐるぐると、間合いを詰められない様に逃げようとしてくる。さすがだと称賛するとしよう。こっちの考えを読んでいたとはな。
「しつこいわよ」
「お前もな。いい加減諦めても良いんだぞ?」
「兄貴なんかに負けるつもりなんて、さらさらないからね、私は」
ぐるぐると岩を回って、中々すみれとの決着がつけられずにいた。くそ、このままでは一向に試合が進展しないぞ。一度離れて、その隙を突いてポイを狙った方が良いかも知れんな。
「おーい。まだ決着つかないの~。赤坂君に日焼け止め塗ってもらいたいのになぁ~」
竹中が呑気な様子で日焼け止めを、レジャーシートの上で座って塗っている。竹中の事は無視しておこう。それより俺としてはすみれとの戦いが長引くと思っていたが、
「お2人とも隙だらけですの!」
不意に彩夏ちゃんが俺達のど真ん中に現れた。そしてその両手にはそれぞれウォーターガンが握られている。いつの間にかもう一つのガンを持っていたとは。恐らく、竹中が使い終わった物だろう。
「なっ、彩夏ちゃん!?」
動揺するすみれをよそに、俺は先に彩夏ちゃんのポイを狙い撃ちをしようとする。このままでは、2人ともやられるからな。俺達が争っている間に、水も補給していたようで、タンクにはたっぷり水が入っている。
彩夏ちゃんは最後に後回しにしたのが、後手に回るとは。一番手ごわいすみれと、竹中さえ倒せば、後はさほど苦労せず倒せると思った俺の考えが甘かった。
「さぁ渉さん、すみれさん覚悟なさいませ!」
しかし俺の反応よりも速く、彩夏ちゃんがウォーターガンを速射してきた。
――ブジュッ! ブシュッ!
「きゃぁっ!」
「ぐふぅっ!」
2丁のウォーターガンであっという間に俺とすみれの頭部のポイは破られてしまった。素早いエイムは恐らくこの誰よりも早く、的確だったと思われる。まさかここまで強かったとは。お嬢様侮りがたし。
「やりましたの。わたくしの勝利ですのー!」
「あはは。彩夏ちゃんに油断していたよ。それにそのエイム力は中々のものだったし」
「勝ったわたくしに対して、渉さんがご褒美として背中にオイルを塗って下さいですの」
その手にはいつの間にか日焼け止めオイルが握られている。最初から塗ってもらうつもりだったのだろうけど、勝者となれば否定しづらいなぁ。
「こらっ。兄貴なんかに塗らせるわけないでしょ。私が彩夏ちゃんに塗ってあげるから、レジャーシートの方に行くわよ」
「あわわわ。残念ですの」
そうして2人は行ってしまった。やれやれ、正直ちょっと塗るのは勘弁してほしかったんだよな。しかし俺のそばにもう1人寄り添ってくる人物がいた。
「赤坂く~ん。私になら塗ってくれても良いよね~?」
竹中が日焼け止めオイルを持ってすり寄ってくる。くそ、そう言えばさっき塗って欲しいって言ってたような。
「お前もすみれ達に塗ってもらえよ」
「やだやだ、赤坂君に塗ってもらいたいんだよ、私は!」
逃げようとするも執拗に追いかけて来て、あくまで塗ってもらうまで逃そうとしない勢いだなこれ。
「とにかく俺はそんな恥ずかしい事はやらないからなー!」
しかし逃げている途中で、竹中が追いかけてくる様子がなくなった。振り返り確認してみると、すみれが朱里の腕を掴んでいたのだ。
「朱里。良い加減にして、こっちに来なさい」
「すみれ何でそんな怒ってるのよ。まさか嫉妬……?」
「なっ、な、何言ってるのよ! そんなんじゃないから! ここは問答無用よ!」
こうして竹中もレジャーシートへと引きづり込まれていったのだった。
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