上 下
45 / 218
第1章

45.クルトンと言いたい。

しおりを挟む

「食えたか?これも食ってみるか?」

パンを3口ほど食べたところで、ノアさんが野菜の様なものを渡してくれた。
……野菜のようなものだ。そう。ようなもの。

「……こえ、にゃに?」
「野菜だ。」

え~かってにもしょもしょと動く野菜ってある?

「食ってみろ!ほら、うまいぞ」

そう言ってノアさんが一口食べて見せてくれる。……大丈夫そうだ。

「ん……ん!」
恐る恐る食べると、口の中で僅かに動くのは気持ち悪いが、たしかに美味しかった。
シャクシャクしていてとても瑞々しい。
普通の野菜とは見た目も味も違うが、とても美味しかった。敢えてなにかの食べ物に似せるなら、レタス…だろうか?

「こえは?」
もう一口食べようと思ったら、その野菜にまじってなにか四角い茶色いのがあった。
前世だとクルトンかな?って思ったが、ここは異世界。怖くてよく知らない食べ物は食べたくない。

「ん?これは、パンを作る時に少し材料を変えて作られるやつだ。パンに似ているが、日持ちしないし、よく料理に混ぜて使われるやつだ。」

……クルトン?

「((ぱくっ))
ん!くうとん!」

程よく固くて、どことなくクルトンだった。完全に一致はしていないが、さっきのパンより何倍も柔らかい。カリカリサクサクしている。もうひとつ食べてみると、どうやらものによって食感が違うようだ。
これ美味しい!クルトン!俺クルトン好き!

「くうとん?なんだ?それは。これは名前すらないぞ?パンの粗悪版…と言ったところだ」
「……くうとんやにゃいにょ?」
「くうとんってなんだよ…クスクス。可愛いな」

名前ないならクルトンでいいじゃん。

「こえ、くうとん!」
「そうかそうか、なら、これからこれはくうとんだな」
「ちかう!くうとん!~~~っ……く、う……りゅ!……くりゅちょん!~~~~~~っ……!」

全然言えない。

「「「???」」」

ほら、全然伝わってない。

「くりゅちょん?…………あ、くるとん!」
「しょう!!!」

流石ガイさん!!!よく通じたね!

「おまえ、よく分かったな?」
「今までの話し方から…」
「((ギューーーッ))」

発音できないもどかしさから開放された俺は、勢いとテンションでガイさんに抱きついた。

「おお…これは“くるとん”か?」
「しょう!」
「……っ(俺の膝の上に居たのにっ!)」
「くるとんって名前可愛いね」
「かーいい!」

そうだね~クルトンって可愛いよね~ほわほわしてるし。

「可愛い名前付けたな~」
「…」

ガイさんは俺の頭を撫でながら褒めてくれる。
でも、俺発案の名前じゃないんだよ。似てるからそう呼びたいだけであって。

「どうした?」
「んーん!」
「そうか?なら、このまま俺の膝の上で続きを食べような」
「あ、ずるいぞ!お前は昨日食べさせただろ!今日は俺だ!」
「は?ユキが自分から俺のところに来たんだ、ユキの気持ちを優先させるべきだろうが!!」
「お前の意思だろうが!」
「……」

2人が俺のせいで喧嘩を始めてしまったので、俺は静かにライさんの膝の上へと移動した。

「あ、こっちで食べるのね((コソッ))」
「うん((コソッ))」
「「しー…クスクス」」

俺とライさんは2人にバレないように静かに笑った。








しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

処理中です...