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二章
十五・二
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「アリーズさーん、いますかー?」
全身をボロボロに汚したまま月明かりを頼りに城を彷徨く。そして執務室とかいう部屋までやってきた。誰か見知った人がいれば、その人に訪問者を明け渡そうかなと思って。
「マロン、もう子供は寝る時間じゃなかったかな?」
そこに当然のようにいたアリーズから単刀直入にありがたーいお言葉を頂いたところで、ここに来た要件をサラッと伝える。
「ねえ、また暗殺者捕まえたんだけど、どうすればいい?」
「はあ? ……はあ!?」
またかよ、と言外にヒシヒシと伝えてくるアリーズの叫びには反応せずもう一度同じ質問を投げかける。
「で、アリーズに渡せば良い? それとも私が処理すれば良い?」
「……前者で。」
「了解。……ほいっ」
紐でグルグル巻きにして気絶させたボロボロの訪問者をアリーズの前にドサっと置いた。
「……」
それを見てアリーズは暫し考え込んだ。何か不手際でもあっただろうかと内心ヒヤヒヤしながら私はアリーズの言葉を待つ。
「……ねぇ、マロン。」
「ひ、ひゃい」
「今日から十二星座の誰かと部屋一緒ね。」
「え……? 何故に……?」
何がどうなってその結論に至ったか分からず聞き返してしまった。だってお小言を貰うのだとばかり思っていたから。
「我輩ら十二星座ではなくマロンを標的にしていると確定してしまったからね。今の所マロン一人で返り討ちにはできているけれども、これからも絶対そうだと断言は出来ないだろう? それなら誰かと一緒の方が安心するんじゃあないか?」
そういうもんなのか? どうも普通に疎い節があるから、誰かがいれば安心だという言葉に疑問が残る。それが表情にも出ていたように思えるが、アリーズは素知らぬフリをして言葉を重ねる。
「まあ、今日はもうこんな時間だし、我輩の部屋に来ると良い。」
「え」
「……なんだ、嫌なのかい?」
「イエソンナコトハアリマセン」
一晩アリーズと一緒だなんて胃がキリキリす……ゲフンゲフン、いや、何でもありませんとも! ええ! だからこっちを睨まないでアリーズ!
「ハァ……我輩はこれでもお前が心配なんだ。だからこれは絶対。でもそんなに我輩が嫌だと言うなら、他の誰かを叩き起こそうか?」
何故アリーズに心配されるのかは分からないが、嫌ではない。ただどんな嫌味を言われるかと胃がキリキリするだけ。
……あれ、でも今は嫌味の一つも無かったよな? 珍しく優しいというか何と言うか。明日は雨かな?
「いや、それは遠慮しておく。起こすのは悪いよ。だからアリーズさん、よろしくお願いします。」
厚意は受け取るべし。そんなマインドでアリーズに頭を下げる。
「よし、決まりだね。じゃあもう少しだけ待っていてくれ。この資料だけ捌いてしまうから。」
「はーい。部外者の私でも何か手伝えることがあれば言ってよね。もう眠くて仕方がないんだもの。」
「はいはい。」
それから少しの間、アリーズと二人きりだというのに静かで穏やかな時間が流れたのだった。
全身をボロボロに汚したまま月明かりを頼りに城を彷徨く。そして執務室とかいう部屋までやってきた。誰か見知った人がいれば、その人に訪問者を明け渡そうかなと思って。
「マロン、もう子供は寝る時間じゃなかったかな?」
そこに当然のようにいたアリーズから単刀直入にありがたーいお言葉を頂いたところで、ここに来た要件をサラッと伝える。
「ねえ、また暗殺者捕まえたんだけど、どうすればいい?」
「はあ? ……はあ!?」
またかよ、と言外にヒシヒシと伝えてくるアリーズの叫びには反応せずもう一度同じ質問を投げかける。
「で、アリーズに渡せば良い? それとも私が処理すれば良い?」
「……前者で。」
「了解。……ほいっ」
紐でグルグル巻きにして気絶させたボロボロの訪問者をアリーズの前にドサっと置いた。
「……」
それを見てアリーズは暫し考え込んだ。何か不手際でもあっただろうかと内心ヒヤヒヤしながら私はアリーズの言葉を待つ。
「……ねぇ、マロン。」
「ひ、ひゃい」
「今日から十二星座の誰かと部屋一緒ね。」
「え……? 何故に……?」
何がどうなってその結論に至ったか分からず聞き返してしまった。だってお小言を貰うのだとばかり思っていたから。
「我輩ら十二星座ではなくマロンを標的にしていると確定してしまったからね。今の所マロン一人で返り討ちにはできているけれども、これからも絶対そうだと断言は出来ないだろう? それなら誰かと一緒の方が安心するんじゃあないか?」
そういうもんなのか? どうも普通に疎い節があるから、誰かがいれば安心だという言葉に疑問が残る。それが表情にも出ていたように思えるが、アリーズは素知らぬフリをして言葉を重ねる。
「まあ、今日はもうこんな時間だし、我輩の部屋に来ると良い。」
「え」
「……なんだ、嫌なのかい?」
「イエソンナコトハアリマセン」
一晩アリーズと一緒だなんて胃がキリキリす……ゲフンゲフン、いや、何でもありませんとも! ええ! だからこっちを睨まないでアリーズ!
「ハァ……我輩はこれでもお前が心配なんだ。だからこれは絶対。でもそんなに我輩が嫌だと言うなら、他の誰かを叩き起こそうか?」
何故アリーズに心配されるのかは分からないが、嫌ではない。ただどんな嫌味を言われるかと胃がキリキリするだけ。
……あれ、でも今は嫌味の一つも無かったよな? 珍しく優しいというか何と言うか。明日は雨かな?
「いや、それは遠慮しておく。起こすのは悪いよ。だからアリーズさん、よろしくお願いします。」
厚意は受け取るべし。そんなマインドでアリーズに頭を下げる。
「よし、決まりだね。じゃあもう少しだけ待っていてくれ。この資料だけ捌いてしまうから。」
「はーい。部外者の私でも何か手伝えることがあれば言ってよね。もう眠くて仕方がないんだもの。」
「はいはい。」
それから少しの間、アリーズと二人きりだというのに静かで穏やかな時間が流れたのだった。
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