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22 モヤモヤ

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「え……?」

 ラル様の声はクラインさんにも聞こえたようでした。しかし何を言っているか分からないと言わんばかりの表情です。

「付き纏っているのはお前だろう、変人。」

 あ、やっぱりラル様の中でのクラインは変人のままなのですか。

「もう、月光様! 私はジュピターって名前ですってば!」

 きゅるんと擬音が聞こえて来そうな表情へぱっと変化させたクラインさん。ああ、作ったものだと分かっていますがとても可愛いです。ヒロインと言われても納得する可愛さですね。

「……。」

 二、三秒クラインさんを見たラル様は、ぷいっと顔を逸らしてしまいました。

 え、それはどのような意味合いを持った行動でしょう。もしかして口では変人と言いつつもクラインさんの可愛さに悶えて……?

 そこまで考えついた私は、前と同じようなモヤモヤを感じていました。

 ああ、駄目です。幸せ以外の感情は持ってはいけないのです。陽だまりでいるためには、いつもにこにこしていなければ……

 笑顔の仮面を貼り付け続けることだけを今は考えましょう。

「もぅ、月光様! 恥ずかしがらないでくださいよぉ!」
「……。」

 ラル様は肯定も否定もしません。やっぱりクラインさんのことが気になるのですね……

 この前の言葉に嘘は無くても、今芽生えた感情というのもあるのでしょう。チクリ、胸が痛みます。

「わ、私、行くところがあるんでした。ラル様申し訳ありません、席を外します。」
「っ……」

 笑顔の仮面を貼り付け続けるためには、ここにいてはいけないと思いました。ここにい続けたら剥がれてしまう。

 それはいけません。私は陽だまりでないと……

 二人の顔を見ずに食堂を早足で出ました。

















 もうお弁当を食べる気にもなれず、お弁当を持って第二図書館に向かいます。自分の全力を尽くした早足で。ああ、笑顔は健在ですよ。

 誰にも言っていませんし言うつもりもありませんが、あそこは私の居場所なのです。

 大抵の生徒さん達はもっと校舎に近い場所にある第一図書館を利用するので、第二の方にはほとんど人の入りがありません。

 その図書館の奥の奥、誰も寄り付かないそこは、私が唯一学内で素の姿でいられる場所なのです。

 一人になりたい時はあの場所に行きます。早く、早く、早く……

 笑顔の仮面が剥がれてしまいそうだから……!



「ヒダン嬢じゃないですか。」
「こんにちは。エウロパ先生。」

 この方は第二図書館の司書の先生です。あまり口数も多くなく詮索もされることがないので安心してこの場所にいられます。

「いつものように奥に行くんですか?」
「ええ、まあ。先生の邪魔はしませんから。」
「そこは気にしなくていいんですけどね。」
「では、失礼します。」

 話もそこそこに、奥に向かいます。もう私の笑顔仮面が限界と訴えていますので。
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