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-34℃ 悪魔の七本指
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公園は、学校の裏手にあるとは思えない荒れようだった。刑事が入り口に着くと、先に着いていた少年はトンと土の地面を蹴る。
「僕の後ろだけを歩いて。この公園には落とし穴が掘ってあるから」
「落とし穴ぁ?」
「たかが小学生の罠と思わない方が良いよ。10歳上くらいまでのOBが本気で制作協力してるんだ」
「おいおい……」
まずい所に来てしまったらしい。
「そこは通っちゃダメ。そこはジャンプして。そこに真っ直ぐ歩いて」
「……おわっ!」
派手な音を立てて刑事は穴の中に落ちた。
「な、な……」
たかが数メートルとはいえ、下にクッションが敷き詰められていなければ危なかっただろう。
「おい、ここは安全だって――」
「ここが入り口。落ちても安全な事が多いけど『犯人』が子供たちをここに連れ去っているならどんな罠が仕掛けられていてもおかしく無いでしょ。僕のこと手伝ってくれるって約束したんだからこの程度のリスクは負ってよ」
厳密にはそんな約束はしていない気がしたが刑事には言い返す余裕もない。
「それでどう?」
「ああ……何てこった」
地下数メートルの空間には薄暗いランプが吊るされており、倒れて眠るたくさんの子供達を映し出していた。
「眠らされていただけらしい。多少のすり傷くらいしか無かった」
「それは良かったね」
「いや、一つ分からん事がある。全員、校内で急に口に何かを当てられて眠らされたと言ってる。だが、そいつぁ……」
「いくら昼休みでもクラス全員が学校外の公園まで運ばれたのに気づかないわけがない?」
刑事の鋭い視線に応じる事なく、生意気な少年は首をすくめた。
「そりゃそうでしょ。校内にある隠し通路から移動したんだから」
「は……校内の隠し通路?!」
「言わないよ。いくら僕でもそっちの道を教えちゃうと怖いOBの人たちに制裁されちゃうから。そんな通路は無かったことにしてうまく報告書にまとめてよ」
「お前っ」
「それじゃあまたね。刑事さん」
少年は刑事の手に連絡先らしきものを手書きしたメモを押し付けた。
「待てまだ話……! この文字、は……」
刑事が渦を巻く独特な字体に気を取られているうちに、少年はまたも視界の外へするりと消えてしまった。
「僕の後ろだけを歩いて。この公園には落とし穴が掘ってあるから」
「落とし穴ぁ?」
「たかが小学生の罠と思わない方が良いよ。10歳上くらいまでのOBが本気で制作協力してるんだ」
「おいおい……」
まずい所に来てしまったらしい。
「そこは通っちゃダメ。そこはジャンプして。そこに真っ直ぐ歩いて」
「……おわっ!」
派手な音を立てて刑事は穴の中に落ちた。
「な、な……」
たかが数メートルとはいえ、下にクッションが敷き詰められていなければ危なかっただろう。
「おい、ここは安全だって――」
「ここが入り口。落ちても安全な事が多いけど『犯人』が子供たちをここに連れ去っているならどんな罠が仕掛けられていてもおかしく無いでしょ。僕のこと手伝ってくれるって約束したんだからこの程度のリスクは負ってよ」
厳密にはそんな約束はしていない気がしたが刑事には言い返す余裕もない。
「それでどう?」
「ああ……何てこった」
地下数メートルの空間には薄暗いランプが吊るされており、倒れて眠るたくさんの子供達を映し出していた。
「眠らされていただけらしい。多少のすり傷くらいしか無かった」
「それは良かったね」
「いや、一つ分からん事がある。全員、校内で急に口に何かを当てられて眠らされたと言ってる。だが、そいつぁ……」
「いくら昼休みでもクラス全員が学校外の公園まで運ばれたのに気づかないわけがない?」
刑事の鋭い視線に応じる事なく、生意気な少年は首をすくめた。
「そりゃそうでしょ。校内にある隠し通路から移動したんだから」
「は……校内の隠し通路?!」
「言わないよ。いくら僕でもそっちの道を教えちゃうと怖いOBの人たちに制裁されちゃうから。そんな通路は無かったことにしてうまく報告書にまとめてよ」
「お前っ」
「それじゃあまたね。刑事さん」
少年は刑事の手に連絡先らしきものを手書きしたメモを押し付けた。
「待てまだ話……! この文字、は……」
刑事が渦を巻く独特な字体に気を取られているうちに、少年はまたも視界の外へするりと消えてしまった。
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