暖をとる。

山の端さっど

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-35℃ いくらかの明暗

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「最近元気無くね?」
「えー、分かる? テストの結果悪くてめっちゃ母さんに怒られちゃったんだよなー」
「マジかよ! 俺もだけど」
「お前は全教科だろ」
「全教科じゃねーよ」
「じゃトイレお先ー」

 気分のアップダウンを悟られてしまうようでは人気者はやっていけない、こともない。要はレスポンスの速さと雰囲気だ。「クライ」は気安い友人カテゴリに暫定で入っているクラスメイトグループを軽くいなして輪から離れた。

「あいつ、連れション断りやがった」
「行きてーなら勝手に行けよ」
「さっき行ったばっかだろ」
「あれ? この間っていったら数学の抜き打ちだけど、クライって数学得意だったよな。別にあの時余裕そうだったし」
「何か他にテストあったっけ?」
「昔のテスト見つかったんじゃねえの?」
「ガキかよ」
「お前には言われたくねえよ全教科赤点」
「地理は70だよ!」

 学友たちは首をすくめたり笑い合っていつの間にか違和感を無かったことにしていく。クライは遠巻きに表情を確認し、問題ないと判断して背を向けた。
 人気のない階段の踊り場でしゃがみ込み、泣きぼくろのあたりに指を置いて寝不足の目を少し閉じる。

(眠……)

 数日前、血まみれの車に殺人鬼と、同じく殺人鬼の女と、「荷物」と共に乗り、「荷物」を山の中の穴に埋めて帰ってきた。それから、昼も夜もろくに眠れていない。元気も無くなるわけだった。



 ところでその時、彼らの間ではクライの話が再び始まっていた。

「ってかあれだ、今思い出した。クライさ、昨日? 一昨日? とにかくこの間、スマホで女の写真見てたんだよ」
「おいおいおいマジかよ」
「マジもマジ。しかもあれ大学生かその上くらいだった」
「まさか、クライのやつ」
「合コンも絶対来ないし女子に興味無いと思ってたら……年上が好みなのか?!」
「おい大声出すなよ!」

 クライが見ていたのは、「仕事」終わり、罪悪感からくるアドレナリン過多か何かでハイになったテンションのまま「バラン」から貰った加工写真だった。クラスメイトに見られかねない場所で何となく写真フォルダを開いた時には無意識の行動に自分で驚き、反省もしていた。
 しかし、その行為が普段のクライと比べてどれだけおかしいか、クライ自身も気づいていない。

 一年前からずっと焦がれ、盗撮をするほど思いつめていたはずの女の事を、この数日、彼は思い出しもしていなかった。
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