96 / 122
一章
八十三
しおりを挟む
「わあ……!」
初めての街に、私は感嘆の声を上げる。活気のある露店商、生き生きと生活するたくさんの街人、整備された道や綺麗なレンガ壁の家々……
今までいた島では全く見られなかった光景が、ここには広がっていた。
「あ、今日はそこまで人通り多くないみたいだね」
「まあ、今日は平日だものね~」
カプリコーンとスコーピオはのほほんと衝撃的なことを言う。これで少ないの!? 結構ワラワラと人いますけどねぇ!?
これが都会か……! と一人感心していると、アクエリアスが冷静に話を変える。
「で、まずどこに行きますの?」
アクエリアスのお気に入りだという一軒の服屋に躊躇なく入っていった三人に、一歩遅れて着いていく私。
三人が店内できゃっきゃと楽しそうに服を選んでいくのを、私は一歩後ろから眺めていた……はず、なのにいつの間にか試着室なる場所に服と共に放り込まれていた。
カプリコーンから試着室の意味を教えてもらい、一緒に放り込まれた服に手を掛ける。が、明らかにおかしいものが混ざっていた。
そう、ワンピースだ。
いや、性別的に何らおかしくはない。一応私は生物的には女だし。
それでもこの心許ない感じは好ましくない。
仕方なく膝丈の花柄ワンピースをいやいや着て鏡を覗く。うわあ、服に着られている感じだ。やっぱり私には似合わないよ。何でカプリコーンはこれをチョイスしたんだ? 疑問は浮かび続ける。
「マロンー、着たよねー? 俺にも見せてよー」
カプリコーンが私を急かし始める。
え、これのまま人前に出なきゃいけないの? それなんて拷問。絶対似合わないと笑われる。
そんなことを考えて返事をおろそかにしてしまったからだろうか。カプリコーンはシャッと試着室のカーテンを開ける。
まだ着替えている途中だったらどうするつもりだったのだろうか。うーん、分からん。
「お、似合ってるじゃないか! 何をそんなに渋っていたんだい?」
お得意のキラッキラスマイルで私に質問するカプリコーン。うーん、笑いものにしたい、みたいな雰囲気は感じないから良い、のか?
「あら、マロ、ン……あなた、もしかして女性だったのかしら?」
服を見ていたアクエリアスがこちらに来て驚愕の表情を浮かべて一言。ああ、うん。そんなに女っぽく振る舞ったことも無かったからね。驚かれても何らおかしくはない。
「う~ん、それも可愛いけど、マロンはスレンダー美人だからかっこいい系統の方がもっと似合うんじゃないかしら~?」
スコーピオは私の性別に驚くこともなく冷静に評価してくれた。そうだそうだ、もっと言ったれ! と、内心スコーピオにエールを送る。
ワンピースみたいなピラピラは好きではないんだ! そんな念を込めて。
「マロンもワンピースが不服らしいから、パンツ系で選んだ方が良いんじゃなくて? そんなにレースなり何なり入れたいなら、トップスで少し遊ぶのよ。」
「かっこいい中にある可愛さ、ってやつ?」
「あ、それ良いかもしれないわね~」
本人を置いてきゃいきゃいとはしゃぐ三人。私が話に入り込む余地は無く、もうどうにでもなれ、と遠い目をしてしまうのに時間はそうかからなかった。
初めての街に、私は感嘆の声を上げる。活気のある露店商、生き生きと生活するたくさんの街人、整備された道や綺麗なレンガ壁の家々……
今までいた島では全く見られなかった光景が、ここには広がっていた。
「あ、今日はそこまで人通り多くないみたいだね」
「まあ、今日は平日だものね~」
カプリコーンとスコーピオはのほほんと衝撃的なことを言う。これで少ないの!? 結構ワラワラと人いますけどねぇ!?
これが都会か……! と一人感心していると、アクエリアスが冷静に話を変える。
「で、まずどこに行きますの?」
アクエリアスのお気に入りだという一軒の服屋に躊躇なく入っていった三人に、一歩遅れて着いていく私。
三人が店内できゃっきゃと楽しそうに服を選んでいくのを、私は一歩後ろから眺めていた……はず、なのにいつの間にか試着室なる場所に服と共に放り込まれていた。
カプリコーンから試着室の意味を教えてもらい、一緒に放り込まれた服に手を掛ける。が、明らかにおかしいものが混ざっていた。
そう、ワンピースだ。
いや、性別的に何らおかしくはない。一応私は生物的には女だし。
それでもこの心許ない感じは好ましくない。
仕方なく膝丈の花柄ワンピースをいやいや着て鏡を覗く。うわあ、服に着られている感じだ。やっぱり私には似合わないよ。何でカプリコーンはこれをチョイスしたんだ? 疑問は浮かび続ける。
「マロンー、着たよねー? 俺にも見せてよー」
カプリコーンが私を急かし始める。
え、これのまま人前に出なきゃいけないの? それなんて拷問。絶対似合わないと笑われる。
そんなことを考えて返事をおろそかにしてしまったからだろうか。カプリコーンはシャッと試着室のカーテンを開ける。
まだ着替えている途中だったらどうするつもりだったのだろうか。うーん、分からん。
「お、似合ってるじゃないか! 何をそんなに渋っていたんだい?」
お得意のキラッキラスマイルで私に質問するカプリコーン。うーん、笑いものにしたい、みたいな雰囲気は感じないから良い、のか?
「あら、マロ、ン……あなた、もしかして女性だったのかしら?」
服を見ていたアクエリアスがこちらに来て驚愕の表情を浮かべて一言。ああ、うん。そんなに女っぽく振る舞ったことも無かったからね。驚かれても何らおかしくはない。
「う~ん、それも可愛いけど、マロンはスレンダー美人だからかっこいい系統の方がもっと似合うんじゃないかしら~?」
スコーピオは私の性別に驚くこともなく冷静に評価してくれた。そうだそうだ、もっと言ったれ! と、内心スコーピオにエールを送る。
ワンピースみたいなピラピラは好きではないんだ! そんな念を込めて。
「マロンもワンピースが不服らしいから、パンツ系で選んだ方が良いんじゃなくて? そんなにレースなり何なり入れたいなら、トップスで少し遊ぶのよ。」
「かっこいい中にある可愛さ、ってやつ?」
「あ、それ良いかもしれないわね~」
本人を置いてきゃいきゃいとはしゃぐ三人。私が話に入り込む余地は無く、もうどうにでもなれ、と遠い目をしてしまうのに時間はそうかからなかった。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる