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第2章

111.ノア家族の話─4。

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ナルは、子供が出来れば自分を見てくれると思っていた。
ジャルジャは、気持ち的には平等ではないが行動は平等にしようとつとめていたが、ナルの出産後すぐはナルを労い、フリネの出産後はフリネを労っていた。それは、ある意味平等だが、嫉妬に歪んでいるナルには、“子を産んだから用無し”そういう風に写ってしまっていた。

そして、行動は平等だが、フリネを見つめる恋する乙女のようなジャルジャの瞳はナルの嫉妬心を煽るには十分だった。

ナルはラルカに依存し、自分を見て貰えなくても、子供であるラルカは見てくれるだろうと、ラルカを利用するようになった。

ジャルジャはそんな事をされずとも、2日に1度ナルの元へと行き、お話をしていたというのに。
向けられる瞳は恋する乙女ではなかったが、家族だと思い大切にしていたのに、ナルは恋する乙女の瞳を求めてジャルジャの思いに気付くことは無かった。

そしてジャルジャは気付いていた。
ナルがジャルジャを恋い慕っている事に。

向けられる瞳が、自分がフリネに向けているそれと一緒のように思ったからだった。
そして、その想いが一方通行の辛さを知っているため、応えようと努力をしていた。

どんなに忙しくても、2日に1度は会話の時間を確保していた。その皺寄せで、ごく稀にフリネと過ごす時間が無くなることも我慢して。

フリネはそれを理解していた。むしろ『そんなに忙しいのなら来なければいいのに』と思っていた。ジャルジャは薄々気付いていたが、気付かないふりをしてやり過ごしていた。




それから2年が経ち、子供たちに物心がつき始めた頃、積み重なった綻びが、目立ち始めた。

ナルはラルカにノアを近付けることを嫌がっていた。しかし、そんなナルの気持ちなんて露知らず子供たちは親睦を深めてしまう。同じ家で育てばどうしたって会うことはあるのだから。

するとナルはラルカを部屋から一切出さないようにし、ラルカに近づく人間を完全に選ぶようになった。
しよう人は1から選び直し、そばに置くものを決める。乳母はつけず、ナルが育てるようになった。

しかし、子供はふと目を離すとどこかへいってしまうもので、そのどこかへ行った先でノアと出会い、仲良く遊んでいたある日。

ナルはノアをぶった。

それは大人が赤子に向ける力ではなく、感情的に、瞬間的に殴り、ノアは少しだけ吹っ飛んでしまった。
その様子は皆が見ていた。そう、が。

ジャルジャやフリネ、そしてその場にいた使用人たち含め全員が、状況を上手く整理できず、その場に立ち尽くしてしまった。それは1分か、10秒か、5分か……分からないが、まっさきに正気に戻ったフリネは鳴き声すら上げない我が子に駆け寄り様子を確認した。

そして、後頭部と頬を腫れさせたノアは気を失い、その後一日熱を出して寝込んでしまった。



ナルが手を挙げた理由は2つあった。

1つ目は、我が子に近づくノアに腹が立ったから。
2つ目は、自分は呼ばれていないその場で、仲睦まじい家族の光景を見た嫉妬と怒りだった。







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