78 / 105
-78℃ 土産物ベリータルト
しおりを挟む
(ふざけるな)
時速100キロでフルフェイスのヘルメットに頭を包んでの移動中に多くの情報を入手し処理することは不可能だ。それでも最低限の情報は自動処理してイヤフォンから音声通知として送られてくるよう設定してあった。
認めよう。最低限だ。それ以上の事は高速を降りてバイクを一度止めるまで不明だったのは確かだ。しかし「死神」が指示に逆らって乗り物まで入手し情報屋の付近まで接近してきた場合のアラートなど想定できるものか。
……落ち着け。現状を分析しろ。
まず情報屋からの連絡は途絶えた。接続が拒否されてリダイヤルできないということは死神との接触は不可避だったか。今後どう動くかは不明だが今僕に介入できる事はない。
(ならば目の前の事に注力すべきか)
探偵からの一通のメールに。
『悪いな、今力になれなくて。俺は目下捕らわれの身だ。お前さんは来ない方がいい。実は俺って大量猟奇殺人鬼なんだぜ? ふざけた話だよなあ。スターラーに、俺に殺されたくなかったら来るなよ』
(ふざけているのはお前だ。探偵)
僕がそんな文言で怖気づくとでも思ったか? まるで自分がスターラーであるかのようにミスリードして僕が騙されるとでも思ったか。探偵がスターラーだったのならその事実に衝撃を受けて僕が歩みを止めるとでも思ったか。
ふざけるな。
今の探偵の状況は不明だ。詳細が不透明な以上これを送ったのが探偵とも断ずる事はできない。一時的に探偵の意識に戻っていたとしていつまで続く?
そもそも捕らわれとは何だ。ただ読めばスターラーに物理的に捕らえられていると読める。しかし悠長にこのようなメールを送る隙はあるらしい。スターラーが一度も殺害対象を監禁していた事例が無い事からもピースが合わない。そもそも探偵に通信環境をみすみす与えるなど愚の骨頂だ。
となれば無知の第三者が絡むのか。あるいは精神的な「捕らわれの身」か――
「……探偵はつくづく愚かだ」
文章を精査する暇は無かったのだろう。だからこのような本音の漏れた文が出来る。
そもそもスターラーと会う「約束」のある僕が引き返す可能性など考慮に値しないがもし約束など無かったとしよう。
探偵が捕らわれたと聞いて慎重になり一度引き返す事はあるだろう。しかし万が一にも――探偵を救いに駆けつける気を無くす僕などいるものか。
それとも僕が来ると確信してわざとこう書いたのか? もしそうならとんだ悪女がいたものだ。なあ探偵。
時速100キロでフルフェイスのヘルメットに頭を包んでの移動中に多くの情報を入手し処理することは不可能だ。それでも最低限の情報は自動処理してイヤフォンから音声通知として送られてくるよう設定してあった。
認めよう。最低限だ。それ以上の事は高速を降りてバイクを一度止めるまで不明だったのは確かだ。しかし「死神」が指示に逆らって乗り物まで入手し情報屋の付近まで接近してきた場合のアラートなど想定できるものか。
……落ち着け。現状を分析しろ。
まず情報屋からの連絡は途絶えた。接続が拒否されてリダイヤルできないということは死神との接触は不可避だったか。今後どう動くかは不明だが今僕に介入できる事はない。
(ならば目の前の事に注力すべきか)
探偵からの一通のメールに。
『悪いな、今力になれなくて。俺は目下捕らわれの身だ。お前さんは来ない方がいい。実は俺って大量猟奇殺人鬼なんだぜ? ふざけた話だよなあ。スターラーに、俺に殺されたくなかったら来るなよ』
(ふざけているのはお前だ。探偵)
僕がそんな文言で怖気づくとでも思ったか? まるで自分がスターラーであるかのようにミスリードして僕が騙されるとでも思ったか。探偵がスターラーだったのならその事実に衝撃を受けて僕が歩みを止めるとでも思ったか。
ふざけるな。
今の探偵の状況は不明だ。詳細が不透明な以上これを送ったのが探偵とも断ずる事はできない。一時的に探偵の意識に戻っていたとしていつまで続く?
そもそも捕らわれとは何だ。ただ読めばスターラーに物理的に捕らえられていると読める。しかし悠長にこのようなメールを送る隙はあるらしい。スターラーが一度も殺害対象を監禁していた事例が無い事からもピースが合わない。そもそも探偵に通信環境をみすみす与えるなど愚の骨頂だ。
となれば無知の第三者が絡むのか。あるいは精神的な「捕らわれの身」か――
「……探偵はつくづく愚かだ」
文章を精査する暇は無かったのだろう。だからこのような本音の漏れた文が出来る。
そもそもスターラーと会う「約束」のある僕が引き返す可能性など考慮に値しないがもし約束など無かったとしよう。
探偵が捕らわれたと聞いて慎重になり一度引き返す事はあるだろう。しかし万が一にも――探偵を救いに駆けつける気を無くす僕などいるものか。
それとも僕が来ると確信してわざとこう書いたのか? もしそうならとんだ悪女がいたものだ。なあ探偵。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる