74 / 90
オカン公爵令嬢は潜入する。
22話 謎解きの時間(3)
しおりを挟む
「…………うん……まぁ良いよ。で……作られた世界ってなに?さっきからやたら強調してるけど?」
何が良いのか分からないけど良いにしよう。深く考えてはいけない。俺の愛する人である麗が大事にされているから良いじゃないか!こう考えないと、泣きそうだ……。
そんな俺の決意を見抜いているかの様に、オヤジは再びメガネをクイッとあげた。
「咲夜だってこの国には違和感ばかりだろう?日本の風景と物語の中の風景がミックスされたような……チープな空間。そう思ってないかい?」
「思ってるよ。でもオカンが仕様って言ってたから気にしない様にしてた。でもそれは麗を誤魔化すためって言ってたね」
「そうよ、私達だって元は『アイタソ』ってゲームの世界だけど、そのままじゃないわ。ゲームのイラストのままの姿ではないし現実に乗っ取った形になってるし、ちゃんと現実よ。でもこの世界は違う。全体的に物語の様……そもそも男だけでどうやって国が栄えるのよ!」
「え……でも俺の記憶でも、この国は男だけってなってるよ?」
「本当に?ちゃんと思い出しなさい!あんたの記憶は改竄されてるのよ!それを前提に思い出しなさい‼︎」
「……改竄⁉︎」
物騒な言葉が出た!と驚きながらも記憶をたどる……。オカンの言葉には逆らえない――そして――。
「あ――」
「思い出したみたいね?」
オカンの言葉にうんうんと頷く。そうだった!忘れてた!と思えてしまうなんて、記憶の改竄させられていた事実が怖い……まったく違和感なく受け入れていた。
「あんたみたいにこの国の人はみんな記憶を改竄させられて、『ムーンバタフライ』の配役にさせられてるの。私達は別ルートを使ってこの国に入ったから影響はないけど、あんたはバッチリ記憶を弄られて配役のひとりにされていたの……。だからこあんたにゲームの攻略をさせていたの」
「ようはこの国に異変が起きてて、その異変を解決するためには、俺がゲームの攻略する必要があると思ったんだね?」
「そうよ……でももうダメね。麗ちゃんがあの様子だと、これ以上は厳しいわ。男同士でかつゲームの世界の攻略と言ってれば、麗ちゃんの嫉妬も抑えられると思ったのに。結果ダメだったわね」
「初めは大丈夫だったけれど、段々嫉妬が抑えられなくなったね。さすが愛の神の加護を受けるもの……あの嫉妬の力は恐ろしいね」
ふたりの深いため息を見ていると本当に大変だったらしい。俺だって麗をもう泣かせたくない。麗以外を口説くなんて嫌だ。
「じゃあ、どうするの?このままゲームを攻略するのは諦めて、他の方法を使うの?」
「無理よ……調べたけどちっともこの国にかかってる魔法が分からないもの。だから仕方ないけど、ムーンバタフライをクリアするしかないわ」
「ああ、あとひとりだよね?確か……」
「あんたはだめよ。これ以上はさせられないわ、また麗ちゃんに暴走されては堪らないもの。続きは雅也さんがやるわ」
意外な言葉に目を瞬きオヤジを見ると、なぜかパサっと髪を翻した。すると見る間に髪が金色に変わり、さらに紅い瞳も青くなる。そして……立ち上がった姿は妖艶な姿から一変して、見るからに美青年に変わる。すっと立った姿は海外の映画の主役級のかっこよさだ。
「髪も――短くなるんだ?」
「容易いことだよ。言っただろう?この世界は作られた世界だ。僕がこの世界の王子役をすると受け入れれば姿は変わる。明日からは僕が攻略するよ、だから咲夜はここで保険医でもしていたまえ」
「それが……仕様?」
オヤジは驚く俺の言葉に頷き、オカンに流し目を送りるとともに、そっと微笑みを口に灯す。
「それで良いんだよね?燈子さん」
随分と色気を込めたオヤジの姿だったが、オカンはまったく気にせずに、普通に腕を組んだまま、納得する様にコクリと首を落とした。
「そうね。雅也さんがやった方が効率は良いでしょう。それにこの世界を作った人間の思惑からも外れるからちょうど良いわ」
「……そうだね、効率良く攻略するよ。僕には勝利の神をついているしね」
オカンはそれには応えずに、勢いよくベッドから降りた。そして俺に向かってニヤっと笑う。
「どう?今までの流れが分かった?」
「あ……うん。だから、俺に試練を与えたい試練の神が、俺を誘拐しようとした人間を手伝って、俺は拐われた。そして拐われた先であるこのルーナ国は、何者かによって前世のゲームの世界、『月に集う蝶の宴』、通称『ムーンバタフライ』の世界観にされていて、国民全てがその配役を担ってる、で大丈夫?」
「そうよ、だからその犯人を捕まえて、この閉ざされた世界を元に戻すのよ?良いわね」
なんだか随分と大事になっている……とは思うけれど、この世界は現実だ。他国のことではあるけれど、できるならこの歪な世界から救ってあげたい。今の俺にはそれができるだけの力があるのだから!
