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第五十四話 彼女の勇気と大きな転機
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「エリー、急で申し訳ないのだけど、夕食を一人分追加できる?」
俺はパタパタと台所で勤しむ彼女に声をかける。
「あ、晴成さん。大丈夫ですよ、皆さんよく食べるので多めに作りましたから、一人分くらいなら問題ありません。お客さんですか?」
「うん。色々あって今日は泊まってもらうことにした。急に予定を変更して悪いね」
「いえ、大丈夫です。晴成さんがそう判断したなら問題は有りません。きっと理由もお有りでしょうし」
彼女はにっこりと微笑んだ。俺は、ありがとう、と返す。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
声の方を向くとキャロがエリーの手伝いをしていた。
「お、キャロちゃん、お手伝いしてるの? 偉いねぇ」
キャロの頭を撫でてやると、キャロは嬉しそうな、満足気な顔をした。エリーはそんな俺たちを微笑ましく見ている。
◇◆◇◆
「晴成さん、先にお風呂、有難うございました」
ラフィアが風呂上りに声をかける。ミーナ、シンシアからも礼を言われた。
ラフィアに倣ったのか、順番を先に譲ってもらったことへの感謝の文化が有るのかは知らないが、こういう習慣は嬉しい。
ふと、ラフィアの横でモジモジするルナが目に入る。
「あ、あの、お風呂に入れてもらってありがとうございます。服もこんな上等なもの着せていただいて……そ、それで、ダー……違った、晴成様はお貴族様ですか?」
「え、違うよ? 生まれも育ちも平民ですが……ラフィア説明してあげなかったの?」
疑問符の付いた俺はラフィアを見た。彼女は少し嘆息をついて説明してくれた。
「いえ、致しました。ルナには晴成さんが貴族なんかではなく、世界の王となり、世界中の女性をハーレムに加える方だと説明したのですが……予備知識が無いのか、今一つ理解をしてもらえない様子で……」
今度は俺が嘆息が出た。
ラフィア、その考えはまだ捨てて無かったのか。それに、結婚を申し込まれたのを無碍に断る気は無いが、幸せな女を寝取る気はないぞ?
「えぇっとね、ルナ、改めて説明するけど、俺は生まれも育ちも平民です。将来はどうなるかは分からないけど、ね。それで、現在のお嫁さんは正妻がラフィア、二番目がエリー、三番目がキャロの三人がいます。ですが、貴族ではありません」
噛み砕くようにルナに説明をする。
「え? 晴成様はお貴族様では無いんですか? それなのに複数の女性と結婚? あ、でもまだ成年してないから口約束なのかな?」
どうもルナの混乱が深まったようだ。説明間違えたかな……
「成年したらきちんと妻に迎えます。それに俺はこの国の住人では無いので、この国の法律に縛られません。特に結婚はね」
「外国の方だったんですね。それで平民なのに複数の女性と結婚が出来るんですね」
ルナの言う外国と俺の言う外国はかなりの相違は有るだろうが、ようやく俺が平民なのだと納得をしてもらえたようだ。
「だから、ルナも今まで通りの話し方で大丈夫だよ」
「いいんですか? 今までみたいに“ダーリン”って呼んで……」
キョトンとする彼女に、良いよ、と返事を返すと、彼女の顔に花が咲く。
「ほら、ルナ、話はそれだけでは無いでしょう」
ラフィアの言葉にルナが明らかな動揺をする。まごつくルナにラフィアが何やら小言でハッパをかけていた。彼女は観念したのか数度深呼吸すると、此方に強い眼差しを向ける。
「ダーリン、初めて会った時から好きでした。私をお嫁さんにして下さい」
突然の愛の告白に俺は少し戸惑った。でも、嬉しい気持ちが満たされていく。
ラフィアの時はグダグダだが、一応こちらから。エリーはほぼ済し崩し。キャロは理解が怪しい。そう考えると、面と向かっての告白されるは初めてか。そうかぁ、俺、初めて告白されたんだなぁ……
「……や、やっぱり嫌だよね。こんな農家の貧乏娘なんか……」
か細い声が聞こえた。
「あ、いやいやいや、違うんだ。女の子から告白されたのは初めてだから、ちょっとびっくりしただけだよ」
俺が物思いに耽っていると、返事をしないことに失望してルナが落ち込んでいた。思わぬ出来事に俺は動揺しつつフォローをしなければいけなかった。
「あら、女の子の告白ならキャロが先ですよ」
「キャロはよく理解してないでしょうが……」
《そうかなぁ、あれくらいの年なら“結婚”自体は理解していると思うけど?》
えぇ~~?
ラフィアの物言いにツッコミ返したら、アルルが聞き捨てならないことを言う。
キャロは確か六才だろ? 地球なら年長さんか、入学したてだぞ? 女の子はマセているとは聞くけど、なぁ……
「晴成さん、話がそれましたが、ルナへの答えを聞いても良いですか」
「ルナ、遅くなってごめん。四番目で良ければ俺のお嫁さんになってくれる? 後、他のお嫁さんたちはもちろん、ここに住んでいる他の人達とも仲良くして欲しい」
ルナは俺の言葉に嬉しい、と一言漏らすと、ぼろぼろと涙を流した。ついにはへたり込んでわんわんと泣くので、俺とラフィアがあやすのだった。
◇◆◇◆
夕食となり、皆が席に座る。そこで改めて自己紹介となった。
「彼女は今日から一緒に住むことになった冒険者のルナ。先ほど四番目の妻になってもらいました」
俺の紹介でルナが挨拶する。
「今日から御厄介になります、ルナです。Fランク冒険者をしています。それと先ほどダーリンに結婚を申し込みました。その場で、はい、の返事をいただきました、宜しくお願い致します」
彼女は恥ずかしそうに頭を下げた。
「やっぱりこうなったのね。ルナちゃん、覚悟しときなよ、晴成君は口説き上手だからこれからもたくさんお嫁さんが増えるからね、絶対!」
ミーナが呆れた様子で言う。ルナは素直なのか、分かりました、と返事を返す。
その後はラフィア、エリー、キャロが挨拶をする。
「え? エリーさん、キャロちゃんはさすがにダーリンとの子供で無いですよね。そうするとエリーさんは再婚ですか?」
ルナが親子で俺の嫁になっていることに驚いていた。まぁ、普通の反応だよな、ミーナたちも最初は驚いていたし……
「いいえ。少し恥ずかしい話なのだけど、キャロの父親とは結婚前に別れたので、初めての夫は晴成さんですよ」
「「「えぇ~~!!」」」
事情を知っているラフィア以外が驚きの声をあげる。キャロは少し首を傾げていた。
エリーがキャロの出生時の事を話すなんて吹っ切れたのかな?
「パパ? パパは旅に出たってママが言ってた。前はパパが欲しかったけど、でも、キャロ、パパ居なくても大丈夫だよ、お兄ちゃんのお嫁さんだから。前にね、ユリナちゃんが教えてくれたの、結婚したらパパと別々に暮らすんだよって。だからキャロはパパがいなくても大丈夫なの」
淡々と話すキャロ。それ、ちょっとした爆弾発言なんだけどな……
エリーも少し驚いている所を見ると、色々と知らないことが有ったみたいだ。
ところでユリナちゃんて誰だろう? キャロの友達っぽいけど……
「ねぇ、ママ、ママも結婚はじめてなの?」
「そうよ、キャロと一緒。ママの初めての旦那様がお兄ちゃんよ」
無邪気に話すキャロに、あやすように答えるエリー。
「そっかぁ、ママもキャロと一緒だね」
「そうね、一緒ね」
周りを置き去りにして、キャロはエリーと“一緒”であることを喜んでいた。
「話がそれちゃったけど、自己紹介の続きね。もう知っているとは思うけど、シンシアとミーナ」
「改めまして、シンシアです。ギルドの受付チーフをしております」
「ミーナです。ギルドの受付をしてます。後、晴成君たちの専属受付です、ぐらいかな……」
一通りの自己紹介が終わると、ようやく食事となる。ルナが俺たちに釣られて”いただきます”を見よう見まねでする。俺はそのぎこちなさが少し可愛らしく思えた。
ルナは“いただきます”の説明を聞きながら、エリーの料理に舌鼓を打つ。それはもう、とにかくべた褒めだった。
そんな楽しい夕食の中、俺はふと、思い出したことを口にする。
「そうだ、近日中に領主婦人のユーリさん達がウチに住むことになる。みんな、宜しくね」
「「「「えぇぇ――!!」」」」
ラフィアとキャロ以外の女性たちのハモった声がキッチンに響いた。
俺はパタパタと台所で勤しむ彼女に声をかける。
「あ、晴成さん。大丈夫ですよ、皆さんよく食べるので多めに作りましたから、一人分くらいなら問題ありません。お客さんですか?」
「うん。色々あって今日は泊まってもらうことにした。急に予定を変更して悪いね」
「いえ、大丈夫です。晴成さんがそう判断したなら問題は有りません。きっと理由もお有りでしょうし」
彼女はにっこりと微笑んだ。俺は、ありがとう、と返す。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
声の方を向くとキャロがエリーの手伝いをしていた。
「お、キャロちゃん、お手伝いしてるの? 偉いねぇ」
キャロの頭を撫でてやると、キャロは嬉しそうな、満足気な顔をした。エリーはそんな俺たちを微笑ましく見ている。
◇◆◇◆
「晴成さん、先にお風呂、有難うございました」
ラフィアが風呂上りに声をかける。ミーナ、シンシアからも礼を言われた。
ラフィアに倣ったのか、順番を先に譲ってもらったことへの感謝の文化が有るのかは知らないが、こういう習慣は嬉しい。
ふと、ラフィアの横でモジモジするルナが目に入る。
「あ、あの、お風呂に入れてもらってありがとうございます。服もこんな上等なもの着せていただいて……そ、それで、ダー……違った、晴成様はお貴族様ですか?」
「え、違うよ? 生まれも育ちも平民ですが……ラフィア説明してあげなかったの?」
疑問符の付いた俺はラフィアを見た。彼女は少し嘆息をついて説明してくれた。
「いえ、致しました。ルナには晴成さんが貴族なんかではなく、世界の王となり、世界中の女性をハーレムに加える方だと説明したのですが……予備知識が無いのか、今一つ理解をしてもらえない様子で……」
今度は俺が嘆息が出た。
ラフィア、その考えはまだ捨てて無かったのか。それに、結婚を申し込まれたのを無碍に断る気は無いが、幸せな女を寝取る気はないぞ?
「えぇっとね、ルナ、改めて説明するけど、俺は生まれも育ちも平民です。将来はどうなるかは分からないけど、ね。それで、現在のお嫁さんは正妻がラフィア、二番目がエリー、三番目がキャロの三人がいます。ですが、貴族ではありません」
噛み砕くようにルナに説明をする。
「え? 晴成様はお貴族様では無いんですか? それなのに複数の女性と結婚? あ、でもまだ成年してないから口約束なのかな?」
どうもルナの混乱が深まったようだ。説明間違えたかな……
「成年したらきちんと妻に迎えます。それに俺はこの国の住人では無いので、この国の法律に縛られません。特に結婚はね」
「外国の方だったんですね。それで平民なのに複数の女性と結婚が出来るんですね」
ルナの言う外国と俺の言う外国はかなりの相違は有るだろうが、ようやく俺が平民なのだと納得をしてもらえたようだ。
「だから、ルナも今まで通りの話し方で大丈夫だよ」
「いいんですか? 今までみたいに“ダーリン”って呼んで……」
キョトンとする彼女に、良いよ、と返事を返すと、彼女の顔に花が咲く。
「ほら、ルナ、話はそれだけでは無いでしょう」
ラフィアの言葉にルナが明らかな動揺をする。まごつくルナにラフィアが何やら小言でハッパをかけていた。彼女は観念したのか数度深呼吸すると、此方に強い眼差しを向ける。
「ダーリン、初めて会った時から好きでした。私をお嫁さんにして下さい」
突然の愛の告白に俺は少し戸惑った。でも、嬉しい気持ちが満たされていく。
ラフィアの時はグダグダだが、一応こちらから。エリーはほぼ済し崩し。キャロは理解が怪しい。そう考えると、面と向かっての告白されるは初めてか。そうかぁ、俺、初めて告白されたんだなぁ……
「……や、やっぱり嫌だよね。こんな農家の貧乏娘なんか……」
か細い声が聞こえた。
「あ、いやいやいや、違うんだ。女の子から告白されたのは初めてだから、ちょっとびっくりしただけだよ」
俺が物思いに耽っていると、返事をしないことに失望してルナが落ち込んでいた。思わぬ出来事に俺は動揺しつつフォローをしなければいけなかった。
「あら、女の子の告白ならキャロが先ですよ」
「キャロはよく理解してないでしょうが……」
《そうかなぁ、あれくらいの年なら“結婚”自体は理解していると思うけど?》
えぇ~~?
ラフィアの物言いにツッコミ返したら、アルルが聞き捨てならないことを言う。
キャロは確か六才だろ? 地球なら年長さんか、入学したてだぞ? 女の子はマセているとは聞くけど、なぁ……
「晴成さん、話がそれましたが、ルナへの答えを聞いても良いですか」
「ルナ、遅くなってごめん。四番目で良ければ俺のお嫁さんになってくれる? 後、他のお嫁さんたちはもちろん、ここに住んでいる他の人達とも仲良くして欲しい」
ルナは俺の言葉に嬉しい、と一言漏らすと、ぼろぼろと涙を流した。ついにはへたり込んでわんわんと泣くので、俺とラフィアがあやすのだった。
◇◆◇◆
夕食となり、皆が席に座る。そこで改めて自己紹介となった。
「彼女は今日から一緒に住むことになった冒険者のルナ。先ほど四番目の妻になってもらいました」
俺の紹介でルナが挨拶する。
「今日から御厄介になります、ルナです。Fランク冒険者をしています。それと先ほどダーリンに結婚を申し込みました。その場で、はい、の返事をいただきました、宜しくお願い致します」
彼女は恥ずかしそうに頭を下げた。
「やっぱりこうなったのね。ルナちゃん、覚悟しときなよ、晴成君は口説き上手だからこれからもたくさんお嫁さんが増えるからね、絶対!」
ミーナが呆れた様子で言う。ルナは素直なのか、分かりました、と返事を返す。
その後はラフィア、エリー、キャロが挨拶をする。
「え? エリーさん、キャロちゃんはさすがにダーリンとの子供で無いですよね。そうするとエリーさんは再婚ですか?」
ルナが親子で俺の嫁になっていることに驚いていた。まぁ、普通の反応だよな、ミーナたちも最初は驚いていたし……
「いいえ。少し恥ずかしい話なのだけど、キャロの父親とは結婚前に別れたので、初めての夫は晴成さんですよ」
「「「えぇ~~!!」」」
事情を知っているラフィア以外が驚きの声をあげる。キャロは少し首を傾げていた。
エリーがキャロの出生時の事を話すなんて吹っ切れたのかな?
「パパ? パパは旅に出たってママが言ってた。前はパパが欲しかったけど、でも、キャロ、パパ居なくても大丈夫だよ、お兄ちゃんのお嫁さんだから。前にね、ユリナちゃんが教えてくれたの、結婚したらパパと別々に暮らすんだよって。だからキャロはパパがいなくても大丈夫なの」
淡々と話すキャロ。それ、ちょっとした爆弾発言なんだけどな……
エリーも少し驚いている所を見ると、色々と知らないことが有ったみたいだ。
ところでユリナちゃんて誰だろう? キャロの友達っぽいけど……
「ねぇ、ママ、ママも結婚はじめてなの?」
「そうよ、キャロと一緒。ママの初めての旦那様がお兄ちゃんよ」
無邪気に話すキャロに、あやすように答えるエリー。
「そっかぁ、ママもキャロと一緒だね」
「そうね、一緒ね」
周りを置き去りにして、キャロはエリーと“一緒”であることを喜んでいた。
「話がそれちゃったけど、自己紹介の続きね。もう知っているとは思うけど、シンシアとミーナ」
「改めまして、シンシアです。ギルドの受付チーフをしております」
「ミーナです。ギルドの受付をしてます。後、晴成君たちの専属受付です、ぐらいかな……」
一通りの自己紹介が終わると、ようやく食事となる。ルナが俺たちに釣られて”いただきます”を見よう見まねでする。俺はそのぎこちなさが少し可愛らしく思えた。
ルナは“いただきます”の説明を聞きながら、エリーの料理に舌鼓を打つ。それはもう、とにかくべた褒めだった。
そんな楽しい夕食の中、俺はふと、思い出したことを口にする。
「そうだ、近日中に領主婦人のユーリさん達がウチに住むことになる。みんな、宜しくね」
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