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第3章
158.毛が入るよ!。
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すごくすごく怖い、永遠とも思えるような夢を見て、飛び起きて。目が覚めた時の視界は暗くて。
「ヒュッ……クッ…ウッ…ハッ……ケホッ…」
『ユキ!ユキ!大丈夫?!』
恐怖心は簡単に呼吸法を忘れさせる。
久々に息の仕方を忘れ、そばにいたアミュートにも気づかなかった。俺の手はアミュートの毛を握りしめているため、手からアミュートの柔らかい毛の感触やあたたかい体温が伝わってくるはずなのに、そこへ感覚が戻らない。
呼吸が苦しくても、手を動かすことはおろか、体を動かすことも出来なかった。
まるで金縛りにあっているような。こんな感覚は前世ではたまにあったが今世では初めてだった。
苦しくても体が動かないと、藻掻くことで呼吸のしやすい体勢を探すことすらままならない。
苦しくて苦しくて、どこかに縋りたい。
そう思っても身体は動かないし、握りしめて離れないアミュートの毛に意識を向けることも出来ない。
出来ないことばかりで、さらにパニックになってしまうが、アミュートの声掛けに意識を持っていかれることは無かった。
『ユキ、ユキ!ユキ、聞こえる?!ユキ!』
それは名前を呼ぶだけ。それでも、焦る声音や流れてくる感情に意識を持っていくことで、恐怖に向いていた意識を分散させることが出来ていた。
それでも俺は呼吸が上手くできず、息を吐くばかり。吸えばそれもままならず、変な所へ入ってしまい噎せてしまう。そしてその苦しさは俺の意識を恐怖心へと連れていく。
アミュートの声掛けに救われるのは、どうしようもなく怖くなってもう意識を手放したい、助けて欲しい、そう思って縋る先を探すほんの一瞬。それでも俺には嬉しい一瞬。
でもだからこそ意識を手放すことが出来ず、解放されない苦しみと恐怖。
『ユキ、ユキ、ゔぅ……どうしよう……ユキ!あ!』
なにか閃いたようにアミュートは、寝起きのままの体制で苦しむ俺の口と鼻をふにカチの肉球やふわモサの毛で覆い塞いだ。
『息、止めちゃおう!そしたらどうにかなる!ね!ユキ、息しないで!毛が入るよ!』
俺は恐怖でパニックを起こしているため、何を言っているのか上手く聞き取れなかったが、塞がれたことにより空気を吸うことも吐くことも出来なくなってしまった。
しかしそれが良かったのか、少しずつ意識がアミュートの声へと向く。
『ユキ、出来ればそのままもう少し息を止めてて。』
『あ…みゅ…』
『ユキ?!聞こえる?!聞こえた?!ユキ、大丈夫?!あぁ、よかった…ゆっくり、ゆっくり、僕の手の動きに合わせて呼吸してみて。ゆっくり、出来るだけゆっくりね』
頑張ってアミュートに念話を送れば嬉しそうな声が届いてきて、俺の口元を塞いでいた手を俺の身体へと持ってきて、やさしく、ぽふぽふと叩いて呼吸のリズムを教えてくれる。
1度呼吸を止めて変になったリズムをリセットしたことにより、さっきよりは幾らか上手く呼吸をすることが出来た。
ある程度落ち着くと、アミュートは嬉しそうに俺の顔を舐めながら、よかった…よかった…と言っていた。
せっかく寝てたのに、体力を回復するどころか消耗してしまった俺は、喜んでいるアミュートに、もう一度寝てから何があったか話してもいいかと尋ね、アミュートを抱き枕にしてもう一度目を閉じた。
「ヒュッ……クッ…ウッ…ハッ……ケホッ…」
『ユキ!ユキ!大丈夫?!』
恐怖心は簡単に呼吸法を忘れさせる。
久々に息の仕方を忘れ、そばにいたアミュートにも気づかなかった。俺の手はアミュートの毛を握りしめているため、手からアミュートの柔らかい毛の感触やあたたかい体温が伝わってくるはずなのに、そこへ感覚が戻らない。
呼吸が苦しくても、手を動かすことはおろか、体を動かすことも出来なかった。
まるで金縛りにあっているような。こんな感覚は前世ではたまにあったが今世では初めてだった。
苦しくても体が動かないと、藻掻くことで呼吸のしやすい体勢を探すことすらままならない。
苦しくて苦しくて、どこかに縋りたい。
そう思っても身体は動かないし、握りしめて離れないアミュートの毛に意識を向けることも出来ない。
出来ないことばかりで、さらにパニックになってしまうが、アミュートの声掛けに意識を持っていかれることは無かった。
『ユキ、ユキ!ユキ、聞こえる?!ユキ!』
それは名前を呼ぶだけ。それでも、焦る声音や流れてくる感情に意識を持っていくことで、恐怖に向いていた意識を分散させることが出来ていた。
それでも俺は呼吸が上手くできず、息を吐くばかり。吸えばそれもままならず、変な所へ入ってしまい噎せてしまう。そしてその苦しさは俺の意識を恐怖心へと連れていく。
アミュートの声掛けに救われるのは、どうしようもなく怖くなってもう意識を手放したい、助けて欲しい、そう思って縋る先を探すほんの一瞬。それでも俺には嬉しい一瞬。
でもだからこそ意識を手放すことが出来ず、解放されない苦しみと恐怖。
『ユキ、ユキ、ゔぅ……どうしよう……ユキ!あ!』
なにか閃いたようにアミュートは、寝起きのままの体制で苦しむ俺の口と鼻をふにカチの肉球やふわモサの毛で覆い塞いだ。
『息、止めちゃおう!そしたらどうにかなる!ね!ユキ、息しないで!毛が入るよ!』
俺は恐怖でパニックを起こしているため、何を言っているのか上手く聞き取れなかったが、塞がれたことにより空気を吸うことも吐くことも出来なくなってしまった。
しかしそれが良かったのか、少しずつ意識がアミュートの声へと向く。
『ユキ、出来ればそのままもう少し息を止めてて。』
『あ…みゅ…』
『ユキ?!聞こえる?!聞こえた?!ユキ、大丈夫?!あぁ、よかった…ゆっくり、ゆっくり、僕の手の動きに合わせて呼吸してみて。ゆっくり、出来るだけゆっくりね』
頑張ってアミュートに念話を送れば嬉しそうな声が届いてきて、俺の口元を塞いでいた手を俺の身体へと持ってきて、やさしく、ぽふぽふと叩いて呼吸のリズムを教えてくれる。
1度呼吸を止めて変になったリズムをリセットしたことにより、さっきよりは幾らか上手く呼吸をすることが出来た。
ある程度落ち着くと、アミュートは嬉しそうに俺の顔を舐めながら、よかった…よかった…と言っていた。
せっかく寝てたのに、体力を回復するどころか消耗してしまった俺は、喜んでいるアミュートに、もう一度寝てから何があったか話してもいいかと尋ね、アミュートを抱き枕にしてもう一度目を閉じた。
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