MAGIC JOKER

卯月春吉

文字の大きさ
上 下
42 / 42
~裁判篇~

041:生死

しおりを挟む
   倒れたアトラを乗せた大きなカエルは病院の方へと川を使って運搬している。
   カエルは救急用動物として使われており、陸の場合はチーガーというチータとジャガーの交配した魔法界の動物が運搬係として使われている。
  

  
 「アトラに何があった? 」
 


   カエルが泳ぎながら話かけた。



 「金髪の緑色のアッシュの色をしたツインテールの少女にやられた
    アイツを生き返らせるにはあの爺さんの能力が必要だ、何とかして病院へ連れて行かせなきゃな・・・」
  「アトラの爺さんはオーラルド魔術治療院という所にいる!
   オイラの首根っこを持て、アトラの死体を離したりなんかするなよ?
    さっさと行くぞー!!」



   カエルは5人を乗せて万能なキック力で全速力で川を渡った。


 
   アトラは目を覚ました。そこは花が沢山咲き誇った美しい世界、まるで魔法界のようだがそこは死の世界だと知らない。
   人も居ない不思議な世界で大声を叫んだ。



  「ルアナぁ~!イルヴィンソン!ハリガネさあああああああん!!
  ────ここは・・・どこなんだよ・・・」



   そこに女性がアトラの方へと近づいてきた。
   まだここが死の世界だと知らない少年に教えるために────
   女性は声をかけた。



   「アトラ」
   「誰?」
   「私は貴方のお母さん」
   「お母さん?」


    アトラをぎゅっと抱きしめ、その思いを言葉にした。



   「会いたかったわ、アトラ
     お母さんはやっと成長した貴方にいつかは会いたいって思ってたけど、まさか12歳で命を落とすような事になるとは知らなかったわ」
  「俺も・・・」
  


   同じ赤い色にくせっ毛でふんわりとした背中の半分まで伸びた髪、そして笑った笑顔が自分と似ていて“これは俺のお母さんなのか?”と疑問だった。

    緊張する自分の息子を見て、この場所の事を母は教えた。



  「ここは死の世界
    私達の姿は歳を取らずにここで生きている、笑って遊んでストレスとも関係なくね
   この世界は病気なんてないから気候なんて関係が無くていつもお日様が出ているから幸せよ~♪」


   自由奔放に母は坂になっている草原に寝っ転がった。
   そんな姿を見ながらいいとは思えない、そんな複雑な気持ちでその隣に体育座りをした。
    
    

   その頃、オーラルド魔術治療院に到着したハリガネ一行はカエルから降りた。
    現実世界ではタンカーで運ぶのだが、魔法界は布を重症の体を妖精が持っていく事になっている。

    可愛い妖精なのかと思いきや、4人のガッツリした体型の筋肉隆々な男の妖精が持っていく。


    「せーの」
   「おいっしょ・・・(4人)」



   アトラを病室へと思っていき、妖精達は退散していく。
   『アトラが運ばれた』と聞き、祖父は走ってその場所へとやって来ると顔が白くなっている息子を発見した。



  「アトラ!!」



   祖父は空いた口が塞がらず、現実なのかどうなのかすらも分からない感じで孫の遺体と対面した。
   ルアナが死んだ理由を明かし、絶望の淵に立たされたような気持ちになり、アトラの右手を包んで泣いた。



   「アトラ・・・まさかあんな少女に殺されるとは思わなかっただろう・・・
    儂はお前を亡くした後、娘にどう伝えればいいんだ・・・」



   泣きながら息子を抱きしめた。また赤ん坊だった頃のようにまた死んでしまうのかとショックを受けながら悔しさが止まらない。

   ハリガネは聞き込みをしつつ、志願した。




  「名前・・・貴方の名前をお伺いしてもいいでしょうか?」
  「マルドー・オルキスだ」
  「マルドーさん、生き返らせればアトラ君はきっと戻って来ます、今は貴方の力が必要なのです
     アトラ君もきっと貴方と同じです」
  「そうだろう・・・な・・・」



   一方、死の世界で車も通っていない道路を2人で歩く事になった。
   鼻歌をしながらスキップをし、楽しそうにしているのを見ながらアトラは幸せそうだと母親を見ていた。



  「ねぇアトラ、アンタここで私と一緒に過ごさない?」
  「どうしてそんな事・・・」
  「どうしてって、お母さんはアンタと一緒に過ごすのが長年の夢なんだよ?
    アンタが居なきゃ、楽しめないし・・・」
  「お母さんには友達がいるじゃないか?」
  「居たって、周りには子供がいるし寂しい~よ~」
   


    母の寂しい気持ちが分かるが、死の世界にいる訳にもいかないし、いつまでもここで浸りたくない。
    祖父と仲間達が待つ生の世界へ戻りたいのが思いだが、母の悲しい顔を見てしまうとやはり離れたくはないと感じた。


 「分かった、一緒にいよう」
 「やったぁ~♪フフフ~ン♪」



    母は友達の所へと急いで坂へ降りて楽しそうに友達と話している。
    “もう逃げられる事は出来ないんだな“とアトラは心の中で 思った。




    「まず手術をする前に傷を治さなきゃいかん、ミクルド頼む」
  「分かりました」



   ミクルド・ステヴァン33歳。
   外科医として魔法で手術をする、帽子の中は金髪の玉ねぎのような尖った髪型で瞳はアクアマリンの色をした瞳の男だ。

    空いた胸を元に戻すには逆回転をしながら時間をかけて繋ぎ止めるのが、ミクルド流。
   その技で何10人のも人間を助けて来たが、胸から背中まで空いたものを見たのは初めて。
    時間をかけながら魔力で再生する。
   
   ルアナとイルヴィンソンはその出口で待ち合わせをする事になった。


  「アトラ・・・大丈夫かな・・・」
  「何心配しているのよ」
  「アトラを復活するって言ったっていつになるのか不安だよ・・・」
  「アイツはアンタと違って自信がある、それに帰って来て欲しいのがあたし達の思いでしょ?」
  「そうだよね・・・」



   2時間かけてようやく元に戻ったアトラの胸元。
   後は生き返らせるしかないと祖父は肘まで腕まくりをし、気合い充分のようだった。



  「アトラ、帰ってきてくれ」



    12年ぶりにアトラをもう一度、生の世界へと連れて行く事を決めた。
    “いつかは学校へ行かせるため”祖父の思いがアトラに届くようにと死の世界にいる孫に届いた。



   「おじいちゃんだ・・・」
   「おじいちゃん?」
   「俺の事を探しに来てくれたんだ!」
   「・・・・・・・・・・・・・・・」



   母は複雑な気持ちになり、アトラを離さないと思い、握った。
   それは世界から消えたくないという寂しさなのであろうか、ずっと握り締める母から離すようにその手を優しく触れた。



   「お母さん、ありがとう
     短い時間だったけどさ、もう行かなきゃいけないんだ
   俺にはおじいちゃんもいるし、友達ももう一人の家族もいるんだ!
    俺、こんなに支えてくれる仲間が沢山出来たんだよ?」
  「アトラ・・・」
   「お母さん・・・ありがとう・・・」
   「待って!!行かないでぇぇぇっ!!アトラっ・・・!!」



   母はずっと一緒にいると思っていたが、自分が思う程上手くいかないと現実を知った。
   帰って来るのは遅いかもしれないが、“死の世界で楽しく過ごそう”と決意した。



   「おじい・・・ちゃん・・・」



   目を覚まし、祖父はじっと見つめる孫に右手を両手で包み込むように握った。



   「アトラ・・・」
   「俺・・・」
   「アトラああああああっ!!
    おかえりっ!おかえりっ!」
   「苦しいよ・・・」



    嬉しさの余り、祖父に抱きしめられたアトラはそんな愛に恵まれたのだった。






                                           ────続
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...