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第1章
3.過去。
しおりを挟む俺の家での扱い?あーそれはね……“体のいい家政婦”かな。
────……家政婦じゃと?
そう。俺は基本家事をしてたね。あとは内職?
家に帰るとまず、洗濯を入れて畳んで、掃除機かけて、弟のお迎え行って買い物して、ご飯作って片付けて。弟をお風呂に入れて寝かしつけて。あとは……あー兄の部屋の掃除とか頼まれたらしてたね。頼まれてないのにするとボコられたからやらないけど。それらが終わったら、内職。母さんはやらないからね…
で、朝起きたらみんなのお弁当作って朝ごはんの下準備して、朝終わる様にタイマー掛けてた洗濯物干して、朝ごはん作って、弟起こして着替えさせたり世話をして、兄達起こして、ご飯食べさせて、後片付けして、保育園連れてって。
で、その後学校行く。ってスタイル。
────……お主…すごいのぉ…。でも、なぜそんな扱いなのじゃ?そういうのは親か兄の役目じゃろ?内職なんてもっと親か兄の役目じゃろう。中学生がするものなのか?
大体はそうだね…でも俺、無能だからね。
────なにがじゃ?そんなに一日よく働いておって家事もこなして、みなに何不自由なく生活させておいて何が無能なんじゃ?
そっか…確かに…有能家政婦って感じだね。そこだけ見ると。
でも、親の見るところはそこじゃないよ。
運動神経、芸術的センス、そして学力。所謂学校、世間からの評価ってやつだよ。
俺は元々理解力が他の人より劣っている…というより、理解するのが遅かったんだ。情報の処理能力が遅い。処理さえ出来れば、理解はできるしちゃんとできる。本来はね。
────本来は…というと?
算数とか、するでしょ?するとすぐに答えを出さなきゃいけない。
────あぁ、そうじゃの。しかし、ゆっくりでも構わないはずじゃろ?
そうね~ふうつはね~。
でも、うちは出された問題はすぐに答えなきゃ行けなかった。元々はお金持ちの家だったから、家庭教師とかいて、兄達に付いていて。俺も引っ付いて一緒に受けていて。
すると問題を出される。俺の年齢にあった問題を。
でも俺は処理能力がとても遅かった。だから、問題を理解するのに時間がかかる。するとすぐには答えられないでしょ?
────あぁ…そうじゃな
そう。それで、俺が理解に手間取ってる間に先生は『こいつはダメだ』と評価する。それが親につたわり、俺は“アホ”だと評価される。
そして、別のことをさせられる。ピアノやバイオリン、フルートやチェロ…様々な楽器をさせられ、それも上手くできない。兄達はすぐに弾けたのに。
その次はスポーツを色々させられる。バスケ、バレー、テニスに卓球、サッカー、野球、水泳、柔道……ほんとに色々なスポーツをさせられて俺は全部兄より劣っていた。
────でもそれは、年齢が違うからじゃろ?
いや、“兄たちがしていた年齢と比べて”だよ。
同じ歳にやって、同じ期間やらせて、劣ってたんだ。無能だと判断するには十分だよ。
俺には芸術的センスや運動センスがない。頭も良くない。そういう評価を下されたって仕方ない。
でもね、兄達が規格外なだけで別に俺そんなに無能でもなかったと思うんだよ。自分で言うのはあれだけどね。
────というと?
どれもコンクールや試合では3位とか…4位とか…5位以内だったんだよ?初めて1年以内で。
ちゃんと目指すなら満足しちゃいけない順位だけど、有能無能の判断には十分じゃない?
────すごいのぉ!それで無能判定とな?!
そう…学校では褒められ羨ましがられ、家に帰ると無能扱い。
3年間一緒だった2人の友達は、俺の事情を知ってたから、話には出さなかったけど、他の人には『なんで才能あるのに部活に入らないんだ』とか『色々なものに手を出して全部中途半端に辞めて、本気にならないムカつく野郎』とか色々言われたけどね。そのせいで虐められたりとかもあったし。まぁ実際に、試合とかの成績が兄と比べて良くないと、直ぐに『無駄だ』と辞めさせられてたし。傍から見たら中途半端だよね、全部。
────お主は言い返さなかったのか?
そうだね。別に、続けようと思えば続けられたと思うんだ。子供のうちは。
まぁ、実際は両親が離婚して、母さんにみんなついてって、今までみたいに習い事続けられなくなったから、どうせ続けさせてもらえてても、辞めなきゃ行けなくなってたよ。
兄たちも、だいたい全部1位取ったら満足して辞めてたし…習い事できなかったのは弟だけかな……あーでも、俺が死んだら保険金とか慰謝料とか出るだろうし、暮らしは楽になるだろうね。
────わし、お主がとっても不憫じゃ。可哀想じゃ。そして申し訳ない。
なんでおじいさんが……あ、神様が申し訳なく思うの?
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