カピバラになりたい牛

8.飼育員

いつも朝一担当の“ヤナ”に元気がない。
いつもなら朝の挨拶をしてくれるのに、今日はなし。
というより気付いていないという感じだった。
いつもなら俺が行くと真っ先に気づき、嬉しそうに話しかけてくる。
何を言っているのか分からないけど、いつも嬉しそうだった。

なのに今日は気付いていない。挨拶をしない。俺が話しかけても反応しない。面倒臭そうにこちらをチラッと見るがそれだけ。
本当にヤナか？別人級に反応が違う。入れ替わってたりしない？

座り込んでしまった。もう絶対におかしい。

俺は急いで獣医の所へ向かった。

「あの！ヤナが元気なくて…」
「あのいつも元気なヤナが？」
「そう。いつもは楽しそうにお喋りしてるのに、今日は俺が来たことにも気付かなくて、話しかけても面倒臭そうにチラッと見るだけ。
しまいには、完全に伏せてしまって…」

「そう……心配だね。ちょっと見に行こうか」
「お願いします」

常駐獣医にはいつも世話をしている牛の様子を話していた。
もちろんヤナのことも。

昨日は元気で沢山お喋りしてたこととか。
その後も他の牛の所へ行っていたりしてたこととか。

だから、獣医のこいつもおかしいって思ったんだろう。すぐに用意をして向かってくれるそうだ。俺もついて行く。