2 / 77
2.つけうまをつけられた
しおりを挟む
おばさんがいなくなった。
その代わり、部屋の真ん中に一つの缶詰。
お化けたちはおばさんを缶詰にすると言っていた。とすると、おばさんはその缶詰の中にいるのではないか? あの缶詰の中に、何がどんな具合に入っているのだろうと想像してぞっとした。まさか、ミンチ? いやいやいや、考えるのは止めよう。
しかし、おばさんがいなくなったことは、とりあえずママに言わなくちゃいけないんじゃないかな?
ぼくは1階に降りていった。ママがリビングでテレビを見ている。
「ママ」
「なあに?」
なんて切り出そう。
「ママあのね、おばさんがいない」
ママはテレビから目を離さず言った。
「おばさんならキッチンにいるわよ」
「え!?」
ぼくは半信半疑で台所をのぞいてみた。
そしたらいたんだ。おばさんが。何かの缶詰をおかずにお茶漬けなんかを食っていた。
「おば、おばさんは缶詰になってたんじゃ…?」
おばさんはぼくをじろりとにらんだ。
「さっきは見捨ててくれたな」
なんか目つきが悪くなっている。
「だって、ぼくに何ができるってのさ。どうしようもないじゃん」
ぼくはしどろもどろ言い訳をした。
「まあ、しゃあない」
おばさんはタクアンをバリバリ言わせながら箸で隣の空間をを突き刺した。
隣に顔の長いへんな生き物がいる。
「この妖怪変化の化け物どもというより、ばか者どもが、分りもしない聞きっかじりのコトバなんか使ってさ、あたしを本当に缶詰にしようとしたんだよ。だから言ってやったんだ。おまえらバカじゃないの? 缶の中に入ったら、原稿なんか書けないじゃないか。編集者などがいう“かんづめ”っていうのは、ホテルのようなところに作家を監禁して、監視役として編集者を張り付けることなんだよ、ってね。ホテル代払ってくれるのかい?、お金出しなって言ったら、みんな『ひえーっ』とか言って一斉に消えたんだよ」
あの「ひえーっ」はおばさんじゃなくてお化けたちの悲鳴だったのか。
「赤坂のホテルにでも缶詰めになりたかったな」とおばさん。
「で、その隣の人は?」
「妖怪ツケウマだと。監視役としてあいつらがくっ付けてきたんだ」
「ツケウマ?」
「古いよね。昔遊郭かなんかで遊んで、持ち合わせが足りないなんて時、家までついていった取立てやのことツケウマって言ったんだよ。監視役としては適任かもしんないけどさ」とツケウマの方を向き、
「あんたどうせなら改名しな。妖怪タントウサンとかさ。ケケケケ」
なんだか、おばさんも妖怪じみてきた。
それはそうと、とぼくは最大の疑問をおばさんに問いかけた。
「おばさんの部屋に缶詰が落ちてたけど、あれは?」
「あ、あれ? あれに私が入つていると思った? ケケケケ! いや、昼飯にツナ缶とサバ缶とどっちにしようかなと迷ったあげく、サバ缶食べることにして、ツナ缶置いてきただけだよ」
ツナ缶!? よく見りゃよかった。怖くて確かめることもできなかったんだ。
ぼくはこれ以上かかわりあいにならないようにその場を離れてリビングに戻った。
ところが、そこでぼくは妖怪に出会った時以上にぞっとするものに出くわした。
「や、八木沢さん!」
その代わり、部屋の真ん中に一つの缶詰。
お化けたちはおばさんを缶詰にすると言っていた。とすると、おばさんはその缶詰の中にいるのではないか? あの缶詰の中に、何がどんな具合に入っているのだろうと想像してぞっとした。まさか、ミンチ? いやいやいや、考えるのは止めよう。
しかし、おばさんがいなくなったことは、とりあえずママに言わなくちゃいけないんじゃないかな?
ぼくは1階に降りていった。ママがリビングでテレビを見ている。
「ママ」
「なあに?」
なんて切り出そう。
「ママあのね、おばさんがいない」
ママはテレビから目を離さず言った。
「おばさんならキッチンにいるわよ」
「え!?」
ぼくは半信半疑で台所をのぞいてみた。
そしたらいたんだ。おばさんが。何かの缶詰をおかずにお茶漬けなんかを食っていた。
「おば、おばさんは缶詰になってたんじゃ…?」
おばさんはぼくをじろりとにらんだ。
「さっきは見捨ててくれたな」
なんか目つきが悪くなっている。
「だって、ぼくに何ができるってのさ。どうしようもないじゃん」
ぼくはしどろもどろ言い訳をした。
「まあ、しゃあない」
おばさんはタクアンをバリバリ言わせながら箸で隣の空間をを突き刺した。
隣に顔の長いへんな生き物がいる。
「この妖怪変化の化け物どもというより、ばか者どもが、分りもしない聞きっかじりのコトバなんか使ってさ、あたしを本当に缶詰にしようとしたんだよ。だから言ってやったんだ。おまえらバカじゃないの? 缶の中に入ったら、原稿なんか書けないじゃないか。編集者などがいう“かんづめ”っていうのは、ホテルのようなところに作家を監禁して、監視役として編集者を張り付けることなんだよ、ってね。ホテル代払ってくれるのかい?、お金出しなって言ったら、みんな『ひえーっ』とか言って一斉に消えたんだよ」
あの「ひえーっ」はおばさんじゃなくてお化けたちの悲鳴だったのか。
「赤坂のホテルにでも缶詰めになりたかったな」とおばさん。
「で、その隣の人は?」
「妖怪ツケウマだと。監視役としてあいつらがくっ付けてきたんだ」
「ツケウマ?」
「古いよね。昔遊郭かなんかで遊んで、持ち合わせが足りないなんて時、家までついていった取立てやのことツケウマって言ったんだよ。監視役としては適任かもしんないけどさ」とツケウマの方を向き、
「あんたどうせなら改名しな。妖怪タントウサンとかさ。ケケケケ」
なんだか、おばさんも妖怪じみてきた。
それはそうと、とぼくは最大の疑問をおばさんに問いかけた。
「おばさんの部屋に缶詰が落ちてたけど、あれは?」
「あ、あれ? あれに私が入つていると思った? ケケケケ! いや、昼飯にツナ缶とサバ缶とどっちにしようかなと迷ったあげく、サバ缶食べることにして、ツナ缶置いてきただけだよ」
ツナ缶!? よく見りゃよかった。怖くて確かめることもできなかったんだ。
ぼくはこれ以上かかわりあいにならないようにその場を離れてリビングに戻った。
ところが、そこでぼくは妖怪に出会った時以上にぞっとするものに出くわした。
「や、八木沢さん!」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
原田くんの赤信号
華子
児童書・童話
瑠夏のクラスメイトで、お調子者の原田くん。彼は少し、変わっている。
一ヶ月も先のバレンタインデーは「俺と遊ぼう」と瑠夏を誘うのに、瑠夏のことはべつに好きではないと言う。
瑠夏が好きな人にチョコを渡すのはダメだけれど、同じクラスの男子ならばいいと言う。
テストで赤点を取ったかと思えば、百点満点を取ってみたり。
天気予報士にも予測できない天気を見事に的中させてみたり。
やっぱり原田くんは、変わっている。
そして今日もどこか変な原田くん。
瑠夏はそんな彼に、振りまわされてばかり。
でも原田くんは、最初から変わっていたわけではなかった。そう、ある日突然変わり出したんだ。
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―
七柱雄一
児童書・童話
スクナビコナは人の手のひらに乗る程度の小さな体の神です。
またスクナビコナは日本神話に登場する神でもあるのですが、作者としては日本の神話などに関する予備知識があまりなくても、読み進められるように本作を書いていくことを心がけようと思っています。
まだまだ『アルファポリス』初心者の上に未熟者の作者ですが、一応プロを目指す方向でやっていくつもりでおります。
感想、ご指摘、批評、批判(もちろん誹謗、中傷のたぐいはご勘弁願いたいのですが)大歓迎でございます。
特に特定の読者層は想定しておらず、誰でも読めるものを目指した作品です。
また『小説家になろう』『カクヨム』でもこの小説を投稿しております。
ではぜひお楽しみください!
もう一つの小学校
ゆきもと けい
児童書・童話
パラレルワールドという世界をご存じだろうか・・・
異世界や過去や未来とは違う現在のもう一つの世界・・・
これはパラレルワールドで、もう一つの別世界の同じ小学校へ行った先生と生徒たちの物語です。
同じ時間が流れているのに、自分たちが通っている小学校とは全く違う世界・・・
ここの自分たちが全く違うことに戸惑いながらも、現実としてそれを受け入れる生徒たち・・・
そして、元の世界に戻ってきた生徒たちが感じた事とは・・・
読んで頂けてら幸いです。
ひとなつの思い出
加地 里緒
児童書・童話
故郷の生贄伝承に立ち向かう大学生達の物語
数年ぶりに故郷へ帰った主人公が、故郷に伝わる"無作為だが条件付き"の神への生贄に条件から外れているのに選ばれてしまう。
それは偶然か必然か──
花束は咲良先生に(保育士)
未来教育花恋堂
児童書・童話
新米保育士の奮闘記です。子ども理解を大切にし、先輩保育士と対立しながらも子どもの成長を願って自分なりの考えを確立していきます。恋の行方が気になる内容となっています。
【奨励賞】花屋の花子さん
●やきいもほくほく●
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 『奨励賞』受賞しました!!!】
旧校舎の三階、女子トイレの個室の三番目。
そこには『誰か』が不思議な花を配っている。
真っ赤なスカートに白いシャツ。頭にはスカートと同じ赤いリボン。
一緒に遊ぼうと手招きする女の子から、あるものを渡される。
『あなたにこの花をあげるわ』
その花を受け取った後は運命の分かれ道。
幸せになれるのか、不幸になるのか……誰にも予想はできない。
「花子さん、こんにちは!」
『あら、小春。またここに来たのね』
「うん、一緒に遊ぼう!」
『いいわよ……あなたと一緒に遊んであげる』
これは旧校舎のトイレで花屋を開く花子さんとわたしの不思議なお話……。
君は魔法使い
わかば
児童書・童話
「私は、君だけの魔法使いだよ。」
君はそういう。君のいうとおり、君は魔法が使える。僕を飛ばしたり、笑顔にしたりできるんだ。でも、いつかは君も僕から離れて行っちゃうんだよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる