カピバラになりたい牛

2.

今日も私の大好きな飼育員さんが来てくれた。
きっと届かないけれど、今日も話しかけてみた。

「も～～『おはよう、飼育員さん。今日もいい天気ね』」
「はぁ～～いつもいつも俺が行くとモーモーモーモー言いやがって…うるせぇよ。大体何で俺が牛の世話しなきゃなんねぇんだよ…

牛は食うのは好きだが、触れ合うのも、世話をするのも嫌なんだ。

俺はカピバラが好きなの！わかる？俺は牛は好きじゃないの。
流石にカピバラは食わねぇけど、触れ合うのも世話をするのも、牛じゃなくてカピバラがいいの！
わかんねぇよな～こんなこと言っても。はぁ～～」


今日も私の言葉は届かなかったみたい。

私の大好きな飼育員さんは、いつも悪態をつきながら私の世話をしてくれる。

私の体を拭いたり、ブラシをかけたり。乳を搾ったり。
その全てが態度とは逆ですごく丁寧。

初めは悪態ばかりついて、『なんて人なの?!』と思っていたけど、今までの方よりも何よりも丁寧で…それが私が恋をした理由。

いつも“カピバラがすき”と言われるのはすごく悲しいけれど。
私はカピバラを見た事がないわ。次来てくれた時にでも聞いてみようかしら。きっと答えてはくれないけれど……