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第1章

72.うさちゃん。

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「ユキ!これなんてどうだ?」

そうしてノアさんが俺に聞くのは雑貨屋のような店の中。俺に持たせたい人形をガイさんと共に選んでいる。その間俺の抱っこをライさんが代わろうか?と言ったが断固として拒否していた。

「いや、それもいいがこれもいい」
「あーー!それもいいな~どれにしようか…」

あーだこーだと、仲良く言い合っている2人。こうしてみると仲良いのに…。
と言うか、俺中身15歳なもんで人形なんて不要なのだが?

「いりゃにゃいよ?」
「「はぁ?!?!」」

いらないと伝えると、2人がすごい形相で迫ってきた。ちょっとこわ。

「子供は人形好きだろうが!」
「そうだろ!俺は好きだぞ!」
「「え…」」
「あ、いや違うぞ?俺が人形を好きなんじゃなくて、人形を持ってる子供が好きなんだ!!」
「ドヤることじゃないが、分かるぞ!!!」
「だろ!!!」

一瞬ノアさんの発言にライさんと二人びっくりしたが、その次の発言にもびっくりした。
そしてそれに同意するガイさん。
容姿のいいふたりが、今とても残念に思えた。



「これはどうだ?」
「お、いいな!それがいいな!」

2人でワイワイとしばらく人形選びをしていて、ようやくいいのを見つけたようだ。
一人は整った顔立ちだが、ガタイがよくムキムキでいかにも冒険者、といったナリ。もう1人はイケメンだが、冒険者感のある細マッチョという体格に格好。
そんなふたりがファンシーなぬいぐるみを選んでいる絵面はとてもシュールだった。

「「ユキ、どうだ!!」」

そうして目の前に持ってこられたぬいぐるみは片耳の折れた可愛い、薄いピンクのうさぎさん。いや、うさちゃんと呼ぶのがふさわしいと思う。
瞳は本物か偽物か分からないが宝石のようにキラキラと光る薄い水色の物が埋め込まれていた。
首元にはチェックのネクタイが巻いてあり、服は着ておらず、襟だけがネクタイに付いていた。それはどうやら2人が選びつけたらしい。
ということは着せ替え人形のようにもできるということだろう。

「かぁいいね!!」

素直に可愛かった為、可愛いね、と普通に感想を告げる。

「「気に入ったか!これにするか!」」
「う~~ん…」

持たされて、触れてみるとそのぬいぐるみは柔らかい素材でできているのか、とてもふわふわしていて手触りが良い。思わず頬ずりしたいなという衝動に駆られる。
しかし、ほんのりと右耳が暖かくなりハッとする。これは浮気ではないか?と。
だって俺にはアミュートという最高のもふもふがいるのに、俺は…俺は、ぬいぐるみに頬ずりしかけた…アミュート!ごめん!!
すると直ぐに右耳がほわっとして、そこから伝わる感情に俺はほっとした。

「気に入らないか?」
「んー」

正直、子供の人形を持つ姿は可愛いだろう。だがしかし、俺の中身は子供じゃないため羞恥心がある。15歳の思春期真っ只中の男の子に人形を持たせるのは……。まぁでもみんなはその事を知らないんだもんな。しかたないか。
せめてうさぎさんはやめて欲しい。

「うさちゃん、ちあうにょにゃい?」
「うさぎは嫌か?」
「う~ん…」

言い切ることは出来なかった。だってうさぎさんは可愛いし?好きだよ?でも、これはうさぎさんと言うより、うさちゃんじゃん?それは恥ずかしいというか……それに俺、中身どうこうなしで、男の子だよ?いくら2歳児でも男の子がうさちゃんは…ねぇ。









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