84 / 122
一章
七十一 サジタリアス
しおりを挟む
自分はボースハイトが漂う場所からほんの少し離れた場所にある家の屋根に登って弓を構えていた。
街と森とを区切る門の近くに大量発生したボースハイト。リオの爆発音からして、リオとアクエリアスの二人は門の前辺りのそれを対処しているのだろう。その他は散り散りに家屋近辺でボースハイトを対処しているのが見える。
自分はいつものように近距離系の奴らの援護に回る。取り敢えず今は体力の無いマロンの近くへ多めに矢を放っておくか。
「まあ、体力は一朝一夕では身につかんからな。仕方ない、今は多めに援護してやる。」
三本纏めてマロンの近くに漂うボースハイトに放つ。さすがにいつものように矢に火魔法を付与して放つのは危ないからな。家屋の近くだし。故に今放つのはただの弓である。そこまで威力はないが、援護が全く無いよりはマシだろう。
「次代の十二星座の皆様はやはり素晴らしい……!」
「間近で見てみると、十二星座様一人で我ら警備隊十人以上の強さは持っていらっしゃるな。」
「それにしても、警備隊でも十二星座様でもないあの人は……誰だ?」
「我らよりも強いのは分かる。まあ、十二星座様には敵わないだろうがな。」
「お前が威張るなし。」
この街の警備隊員はボースハイトを軽視しすぎているようにも見える。……いや、自分ら十二星座がいると思って油断しているようだ。お喋りをしながらボースハイトに立ち向かっていた。
自分はそれを諌めるようにお喋り警備隊員の近くに向けて矢を数発放つ。
「「「ひぃっ!?」」」
「……サジタリアス様って見る度見る度眉間に皺を寄せてて怖いよな。」
「顔が良いからこそ余計怖いよな。」
おい、聞こえてるぞ。思わずギロリと警備隊を睨んでしまったではないか。
「「「ひぃっ!?」」」
討伐に集中しろよ。自分に怯えてどうする。そんな風に少しイライラしながら自分はまたマロンの援護に回る。
「よぉ、サジタリアス!」
「サジタリアス、貴方また人を睨んでいるのかしら?」
「……リオとアクエリアスか。」
すると隣から二種類の声が聞こえてきた。ちらと見るとどうやらリオとアクエリアスの二人だったらしい。
アクエリアスはリオに抱えられる形でここまで来たようで。屋根の上に下ろされたアクエリアスは腕を組む。そして一言。
「人嫌いもほどほどにして欲しいわね!」
「お前が言うな。」
「……で、街の門の方はあらかた討伐完了したわ。リオが爆弾ぶっ放して終わりよ。」
自分の返答が気に入らなかったのか、話題をすぐ変えたアクエリアス。まあ、今はそんな状況ではないからな。仕方ないと黙って話を聞く。もちろん、矢を放ちながら。
「俺様の爆弾は素晴らしいからな! この火薬の……ブツブツ……」
「それでこちらの援護に来たわけだけど。どんな状況かしら。」
リオの爆弾自慢をサラッと流し、戦況を聞くアクエリアス。そのスルースキルはさすがといえよう。
「あ、ああ……見たままだな。強いて言えばマロンの体力はもう限界だ。」
「あらそれを早く言ってくださらない? ……リオ、この回復薬をマロンに投げてちょうだい。」
「ああ! 分かった!」
ブンッ……とリオが投げた回復薬はぴったりマロンの頭上へ落ちていく。
ガキンッ……
「うわぁあ!?」
マロンはそれを反射的に剣で切り裂き──多分いつもの感覚でマロン目掛けて飛んできたものを弾き飛ばそうと思ったのだろう──、中身がマロンに降りかかる。弾き飛ばしたと思ったら液体がかかり、驚いているようだ。まあ、結果オーライだな。
「……お? なんか疲れが取れた!」
ヨッシャー! と、動きに先程までは無かったキレが出始めるマロン。
「ほー、マロンは視野が広いんだな!」
「……」
リオの賛辞に対して、毎日鍛錬の一環として弾丸を弾き飛ばしている、と言ったらどんな反応をするのだろう。流石に危ないからやめろと言うだろうか。……まあ、触らぬ神に祟りなし、だな。自分は口を噤んだ。
街と森とを区切る門の近くに大量発生したボースハイト。リオの爆発音からして、リオとアクエリアスの二人は門の前辺りのそれを対処しているのだろう。その他は散り散りに家屋近辺でボースハイトを対処しているのが見える。
自分はいつものように近距離系の奴らの援護に回る。取り敢えず今は体力の無いマロンの近くへ多めに矢を放っておくか。
「まあ、体力は一朝一夕では身につかんからな。仕方ない、今は多めに援護してやる。」
三本纏めてマロンの近くに漂うボースハイトに放つ。さすがにいつものように矢に火魔法を付与して放つのは危ないからな。家屋の近くだし。故に今放つのはただの弓である。そこまで威力はないが、援護が全く無いよりはマシだろう。
「次代の十二星座の皆様はやはり素晴らしい……!」
「間近で見てみると、十二星座様一人で我ら警備隊十人以上の強さは持っていらっしゃるな。」
「それにしても、警備隊でも十二星座様でもないあの人は……誰だ?」
「我らよりも強いのは分かる。まあ、十二星座様には敵わないだろうがな。」
「お前が威張るなし。」
この街の警備隊員はボースハイトを軽視しすぎているようにも見える。……いや、自分ら十二星座がいると思って油断しているようだ。お喋りをしながらボースハイトに立ち向かっていた。
自分はそれを諌めるようにお喋り警備隊員の近くに向けて矢を数発放つ。
「「「ひぃっ!?」」」
「……サジタリアス様って見る度見る度眉間に皺を寄せてて怖いよな。」
「顔が良いからこそ余計怖いよな。」
おい、聞こえてるぞ。思わずギロリと警備隊を睨んでしまったではないか。
「「「ひぃっ!?」」」
討伐に集中しろよ。自分に怯えてどうする。そんな風に少しイライラしながら自分はまたマロンの援護に回る。
「よぉ、サジタリアス!」
「サジタリアス、貴方また人を睨んでいるのかしら?」
「……リオとアクエリアスか。」
すると隣から二種類の声が聞こえてきた。ちらと見るとどうやらリオとアクエリアスの二人だったらしい。
アクエリアスはリオに抱えられる形でここまで来たようで。屋根の上に下ろされたアクエリアスは腕を組む。そして一言。
「人嫌いもほどほどにして欲しいわね!」
「お前が言うな。」
「……で、街の門の方はあらかた討伐完了したわ。リオが爆弾ぶっ放して終わりよ。」
自分の返答が気に入らなかったのか、話題をすぐ変えたアクエリアス。まあ、今はそんな状況ではないからな。仕方ないと黙って話を聞く。もちろん、矢を放ちながら。
「俺様の爆弾は素晴らしいからな! この火薬の……ブツブツ……」
「それでこちらの援護に来たわけだけど。どんな状況かしら。」
リオの爆弾自慢をサラッと流し、戦況を聞くアクエリアス。そのスルースキルはさすがといえよう。
「あ、ああ……見たままだな。強いて言えばマロンの体力はもう限界だ。」
「あらそれを早く言ってくださらない? ……リオ、この回復薬をマロンに投げてちょうだい。」
「ああ! 分かった!」
ブンッ……とリオが投げた回復薬はぴったりマロンの頭上へ落ちていく。
ガキンッ……
「うわぁあ!?」
マロンはそれを反射的に剣で切り裂き──多分いつもの感覚でマロン目掛けて飛んできたものを弾き飛ばそうと思ったのだろう──、中身がマロンに降りかかる。弾き飛ばしたと思ったら液体がかかり、驚いているようだ。まあ、結果オーライだな。
「……お? なんか疲れが取れた!」
ヨッシャー! と、動きに先程までは無かったキレが出始めるマロン。
「ほー、マロンは視野が広いんだな!」
「……」
リオの賛辞に対して、毎日鍛錬の一環として弾丸を弾き飛ばしている、と言ったらどんな反応をするのだろう。流石に危ないからやめろと言うだろうか。……まあ、触らぬ神に祟りなし、だな。自分は口を噤んだ。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる