壊れた世界と君の歌

川瀬川獺

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ループ2(R-18)

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 自宅で朝食を済ませのんびりと部屋の掃除をし、昼からは情報収集を兼ねて書店に向かった。最初からそこにあったかの様に街並みに溶け込む折原拓海が描かれた看板。昨日は無かった筈の物だ。やはり彼は見れば見る程美しいがどこか愁いを帯びている。
 まるで自分だけを取り残して一年程間が空いたかの様な錯覚を起こすこの世界は紛れもなく一夜にして書き替えられた物で、折原拓海は少なくとも何かを知っている様子だったのを思い出す。
 書店の自動ドアを潜り抜けて週刊誌のコーナーへ行くとそこはやはりというか案の定というか、折原拓海で溢れていた。巻頭特集、表紙、インタビュー……どの出版社も折原拓海をメインに据えて発行している。それらを手に取りレジに向かう人も多く、数ある中から一冊の雑誌を選んでペラペラと捲ってみるとどれも折原拓海への賛美ばかりで本当に世界が一変してしまった事を改めて理解させられた。
 次世代の神、ね……と見出しの文字をなぞりその雑誌を閉じて棚に戻す。信仰、崇拝、そんな言葉が脳裏を過る。確かに人々の反応はそれに近い。折原拓海という名の宗教じみた物を心から信じて崇めているのだ。
 神の様な扱いを受ける側の気持ちは如何なのだろうか。朝出会った拓海も、テレビや街頭のスピーカーから流れる歌も、幾多の看板に描かれた彼も、全てが愁いを帯びている。この世界は、本当に拓海が望んだのものなのだろうか?
 だが宗教染みていると言うなら自分もそうかもしれない。世界の中心はいつだって拓海で、誰よりも美しい拓海に心酔しているではないか。けれど、自分のこの気持ちとこの世界は結び付かない。相容れない。こんな世界に折原拓海を奪われたくない。
 楽しそうにライブハウスで歌う拓海が好きで好きで堪らなかった。好きだという自覚はまだ無く罪悪感はあったが拓海でヌいた事だって何度もある。
 この世界に満ちた純粋な崇拝と自分のこの薄汚いドロドロとした気持ちは全くの別物だ。他の誰にも見せたくない、閉じ込めてしまいたい、でも彼はスポットライトを浴びている時が一番輝いている。矛盾した心は自分でさえ重すぎる。
 やはり過去に巻き戻して拓海を帰さなければ良かったのかもしれない。あの美しい声で鳴かせて、抱き潰して、朝まで一緒に居れば世界は変わらなかったかもしれないのだ。
 そんな独善的な事ばかりが頭を過る。控え目に言わなくたって最低なのは分かっている。この世界の拓海だって紛れもない彼で、人々に純粋に愛されているし何も間違っていない。でも、この変わり果ててしまった世界だけは許せなかった。



 雑誌を数冊買い書店から出た後は昼は適当に外食で済ませ、コーヒーショップに寄り夕方まで雑誌を読みながら時間を潰した。
 写っている折原拓海は間違いなく彼その人で、美しさだって何一つ変わらない。本人にもう一度会えばこのもやもやとした気持ちは解決出来るのだろうかと腕時計の時間を見ては溜息が零れる。コールドブリューのコーヒーを飲み干して雑誌を掴み、少しだけ早いがあの公園に向かう事にした。
 外は茹だる様な暑さで夕方とは言えまだ真夏で日も長い。ゆったりとした足取りで静かな公園に到着すると少しだけ風向きが変わった気がする。
「……拓海」
 ベンチに横たわっていたのは白いシャツとジーンズ姿の明るい金髪、気が付けば思わず名前を呼んでいた。閉じていた双眸がゆっくりと開かれ、視線が此方に向く。やっと目が合った。
「アンタ、今の俺見てどう思う?」
「出会った時からずっと変わらず美しいよ」
「……あっそ。アンタだけだよ」
「何が?」
「俺をちゃんと知ってる奴」
 腹筋の力だけで上体を起こした拓海はベンチに座り直してふうと息を吐く、警戒されてはいないらしいのが救いだろうか。
「この世界は一体……」
「カミサマを作ろうとして失敗した世界、じゃね」
「何だよそれ……」
「……人がいる、場所移すぞ」
 見えた人影に警戒した拓海が俺の腕を掴んで立ち上がる。すぐに腕を引かれるままに公園から出た。
「行く当てはあるのか?」
「俺の家?」
「そりゃ邪魔は入らないだろうけど……」
 速足で歩きながら腕を引く拓海に付いて行く。入り込んだのはひとつのマンションのエントランスで、鍵を手に持った拓海がロックを解除して中に移動する。そのまま流れる様にエレベータに詰め込まれて彼が八階のボタンを押すと扉は閉まり動き出した。
「好きな奴の家に上がれるってのに浮かねぇ顔してんな」
「実感湧かない、というか……」
「ああ、世界がこんなんじゃそうかもな」
 八階に止まりエレベーターの扉が開く。今だ掴まれたままの手を引かれ一つの部屋の前に到着すると拓海が鍵を開けて扉を開き、中に引きずり込まれて閉まった扉に鍵を掛けた後その扉に押し付けられる。
「拓海……?」
「仕返し」
 拓海の美しい顔が近付き、唇が触れ合う。幾度も角度を変えて、鼻先を擦り合わせながら深く口付ける。時折リップ音が響くが、此処が玄関だとかそんな事は如何でも良かった。
「拓海、これ以上は」
「シたくなるって?」
「そりゃそうだろ……まだ二十代の男なんだし」
 名残惜しそうに唇が離れたかと思えばまた啄む様にキスされるが熱がじわじわと集まるのを感じてそれをすぐに制止した。
「いいよ。俺がちゃんと今存在してるって思わせろ」
「……は?それはどういう」
「つべこべ言わずに抱けっつってんの」
 靴を脱いだ拓海に合わせて俺も靴を脱ぎ捨て手を引かれるままに付いて行くとそこは寝室で、大き目のセミダブル位はありそうなベッドに引き寄せられ、手が離れたかと思えば拓海が迷い無く白いシャツのボタンを外して行く。開けていくシャツからはシルバーのネックレスが覗き、絹の様な肌と薄く割れた腹筋が伺える。ボタンを外し終えるとそれを脱ぎ捨てて此方のTシャツを脱がせに掛かって来たので観念してそのまま脱がされるとそれが床に放られるのを横目で見た。
 ベルトに手を掛けられてカチャリと外され、ボタンを外しファスナーを下げてしまえば後は重力に従ってするりとボトムスが落ちる。それを靴下ごと引き抜いて下着のみになると拓海のジーンズにも手を伸ばした。前を寛げてベッドに押し倒し、下着と靴下ごと脱がせてまた口付ける。
 今度は躊躇無く貪る様に、双眸を伏せて唇を舌で舐って薄く開いたそこに潜り込ませ美しい歯列をなぞり唾液と舌を絡ませてねっとりと拓海を味わう。こんなつもりでは無かったのに、とかそんな事も如何でも良くなる程ハチミツの様に甘かった。
 キスだけでこんなにとろとろに融けて声にならない吐息を漏らす拓海に愛しさが溢れて止まない。触り心地の良い拓海の肌に手を滑らせて撫で上げるとびくりと微かに震えた。
 舌を解いて唇を離すと長い睫毛に縁取られた瞼がゆっくりと開き目が合う。首筋や胸元にキスの雨を降らせ、ピアスが煌く耳朶をそっと食む。耳の輪郭をなぞる様に舌を這わせてふう、と息を吹き込むと拓海から上擦った声が漏れた。
 それだけの事でどろどろとした欲望が満たされて行く気がする。好きだと分かるまでにも今まで何度もこんな拓海を妄想した。今までは全部妄想だった。それが今は如何だ、あんなにも否定したかった世界でこんなにも好きな拓海を抱こうとしている。矛盾もいい所だ。
「はぁ、っ……ローション、引き出しに入ってっから」
「女の子と?」
「詮索すんな」
 言われた通りにすぐ横のチェストの引き出しを開けるとローションのチューブがあった。それをすぐには使わずベッドのシーツの上に転がして兆しを見せている下肢を撫で付ける様にして手を伸ばす。掌で体格相応の陰茎を包み込み緩く扱き始めれば拓海は息を呑んだ。
「気持ちいい?」
「っ、く……いい、から、さっさと」
「君が気持ちよくなってる所をいっぱい見たい」
「……変態」
 頬に口付け、そのまま耳元に囁き掛けると掌で握り込んだ拓海の陰茎がじわじわと膨張する。先端から雫が流れ始め「……ん」と微かに声が漏れ出した。
 手淫を続けながら唇で美しい造形の輪郭を辿り、喉仏に甘く噛み付いてそのまま下に唇を這わすと少しだけ尖ってその存在を主張する乳首に触れる。それをそのまま唇で優しく食み、舐り上げると拓海がシーツを掴み身を捩った。
 現実の拓海は本当にどこもかしこも美しい。そんな身体を好きに出来ると思うだけで興奮が冷めない。何度もリップ音を鳴らして乳首を愛撫し、だいぶ滑りの良くなった陰茎も更にスピードを速めて扱くと拓海が握り締めるシーツは更に皴が寄る。
「ぁ、っ……そこ、もう……」
 すっかりぷくりと赤く膨れた乳首を最後に一舐めし、もう片方にしゃぶり付く。シーツを握っていた手が頭に回され髪を掻き混ぜられる。双眸を伏せて快楽に抗いもういい、と言いたいのだろうがこれではもっとと強請っている様だ。室内の温度は適温に保たれ空調は効いているがしっとりとして来た拓海の肌はすっかり熱を持ちまるで真夏の太陽の様だった。
「イきたい?」
「ん、っ……もう、ちょい」
「俺でヌいた事、ある?俺は君で何度もヌいた」
「ア、っう、何で、そんなことッ」
 くしゃりと髪を乱されると共に拓海の息が上がる。唇を乳首から離して首筋や胸元に何度も何度も口付けを落とし、少し汗ばんだ喉を仰け反らせる彼の陰茎を強く扱いて脈動を掌で感じると舌舐めずりをして拓海の顔を見た。目を閉じ眉尻を下げて快楽に耐えている。
「教えて、じゃないとイかせない」
「ッッ……最、悪…………ある、よ、悪いかよ……あんな熱い視線で見られたらっ、興奮すんだろ……」
 米神にキスした後耳元にそう吹き込むとフイと顔を横に逸らされ渋々と言った様子でそう告げられる。良く出来ましたと言わんばかりに手淫を速めると上擦った熱い吐息が零れ出た。
「あッ、も、ヤバ……っ」
「イって、拓海」
「――ッ!イく……っ!」
 亀頭を掌で握るとドクドクとそこに拓海の精液が吐き出される。達した反動で仰け反り荒く呼吸する彼を此方に向かせ口付けた。
「っ、馬鹿じゃねぇの」
「何が?」
「さっさと犯して、俺の気を済ませればいいだけなのに」
「それじゃ愛が無いよ、俺は君が好きだし愛し合いたい」
「やっぱ、馬鹿だろ」
 掌をサイドチェストの上にあったティッシュで拭いすぐ傍の屑籠に放り、代わりに転がしていたローションのチューブを取る。それをたっぷりと手に絞り出し何度か握って少し温めてから拓海の脚を広げさせ、恐る恐る後孔にそれを塗り付ける。まだ冷たかったのかびくりと腰が僅かに跳ねる。
 拓海に夢中になってから男同士のヤり方は冗談半分の気持ちで何度か調べた事があった。好きだという自覚も無かったしそんな関係になる筈も無いと思いながら空しくその知識だけを頭に入れていたが本当に実行する事になるとは思いもよらない話だ。
「力、抜ける?」
「……ああ」
 まだ固く閉ざされているその窄まりに確りとローションを塗り込み、ゆっくりと中指を侵入させてみるが異物に対する抵抗の動きはあれど挿入自体は難しくは無かった。
「大丈夫?」
「余裕、だっつーの……」
「動かすね」
 明らかに強がっている様子に少々心配が滲むが今辞めてしまったら拓海は納得しないだろう。ならばもうなる様になれと指で後孔を弄る。何処かに強い快楽を得られる前立腺が存在する筈という知識だけはあるがそれがどんなものかまでは分からない。
「っア!?なんだ、これっ」
 だが丹念に解す様に指を抽挿していると腹側に少し感触が異なる部分を見付ける。其処を引っ掻く様に指先を動かせばゾクリと拓海の腰が震え彼は明らかに混乱していた。
「君の気持ちいい所、見つけた」
「は、ッ……ン……ぅ」
 手の甲で口を押えて声を殺す拓海の手を退かせ親指でその唇をなぞる。その間にも前立腺への刺激を続けていると次第に後孔も解れ始め、抵抗する動きが逆にしゃぶり付く様な物に変わって行った。それを良い事に人差し指も後孔へ沈め、ナカを広げていく。
「ンっ、ア、おれ……おかしッ」
「おかしくないよ、気持ち良いだけだから」
 宥めながら三本目の薬指を挿入する。前立腺を責めながら徐々に広げていき、そろそろ充分だろうかと引き抜くとヒクヒクと収縮する後孔にゴクリと唾を飲み込む。
「本当に、良いの?後悔は無い?」
「ふ、っう……アンタ、なら、ッいいよ」
「勇也」
「は?」
「アンタじゃなく勇也って呼んで」
「……勇也、っあ!でか、い……!」
 下着を寛げて取り出した剛直は既に反りかえって臨戦態勢だった。余ったローションをそれに塗り付けてずぶりと拓海の後孔に埋め込んでいく。少しきついが慣らしたお陰か抵抗はそれ程無かった。挿れた瞬間頭がスパークしそうな程に熱く蕩けそうな程気持ちよく、思わず搾り取られそうになる。
「ァ、っ……!ン……!アッ、あ」
 頬に何度もキスを落として浅く抜き差しし前立腺を何度も抉るとビクビクとまるで俎板の上の生きた魚の様に腰を戦慄かせる拓海は感じ入っているのだろう。荒い吐息と嬌声が上がる。額から零れ落ちる汗さえも美しくて舐め取ったらそれは流石に「やめろ」と怒られた。
 まるで思春期の様だと思いつつも抑えきれない要望のままに抽挿を開始し誰も暴いたことの無いだろう奥まで一気に押し込む。苦しいのか気持ち良いのか分からない様子の拓海は困惑していて、それでも徐々に漏れ出る嬌声は確かに気持ちが良いと示している。
 徐々に激しく律動し皮膚がぶつかり合う音と粘着質な水音が部屋中に響き、熱くて堪らなくなりじんわりと汗ばむのを感じた。貪り付く様に唇を重ねて口付け腰を打ち付けるとどちらのものかもう分からない熱い吐息が漏れる。
「ゆう、や……っあ、ア、ん」
「……拓海」
 縋る物を求めて背中に腕が回される。その腕も割れた腹筋同様にやっぱり男のしっかりとしたそれで、でもそれが拓海だと思うとより興奮させた。彼は絶頂が近いのか身を捩って背を弓形にしならせ、呼吸も早くなりとても荒い。
 絶えず律動を繰り返しながらちゅ、ちゅとリップ音を響かせ首筋や胸元に何度も何度も唇を落とし拓海の起ち上がっている陰茎を握って扱く。最初からナカでイける人間など稀と聞く、ならばこうするのが双方気持ち良い筈だ。
「ふ、ぁ、っア……!」
「どう?気持ち、良い?」
「ん、っ……ああ」
 先走りで濡れているお陰で先程よりもスムーズに手を動かせた。気持ち良さそうに目を細めて見悶える拓海がとても美しくて見惚れる。
 程無くして互いに絶頂が近付くと、より激しく結合部からぐちゃぐちゃと淫靡な音が響き拓海の嬌声がより色濃くなっていく。
「ぁっ!あ、もうっ!ヤバ、ぃ、ッ!イっ、く――!」
「……たく、みッ」
 絶頂はほぼ同時だった。拓海の腹筋にどろどろと彼の精液が滴り落ち、イく寸前に抜いた自分の精液もそこに混ざって吐き出された。
 ぽた、と汗が拓海の胸元に落ち、肌を滑ってシーツに吸い込まれていく。手櫛で邪魔な前髪を掻き上げると呼吸を整えながら拓海がじっと見詰めて来る。
「どうかした?」
「はぁ……イケメンじゃん、アンタ」
「……俺が?」
「無自覚かよ……」
 拓海の腹部を数枚取ったティッシュで拭いそれをまた屑籠へと放る。言われ慣れない言葉に苦虫を噛み潰した様な表情が浮かんでいるのが自分でも何となく分かった。
 ベッドに横になり、掛布団をかけて拓海を抱き締める。整髪剤で整えられた明るい金髪はとても良い香りがした。
「俺に聞きたい事、あるんじゃねぇの」
「これは君が望んだ世界?」
「……違う」
 こんなもの望んでない、言わなくてもそう聞こえて来る様な表情だった。では何故こんな事になってしまったのか。すっきりとして来た頭で考えを巡らせる。
「俺は神様なんて興味ねぇしただの一人の人間だって、思いたいんだよ……」
 彼は確かに生きた人間で、触れた体温は暖かくて、俺の知る限りの神なんかじゃない。でもそれを一番実感したいのは恐らく拓海自身なのだろう。
「やり直せるなら、やり直してぇって……そんな事願うのおかしいか?」
「……君はやり直したいと本当に思う?」
「出来るならもうしてるだろうけどな……」
 俺なら出来るかもしれない、とは今は言えなかった。疲れたのかうとうととし始める拓海を強く抱き締めてやる事しか出来なかった。
 拓海はこんな世界を望んでいない、それが分かっただけでも良い。辛い思いは俺だけが背負えば良い。
 静かに眠りについた拓海を起こさない様にベッドからそっと抜け出しシャワーを借りてから服を着る。手首にはあの腕時計を巻いて静かに靴を履き玄関を出て行く。行く先はもう決まっていた。過去に戻って――昨日の午後八時から全てをやり直す。
 真相は未だに分からないし、そう簡単に世界を変えられるなんて思っても居ない。何回だって、何十回だって拓海が悲しまない世界になるまで続けてやる。そう覚悟を決めてあのライブハウスの裏出口に向かった。



 腕時計のつまみを操作し昨日の午後八時にセットし、カチリと押し込んだ瞬間空は闇に包まれ目の前に昨日の拓海が現れる。初めてのキスをしたあの瞬間、その時間に全てが巻き戻っていた。
「君をこのまま帰したら、きっと俺も君も後悔する。だから」
「えっ?」
 腕を掴んで引き寄せ強く強く抱き締める。咄嗟の事に反応出来なかった拓海が困惑の表情を浮かべているだろう事は見えなくても分かる。
「何なんだよ、アンタ……」
「このまま二人で逃げよう、世界から」
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