20 / 42
3章 逃げても勝てる
20話 緊急の話!?
しおりを挟む
そして武勇祭当日。
この六日間色々と対策をしてきた、と胸張って言いたいところだが実際は何もしていない。結局、筋トレも続かず、英気を養うだけでどんどん時間が過ぎていった。
それに緊張からか昨晩あまり眠れなかった……。
気づいたら朝になっていて姉ちゃんが起こしにきてくれたのだ。
「ねぇご飯よ!」
朝から甲高い声で俺を呼んでいる。
朝から姉ちゃんは元気なようだ。朝飯を作り、学園に行く支度までしてくれる。
それに屋敷の外はもちろん部屋の掃除まですべてやってくれるのだ。こんなできた姉ちゃん世の中どこを探してもいない。
寝間着から制服に着替え、鞄を持ったらそのまま洗面所に向かう。
顔を洗い口をゆすぐ。
寝癖がないかも確認して準備は整った。
その足で食堂に向かうと、豪勢な食事が並べられていた。いつものように卵やサラダはもちろん、鶏を丸々一匹焼いた物が机の真ん中に置かれていたのだ。
香ばしくていい匂い。
こんなの絶対美味いに決まってる。
「あ、ネオ君おはよう! とうとう今日だね。しっかり食べて精力つけなきゃね」
「いや、精力じゃなくて体力な。夜の試合でも始める気?」
「お姉ちゃんはいつでも構わないけど……」
「そこ、顔を赤くするなあああ!!」
朝からそのノリはキツい。
皿に取り分けられた料理を急いで食べると、俺は鞄を持ってすぐに屋敷を出た。もちろん姉ちゃんも一緒だ。
今日は偉く気合の入った格好をしている。いつもより露出が多く、胸元を強調しているようにも見えるた。スリット入りスカートからは姉ちゃんの生足がチラチラと姿を見せている。
それが余計にエロいのだ。
いつも通り学園に着くと、俺は大きく深呼吸をする。その間に校内放送が流れた。
「ネオとその契約獣リリス。すぐに学園長室まで」
そんな呼び出しがかかったのだ。
何の用件か、というより今日の試合についての説明かなんかだろう。詳しい話は学園長に会ってからになるが、どんな内容かは正直気になって仕方がない。
緊急参戦したという噂の自称勇者に関してか?
はたまた別の用件かは不明だ。
俺は学園長室の扉をノックした。
「入りたまえ」
そこには……黒の魔法帽を被り、口髭が恐ろしく伸びたご老人の姿があった。その隣には生徒会長であるユリアナの姿もあり、二人は何やら揉めている様子だった。
「学園長どういうことですか!? わたくしが勇者様と試合などバカげています」
あの座っているご老人が学園長だと?
いや、この状況についていけないんだが……学園長は白銀の髪でスタイル抜群、鋭い目つきに長いまつ毛、クールな女性だったはずだ。
けど、ユリアナ言う学園長はシワシワでヨボヨボなご老人じゃないか。
一体、どうなってる?
「おお、ようきてくれた。少し待っておれ」
「は、はい……」
ご老人はそう言ってユリアナとの話を再開した。
「バカげていると言ったかの? 果たしてそうかの? 魔術の天才児と呼ばれたお主なら勇者を負かすことも可能ではないかね?」
「相手は勇者様ですよ! それも今日までは噂でしかなかった異世界からの転移者と聞きました。そんな能力も不明な者を相手にするなど」
「ほほう、いつも平民に貴族の立場を利用しバカにし罵っているお主が弱音を吐くとはの。そんなに今の立場が大事かの?」
「いえ、わたくしが心配しているのは……もしも敗北してしまったら由緒正しきオブリージュ家に汚名を着せることになります。それだけはどうしても避けたいのです」
「なら、勝利せざる負えないの。ここで棄権するのも選択肢の一つ。しかしそれを知った周りの反応はどうなるかの?」
「それは……脅しですか?」
「さあ、どうかの」
「ふぅ、承知しました。わたくしが勇者様のお相手となりましょう。では諸々支度がありますので失礼します」
曇った顔をしたユリアナは静かに学園長室を出て行った。で、もう一度ご老人を見ると、俺の知ってる学園長の姿に戻っていた。
あのスタイル抜群の学園長に。
だけどあまり元気がないようで、ため息を吐きながら俺に優しく語りかけた。
「嫌な姿を見せたわね。あの姿、美しくないのよねぇ」
「確かにそうですけど……今の学園長はとても綺麗ですよ」
「あら、ありがとう。ネオは女誑しってよく言われるでしょ?」
「今、初めて言われましたよ」
そんな他愛もない話から始まり、本題に入るのだった。
「聞いてたと思うけど、ユリアナと勇者と呼ばれる転移者をぶつけることにしたから」
「じゃあ俺は参加しなくても……」
「いえ、あなたには予定通り参加してもらうわ。念のため、ね。もしもユリアナが勇者に勝利することがあれば、予定通りあなたと対決することになるわ」
「何で突然勇者が参加を?」
「あまり話したくはないのだけど」
「はぁ……でも学園長って魔国の王代理ですよね?」
「言いたいことはわかるけど、皆に見せている姿はあの老体の姿よ。誰も悪魔とは思わないし、尚のことさら魔国の王代理とは思わないでしょう。一人の人間、あの老人の姿で、わたくしはこの国で名が通っているの。シュゲルツ・カーマインという名でね」
まあ話はだいたいわかった。
誰かがユリアナと勇者を戦わせようとしていること。
きっと何か裏がある。
しかし単なる勇者――転移者の力を見たい、そんな単純な理由という可能性も考えられる。
「そう難しく考える必要はないわ。あなたはユリアナに勝利する、それだけを考えてくれれば結構よ」
「は、はい……」
「そろそろ時間ようね。ほら行きなさい。存分にリリスを使って魔王の器としての真価を発揮しなさい」
話は終わり、俺は学園長室を出た。
この六日間色々と対策をしてきた、と胸張って言いたいところだが実際は何もしていない。結局、筋トレも続かず、英気を養うだけでどんどん時間が過ぎていった。
それに緊張からか昨晩あまり眠れなかった……。
気づいたら朝になっていて姉ちゃんが起こしにきてくれたのだ。
「ねぇご飯よ!」
朝から甲高い声で俺を呼んでいる。
朝から姉ちゃんは元気なようだ。朝飯を作り、学園に行く支度までしてくれる。
それに屋敷の外はもちろん部屋の掃除まですべてやってくれるのだ。こんなできた姉ちゃん世の中どこを探してもいない。
寝間着から制服に着替え、鞄を持ったらそのまま洗面所に向かう。
顔を洗い口をゆすぐ。
寝癖がないかも確認して準備は整った。
その足で食堂に向かうと、豪勢な食事が並べられていた。いつものように卵やサラダはもちろん、鶏を丸々一匹焼いた物が机の真ん中に置かれていたのだ。
香ばしくていい匂い。
こんなの絶対美味いに決まってる。
「あ、ネオ君おはよう! とうとう今日だね。しっかり食べて精力つけなきゃね」
「いや、精力じゃなくて体力な。夜の試合でも始める気?」
「お姉ちゃんはいつでも構わないけど……」
「そこ、顔を赤くするなあああ!!」
朝からそのノリはキツい。
皿に取り分けられた料理を急いで食べると、俺は鞄を持ってすぐに屋敷を出た。もちろん姉ちゃんも一緒だ。
今日は偉く気合の入った格好をしている。いつもより露出が多く、胸元を強調しているようにも見えるた。スリット入りスカートからは姉ちゃんの生足がチラチラと姿を見せている。
それが余計にエロいのだ。
いつも通り学園に着くと、俺は大きく深呼吸をする。その間に校内放送が流れた。
「ネオとその契約獣リリス。すぐに学園長室まで」
そんな呼び出しがかかったのだ。
何の用件か、というより今日の試合についての説明かなんかだろう。詳しい話は学園長に会ってからになるが、どんな内容かは正直気になって仕方がない。
緊急参戦したという噂の自称勇者に関してか?
はたまた別の用件かは不明だ。
俺は学園長室の扉をノックした。
「入りたまえ」
そこには……黒の魔法帽を被り、口髭が恐ろしく伸びたご老人の姿があった。その隣には生徒会長であるユリアナの姿もあり、二人は何やら揉めている様子だった。
「学園長どういうことですか!? わたくしが勇者様と試合などバカげています」
あの座っているご老人が学園長だと?
いや、この状況についていけないんだが……学園長は白銀の髪でスタイル抜群、鋭い目つきに長いまつ毛、クールな女性だったはずだ。
けど、ユリアナ言う学園長はシワシワでヨボヨボなご老人じゃないか。
一体、どうなってる?
「おお、ようきてくれた。少し待っておれ」
「は、はい……」
ご老人はそう言ってユリアナとの話を再開した。
「バカげていると言ったかの? 果たしてそうかの? 魔術の天才児と呼ばれたお主なら勇者を負かすことも可能ではないかね?」
「相手は勇者様ですよ! それも今日までは噂でしかなかった異世界からの転移者と聞きました。そんな能力も不明な者を相手にするなど」
「ほほう、いつも平民に貴族の立場を利用しバカにし罵っているお主が弱音を吐くとはの。そんなに今の立場が大事かの?」
「いえ、わたくしが心配しているのは……もしも敗北してしまったら由緒正しきオブリージュ家に汚名を着せることになります。それだけはどうしても避けたいのです」
「なら、勝利せざる負えないの。ここで棄権するのも選択肢の一つ。しかしそれを知った周りの反応はどうなるかの?」
「それは……脅しですか?」
「さあ、どうかの」
「ふぅ、承知しました。わたくしが勇者様のお相手となりましょう。では諸々支度がありますので失礼します」
曇った顔をしたユリアナは静かに学園長室を出て行った。で、もう一度ご老人を見ると、俺の知ってる学園長の姿に戻っていた。
あのスタイル抜群の学園長に。
だけどあまり元気がないようで、ため息を吐きながら俺に優しく語りかけた。
「嫌な姿を見せたわね。あの姿、美しくないのよねぇ」
「確かにそうですけど……今の学園長はとても綺麗ですよ」
「あら、ありがとう。ネオは女誑しってよく言われるでしょ?」
「今、初めて言われましたよ」
そんな他愛もない話から始まり、本題に入るのだった。
「聞いてたと思うけど、ユリアナと勇者と呼ばれる転移者をぶつけることにしたから」
「じゃあ俺は参加しなくても……」
「いえ、あなたには予定通り参加してもらうわ。念のため、ね。もしもユリアナが勇者に勝利することがあれば、予定通りあなたと対決することになるわ」
「何で突然勇者が参加を?」
「あまり話したくはないのだけど」
「はぁ……でも学園長って魔国の王代理ですよね?」
「言いたいことはわかるけど、皆に見せている姿はあの老体の姿よ。誰も悪魔とは思わないし、尚のことさら魔国の王代理とは思わないでしょう。一人の人間、あの老人の姿で、わたくしはこの国で名が通っているの。シュゲルツ・カーマインという名でね」
まあ話はだいたいわかった。
誰かがユリアナと勇者を戦わせようとしていること。
きっと何か裏がある。
しかし単なる勇者――転移者の力を見たい、そんな単純な理由という可能性も考えられる。
「そう難しく考える必要はないわ。あなたはユリアナに勝利する、それだけを考えてくれれば結構よ」
「は、はい……」
「そろそろ時間ようね。ほら行きなさい。存分にリリスを使って魔王の器としての真価を発揮しなさい」
話は終わり、俺は学園長室を出た。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。
今年で33歳の社畜でございます
俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました
しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう
汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。
すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。
そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる