××の十二星座

君影 ルナ

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一章

十二

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 ふ、船デカくない? 気配察知してみたけど、相当大きな船だということが分かった。船のエンジン音も辺り一面に響く程。豪華客船? とかいうやつではなかろうか。見てないから詳しくは分からないけれども。

 ……私場違い過ぎるよね? 降りてもいいかな?

「ほらマロン、行こ?」

 私がそんな風に萎縮しているとリコに右手を取られる。ついでに背中も押される。どうしよう、退路を断たれた。これじゃあ逃げられない。

「さ、荷物を部屋に置いたらまずは朝食だね。マロン、何食べたい?」
「いや、私は部屋に残るから皆で行ってきて」
「ん?」

 リコの顔は相変わらず見えていないので表情を読み取れないが、その一文字だけでも充分な威圧を感じた。ぐっ、とその威圧に私は耐え、それでも何か言葉にしようと奮闘する。

「あ、の……私場違いな気がするから、部屋にい……」
「ああ、気にしなくて良いよ。レストランは個室だからさ。」
「え、と……そういうわけでは……」

 どうしよう。こんな無一文の貧乏人である私がいていい場所ではないことは分かりきっている。きっとあの貧乏人はなんだと他の乗客に陰口を言われるに違いない!(途轍もない偏見である。)

 それに、譲歩して船に乗ったとして、ご飯はちょっと……ね。だからそれを回避しようと頑張るのだ!






「うぅ……」

 頑張ったよ。私頑張ったよ。うん、そこは誇っていいと思う!

 私、船に乗らないように頑張って足を突っ張って行かないアピールをしたというのに! それなのにリコに手を取られたままズルズルと船に乗らされてしまったのだ。リコは思ったより力があったらしい。誤算だ!

「何を心配しているのかは分からんが、それは杞憂だ。」
「そうですよ。しかし……マロンさんは何が気がかりだったのでしょうか?」
「だ、だって……!」

 かくかくしかじか。私がこの船に対して場違いすぎるのでは、と主な不安を伝えてみた。もしかしたら違う小さな船に変えてくれるかもしれないと淡い期待を持って。すると……

「ぷっ、あはははは!」

 リコの特大の笑い声が聞こえてきた。え、私笑われてるの? 何故? なんか面白いこと言ったっけ?

「そ、そうか……ぶっ、マロンはそ、そんなことを……考えて……ぶふっ……いたとは……」

 昨日からずっと不機嫌そうな声だったジーが吹き出した! と感動する間もなく私の頭をぐしゃぐしゃとかき回される。誰だ誰だ。誰が私の頭をぐしゃぐしゃにしている。もしかしてジー?

「まあ、今の髪の毛具合ならそう思われても仕方ないかもな。」
「ジーがマロンの髪をぐちゃぐちゃにしたのにそう言う?」
「ふん、弄りがいがあるのが悪い。」

 やっぱりジーが私の頭をぐしゃぐしゃにかき回したらしい。多分私の髪の毛はいつも以上にボッサボサだろう。

 というか待って。ジー、私のこと弄りがいがあるって言ったよね? どういうこと? 私、こんなにもしっかり者なのに?
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