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山の端さっど

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-64℃ プディングカラメル糸

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『何が起きた?』
『何が何やらです』

 もし情報屋に理性を十全に働かせる余裕があったならばこの無意味な返答はしなかっただろう。無事に片が付けば盛大に虚仮を笑ってやろうというものだ。
 情報屋の報告から確認しよう。まず僕が監視カメラのリアルタイム映像にアクセスする直前に事は始まっていた。探偵の連れていた少女が何らかの理由で昏倒したのだ。僕がアクセスした時点で異常はないように見えたのだから意外にも店内は冷静だったらしい。そんなものか。人が倒れた程度で人間は他者に興味を示さない。探偵という連れが居たのだから対処する必要性も感じなかっただろう。
 情報屋の見る限りでは探偵は少女の容体を心配する様子を見せ続けていた。救急へ電話もしていた。

 そして探偵は救急が来る前に少女を抱えてカフェから走り去った。
 現在情報屋が追跡中だ。

『今思えばですが、おかしかったんですよ。普通店内で連れが倒れればまず最初に頼るべきは店員だったでしょうに、電話以外は何もしなかったんです』
『全くもって有意義なご意見だ。起きた瞬間に僕へ報告を上げていれば数分前に気づけただろう』
『……申し上げたいことは色々ありますけど、ワタクシ金が惜しいのでやめておきます』
『僕からは情報がある』
『はい?』
『伝え損ねていたが「妹」の正体に見当がついた』

 数秒の沈黙。

『なんでそんな重要な事を黙ってたんですか?!』
『……探偵は警察時代に一度PTSDを発症して入院している』
『それはワタクシも把握済みです。捜査中に事件に巻き込まれ、一時的な精神錯乱状態に陥ったと聞いていましたが』

『「あなたがお兄ちゃん?」』

『はい?』
『当時先輩にあたる刑事が見舞いに来た際に探偵が女児のごときあどけない声でそう言ったそうだ。探偵が』
『あの、って……女性に対して失礼ですよ。前から思ってましたけど』

 下らないな。僕は探偵のことを女性と認識したことは無い。

『まあ、ワタクシはお金が惜しいので何も異論を唱えませんよ、もちろん。つまり探偵さんは二重人格だと仰りたいんですね?』
『そして探偵の「妹」であるもう一つの人格が「うずまき文字」で恐らくは「スターラー」……戯言のような話だ』

 実に滑稽で荒唐無稽だ。

『……探偵さん自身は、ご自身の二重人格の言動をどこまで知っているのでしょうね……』

 僕の今一番の希求をわざわざ文章に起こしてくれて有難い限りだね。頼りになるよ情報屋。
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