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18.オキビキたちが出かけたぞ
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家に帰ると、ぼくの部屋にはまたぞろ座敷オヤジとオキビキとアマノジャクに占領されていた。こいつらも迷惑だけれど、先ほどの丸モジャ眼鏡の迷惑度に比べるとまだかわいいものだ。無視すればすむのだから。しかしこういう環境で勉強は出来ない。仕方がないからぼくは机に向かってゲームをやることにした。時折、オヤジたちの会談の断片が耳に飛び込んでくる。どうやら飲みにいく相談をしているようだ。
「うわばみのところ」
この前、パパと一緒にきた酔いどれ妖怪のところだな。
「あいつに案内させて」
なるほど。
「おまえもいつまでもニートじゃな」
え? 誰のことを言ってるんだ?
「はい、初仕事をしないとご先祖さまに顔向けが…不平分子を糾合し、現政権に対し反対を唱えなければ…」
ああ、ニートってアマノジャクのことか。
「酒飲んでクダを巻いてるやつらにそんな気概があるかどうかわかんねえぞ」
オキビキが茶化している。
「でも、おいらにとっちゃおもしろそうな場所だあな。なにしろ酔っ払いは忘れ物、落し物が多いと相場が決まってるからね」
するとオキビキは人の持ち物を隠すために、アマノジャクは人を食うために行くのか?まったく、やっぱりとんでもないやつらだ。
ところで座敷オヤジは何をしに行くのかな?
「わしは行かれん。留守を護ってるでな。おまえらだけで行って来い。帰ってきたら首尾を聞かせてくれ」
見るとみんなで寝そべって鼻くそをほじっている。あ、こら、ほじった鼻くそを畳に落とすな。
「じゃ、そういうことで」
とオキビキ。そして、ドロンと3匹とも消えた。
「おーい、なにがそういうことで、だよ。鼻くそ、掃除していけよ」
とぼくは言ったが、もう遅かった。
向こうがその気のないときは呼べど叫べど絶対出てこない。出たい時は向こうの都合だけで出てくるくせに。これって理不尽じゃないか?
やむなくぼくは二階にある納戸に掃除機を取りに行った。すると、いちばん端にある8畳間からお手伝いさんの声が聞こえた。
その部屋は、もともと客間だったが、長いことそこにお客さんが泊まることはなく、お歳暮やらお中元やらの贈答品や、ストーブや扇風機といった季節道具の物置になっていた。
そこからお手伝いさんの声が聞こえたので、ははあ、今はその部屋の掃除と荷物の整理をママから頼まれているなとは思ったが、しかしいったい誰と話しているのだろう。
「これは捨てられませんね。ずっと大事に持ってなきゃね。はい、だから、この押入れの隅のほうにね。ええと掃除機」
そこで襖がガラリと開いて、お手伝いさんが出てきた。
「あれ、坊ちゃま」
「ごめん、掃除機、ぼくの方はすぐすむからちょっと先に使わせて。ところで誰と話してたの?」
「え? い、いえ、誰とも。ひとり言ですよ。奥さんにね、掃除をたのまれたものですから。それから、どんなものが入っているかリストを作ってくれってね」
ぼくはちょっとだけ首を伸ばして8畳をうかがった。確かに誰もいなかった。
その夜、床について意識が遠のき、心地よいまどろみが訪れたとき、何故か急に胸のあたりが重苦しくなった。それだけではない。身体が押さえつけられたみたいに身動きが取れなくなった。いわゆる、金縛りと言いうヤツではないかとぼくは思ったが、こうした金縛りに合うのは実はこれが初めてだった。
「うわばみのところ」
この前、パパと一緒にきた酔いどれ妖怪のところだな。
「あいつに案内させて」
なるほど。
「おまえもいつまでもニートじゃな」
え? 誰のことを言ってるんだ?
「はい、初仕事をしないとご先祖さまに顔向けが…不平分子を糾合し、現政権に対し反対を唱えなければ…」
ああ、ニートってアマノジャクのことか。
「酒飲んでクダを巻いてるやつらにそんな気概があるかどうかわかんねえぞ」
オキビキが茶化している。
「でも、おいらにとっちゃおもしろそうな場所だあな。なにしろ酔っ払いは忘れ物、落し物が多いと相場が決まってるからね」
するとオキビキは人の持ち物を隠すために、アマノジャクは人を食うために行くのか?まったく、やっぱりとんでもないやつらだ。
ところで座敷オヤジは何をしに行くのかな?
「わしは行かれん。留守を護ってるでな。おまえらだけで行って来い。帰ってきたら首尾を聞かせてくれ」
見るとみんなで寝そべって鼻くそをほじっている。あ、こら、ほじった鼻くそを畳に落とすな。
「じゃ、そういうことで」
とオキビキ。そして、ドロンと3匹とも消えた。
「おーい、なにがそういうことで、だよ。鼻くそ、掃除していけよ」
とぼくは言ったが、もう遅かった。
向こうがその気のないときは呼べど叫べど絶対出てこない。出たい時は向こうの都合だけで出てくるくせに。これって理不尽じゃないか?
やむなくぼくは二階にある納戸に掃除機を取りに行った。すると、いちばん端にある8畳間からお手伝いさんの声が聞こえた。
その部屋は、もともと客間だったが、長いことそこにお客さんが泊まることはなく、お歳暮やらお中元やらの贈答品や、ストーブや扇風機といった季節道具の物置になっていた。
そこからお手伝いさんの声が聞こえたので、ははあ、今はその部屋の掃除と荷物の整理をママから頼まれているなとは思ったが、しかしいったい誰と話しているのだろう。
「これは捨てられませんね。ずっと大事に持ってなきゃね。はい、だから、この押入れの隅のほうにね。ええと掃除機」
そこで襖がガラリと開いて、お手伝いさんが出てきた。
「あれ、坊ちゃま」
「ごめん、掃除機、ぼくの方はすぐすむからちょっと先に使わせて。ところで誰と話してたの?」
「え? い、いえ、誰とも。ひとり言ですよ。奥さんにね、掃除をたのまれたものですから。それから、どんなものが入っているかリストを作ってくれってね」
ぼくはちょっとだけ首を伸ばして8畳をうかがった。確かに誰もいなかった。
その夜、床について意識が遠のき、心地よいまどろみが訪れたとき、何故か急に胸のあたりが重苦しくなった。それだけではない。身体が押さえつけられたみたいに身動きが取れなくなった。いわゆる、金縛りと言いうヤツではないかとぼくは思ったが、こうした金縛りに合うのは実はこれが初めてだった。
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