「さて、そろそろ麗ちゃんが起きそうだ。燈子さんは先に帰ってくれる?咲夜とふたりで話があるんだ」
「……分かったわ。私たちは寮に戻るわね」
その一言を残し、オカンは転移していった。
残ったのは俺をオヤジ……。
「話ってなに?」
俺の質問にオヤジの目がキラリと光った。
何が良いのか分からないけど良いにしよう。深く考えてはいけない。俺の愛する人である麗が大事にされているから良いじゃないか!こう考えないと、泣きそうだ……。
そんな俺の決意を見抜いているかの様に、オヤジは再びメガネをクイッとあげた。
「咲夜だってこの国には違和感ばかりだろう?日本の風景と物語の中の風景がミックスされたような……チープな空間。そう思ってないかい?」
「思ってるよ。でもオカンが仕様って言ってたから気にしない様にしてた。でもそれは麗を誤魔化すためって言ってたね」
「そうよ、私達だって元は『アイタソ』ってゲームの世界だけど、そのままじゃないわ。ゲームのイラストのままの姿ではないし現実に乗っ取った形になってるし、ちゃんと現実よ。でもこの世界は違う。全体的に物語の様……そもそも男だけでどうやって国が栄えるのよ!」
「え……でも俺の記憶でも、この国は男だけってなってるよ?」
「本当に?ちゃんと思い出しなさい!あんたの記憶は改竄されてるのよ!それを前提に思い出しなさい‼︎」
「……改竄⁉︎」
物騒な言葉が出た!と驚きながらも記憶をたどる……。オカンの言葉には逆らえない――そして――。
「あ――」
「思い出したみたいね?」
オカンの言葉にうんうんと頷く。そうだった!忘れてた!と思えてしまうなんて、記憶の改竄させられていた事実が怖い……まったく違和感なく受け入れていた。
「あんたみたいにこの国の人はみんな記憶を改竄させられて、『ムーンバタフライ』の配役にさせられてるの。私達は別ルートを使ってこの国に入ったから影響はないけど、あんたはバッチリ記憶を弄られて配役のひとりにされていたの……。だからこあんたにゲームの攻略をさせていたの」
「ようはこの国に異変が起きてて、その異変を解決するためには、俺がゲームの攻略する必要があると思ったんだね?」
「そうよ……でももうダメね。麗ちゃんがあの様子だと、これ以上は厳しいわ。男同士でかつゲームの世界の攻略と言ってれば、麗ちゃんの嫉妬も抑えられると思ったのに。結果ダメだったわね」
「初めは大丈夫だったけれど、段々嫉妬が抑えられなくなったね。さすが愛の神の加護を受けるもの……あの嫉妬の力は恐ろしいね」
ふたりの深いため息を見ていると本当に大変だったらしい。俺だって麗をもう泣かせたくない。麗以外を口説くなんて嫌だ。
「じゃあ、どうするの?このままゲームを攻略するのは諦めて、他の方法を使うの?」
「無理よ……調べたけどちっともこの国にかかってる魔法が分からないもの。だから仕方ないけど、ムーンバタフライをクリアするしかないわ」
「ああ、あとひとりだよね?確か……」
「あんたはだめよ。これ以上はさせられないわ、また麗ちゃんに暴走されては堪らないもの。続きは雅也さんがやるわ」
意外な言葉に目を瞬きオヤジを見ると、なぜかパサっと髪を翻した。すると見る間に髪が金色に変わり、さらに紅い瞳も青くなる。そして……立ち上がった姿は妖艶な姿から一変して、見るからに美青年に変わる。すっと立った姿は海外の映画の主役級のかっこよさだ。
「髪も――短くなるんだ?」
「容易いことだよ。言っただろう?この世界は作られた世界だ。僕がこの世界の王子役をすると受け入れれば姿は変わる。明日からは僕が攻略するよ、だから咲夜はここで保険医でもしていたまえ」
「それが……仕様?」
オヤジは驚く俺の言葉に頷き、オカンに流し目を送りるとともに、そっと微笑みを口に灯す。
「それで良いんだよね?燈子さん」
随分と色気を込めたオヤジの姿だったが、オカンはまったく気にせずに、普通に腕を組んだまま、納得する様にコクリと首を落とした。
「そうね。雅也さんがやった方が効率は良いでしょう。それにこの世界を作った人間の思惑からも外れるからちょうど良いわ」
「……そうだね、効率良く攻略するよ。僕には勝利の神をついているしね」
オカンはそれには応えずに、勢いよくベッドから降りた。そして俺に向かってニヤっと笑う。
「どう?今までの流れが分かった?」
「あ……うん。だから、俺に試練を与えたい試練の神が、俺を誘拐しようとした人間を手伝って、俺は拐われた。そして拐われた先であるこのルーナ国は、何者かによって前世のゲームの世界、『月に集う蝶の宴』、通称『ムーンバタフライ』の世界観にされていて、国民全てがその配役を担ってる、で大丈夫?」
「そうよ、だからその犯人を捕まえて、この閉ざされた世界を元に戻すのよ?良いわね」
なんだか随分と大事になっている……とは思うけれど、この世界は現実だ。他国のことではあるけれど、できるならこの歪な世界から救ってあげたい。今の俺にはそれができるだけの力があるのだから!
「さて、そろそろ麗ちゃんが起きそうだ。燈子さんは先に帰ってくれる?咲夜とふたりで話があるんだ」
「……分かったわ。私たちは寮に戻るわね」
その一言を残し、オカンは転移していった。
残ったのは俺をオヤジ……。
「話ってなに?」
俺の質問にオヤジの目がキラリと光った。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる