××の十二星座

君影 ルナ

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二章

十七・二

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「アリーズ!!」

 アリーズと共に食堂へと向かう道中、聞いたことのないくらいドスの効いた(多分リーブラの)声が聞こえてきた。

「やあ、リーブラ。おはよう。」

「おはようございます、兄さん。さてこれはどういうことですかね? ことと次第によっては十二星座全員からの制裁も視野に入れなければなりませんね?」

「……??」

 アリーズが兄? それに『これ』って何のこと? 制裁?

 リーブラから齎された言葉に私の頭は追いつかず、とにかく全てのことに対して疑問を脳内で浮かべておくことしか出来なかった。

「リーブラ、呼び方には気をつけなさい。そして『これ』とは何かな? 制裁を受けるようなことはしていないと思うんだけど。」

 あ、アリーズがだいたいの疑問を言葉にしてくれた。やっぱり同じようなことを疑問に思っていたのか。そうだよね、何も分からないよね。ウンウンとアリーズの隣で頷いた。

「妙齢の女性と床を共にするなんて……破廉恥な兄さん!」

「は? 女性? そんな人、どこにいるのさ?」

「兄さんの隣にいるでしょう! マロンのことです!」

「……ハァ!?」

 まさか私のことを話していたとは。思いがけない話の流れに私自身も驚いてしまった。

 まあ、アリーズはそれ以上に驚いているみたいだけど。ガバッとこちらを振り向いて、信じられないものを見る目で私を見ているから。

「ま、マロン、が……女性……?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

 ワナワナと震えるアリーズ。わあ、そんな表情初めて見た。面白い。何かこう、アリーズのこの表情を絵にでも写して何度も見返して笑いたいくらい面白い。

「マロンが女性だと知らなかったことだけでも憤慨ものなのに! やっぱり兄さんは成敗されてしまえ!」

 天使のように可愛いリーブラらしからぬ言動で、鎌を構えた。あ、シャレじゃないよ。

「皆さん! 武器の用意!」

 リーブラの掛け声を聞いてザッと現れたのは四人。昨日もいたサジタリアスとトーラス、そしていつ帰ってきたのか分からないアクエリアスとリオ。

 それぞれがそれぞれの武器をチャキッと構えて、アリーズへと殺気を向ける。

「行けー!」

「ギャーー!!」

 聞いたこともないアリーズの叫び声が廊下に響き渡る。どうしよう、笑う場面じゃないのに、今まで澄ました顔しか見せなかったアリーズが崩れているのが面白すぎて、顔の筋肉と腹筋が痛い。

 皆が何故そこまで怒っているのかは分からないが、アリーズの余裕のない表情が見れたからヨシとすることにした。

 まあ、あまりにも一方的すぎたら助太刀するつもりだけれども、そうなるまでは楽しく見ていようと思う。
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