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20話 サヨウナラ
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今日は朝から大変だった。
妹のオリエッタが聖剣ウルティモの試練に参加するとの事で、準備に追われた。
妹がその試練に参加が出来る理由は、王太子様と同じ日に産まれたからだと言う。
私も該当者ではあるが、それを言う人はいない。
そうだろう、と思う。
ここ数日、ご飯は食べていない。
家族の食べ残しは使用人によって捨てられる事になった。水と小鳥さんが持って来てくれる木の実でなんとかしのいでる。元気だけが取り柄だったのに、最近は体が重くてちゃんと動かない。頭にも靄がかかったようだ。
それでも家族は働けと言う。
働かないと鞭が飛んでくる。
最近はその痛みも感じない。
父と妹が慌しく出て行ったその後に、片付けをし次に庭の掃除を命じられた。
以前良く来てくれた小鳥さんは、最近はその姿を見せてくれない。でもここ数日は朝起きたら枕元に木の実があるので、寝ている時に来てくれているのだろう。
優しい小鳥さん。金色に輝く、いつか会ったあの人の目の様な小鳥さん。
私は……もうダメだと思うんだ。最後に一目だけでも会いたかったな。
狭い視界でゆっくり掃く。最近は箒を持つのも辛い。普通の人は掃除も魔法で出来るらしい。魔法が使えないだけで、こんな目に合う。こんな世界が嫌い。夢の世界で暮らしたい。魔法のない世界。サクヤがいる世界。
門の前に馬車が停まる音がし、父の怒鳴り声が聞こえる。
(ああ、また殴られるのかな)
「コスタンツァ!お前のせいで!来い‼︎」
帰って来るなり父から、髪を掴まれた。引き摺られながら、屋敷に連れ込まれる。抵抗する力は、ない。荷物の様に運ばれる。
「お父様!どうするの?このみっともないの連れて行くわけ?」
妹の金切り声が聞こえる。
ああ、私は今日で終わりなんだろう。
「オリエッタ。お前とこいつは双子だ。なーに、髪型を変えて、雰囲気を変えて行けば気付かれんだろう。何が聖剣を抜くだ!あんな骨董品が抜ける訳がない!」
唾を飛ばす勢いで怒っている父。引き摺られながら眺めていると、鳩尾に蹴りが飛んできた。
「貴様がさっさと死なないから、私がこんな目に!」
次々に繰り出される蹴りは、正確に鳩尾に当たる。胃液も出ない。声もでない。痛みも、もうない。
「早くオリエッタを着替えさせろ!あの小僧め!一時間以内に帰れと言いやがって。何が王子だ‼︎」
踏みつけられる頭。きっともうすぐ死ぬことができる。
この無駄に頑丈な身体ともお別れだ。
「お父様、殺すなら他でやって。汚いわ」
妹が蔑んだ目で見る。
双子なのに、こんなに違う。生まれ変わっても、あなたの様にはなりたくない。この家族の様な人にはなりたくない。
あの時会った二人の様になりたい。汚い私を心配してくれる、手を取ってくれる様な人に。
「これでどうかしら?髪をストレートにして、化粧を変えたわ」
「おお、さすがオリエッタだ。うんうん、あとはドレスを変えて行くぞ!若造のくせに威張りくさって!年長者を敬む気持ちもない!馬鹿王子が‼︎」
「とりあえず行きましょう。お父様。茶番もこれで終わりよ」
妹が私に近づく。下卑た笑みだ。
「汚いこと、お姉様はそうやって這いつくばっているのがお似合いだわ。私が帰る頃には、死んでいるかもね。いい気味だわ。さ・よ・う・な・ら。お姉様」
(ええ、さようなら)
意識が段々と薄れて行く。
最後に想い出すのは金の髪の男の人と、黒い髪のサクヤ……。
妹のオリエッタが聖剣ウルティモの試練に参加するとの事で、準備に追われた。
妹がその試練に参加が出来る理由は、王太子様と同じ日に産まれたからだと言う。
私も該当者ではあるが、それを言う人はいない。
そうだろう、と思う。
ここ数日、ご飯は食べていない。
家族の食べ残しは使用人によって捨てられる事になった。水と小鳥さんが持って来てくれる木の実でなんとかしのいでる。元気だけが取り柄だったのに、最近は体が重くてちゃんと動かない。頭にも靄がかかったようだ。
それでも家族は働けと言う。
働かないと鞭が飛んでくる。
最近はその痛みも感じない。
父と妹が慌しく出て行ったその後に、片付けをし次に庭の掃除を命じられた。
以前良く来てくれた小鳥さんは、最近はその姿を見せてくれない。でもここ数日は朝起きたら枕元に木の実があるので、寝ている時に来てくれているのだろう。
優しい小鳥さん。金色に輝く、いつか会ったあの人の目の様な小鳥さん。
私は……もうダメだと思うんだ。最後に一目だけでも会いたかったな。
狭い視界でゆっくり掃く。最近は箒を持つのも辛い。普通の人は掃除も魔法で出来るらしい。魔法が使えないだけで、こんな目に合う。こんな世界が嫌い。夢の世界で暮らしたい。魔法のない世界。サクヤがいる世界。
門の前に馬車が停まる音がし、父の怒鳴り声が聞こえる。
(ああ、また殴られるのかな)
「コスタンツァ!お前のせいで!来い‼︎」
帰って来るなり父から、髪を掴まれた。引き摺られながら、屋敷に連れ込まれる。抵抗する力は、ない。荷物の様に運ばれる。
「お父様!どうするの?このみっともないの連れて行くわけ?」
妹の金切り声が聞こえる。
ああ、私は今日で終わりなんだろう。
「オリエッタ。お前とこいつは双子だ。なーに、髪型を変えて、雰囲気を変えて行けば気付かれんだろう。何が聖剣を抜くだ!あんな骨董品が抜ける訳がない!」
唾を飛ばす勢いで怒っている父。引き摺られながら眺めていると、鳩尾に蹴りが飛んできた。
「貴様がさっさと死なないから、私がこんな目に!」
次々に繰り出される蹴りは、正確に鳩尾に当たる。胃液も出ない。声もでない。痛みも、もうない。
「早くオリエッタを着替えさせろ!あの小僧め!一時間以内に帰れと言いやがって。何が王子だ‼︎」
踏みつけられる頭。きっともうすぐ死ぬことができる。
この無駄に頑丈な身体ともお別れだ。
「お父様、殺すなら他でやって。汚いわ」
妹が蔑んだ目で見る。
双子なのに、こんなに違う。生まれ変わっても、あなたの様にはなりたくない。この家族の様な人にはなりたくない。
あの時会った二人の様になりたい。汚い私を心配してくれる、手を取ってくれる様な人に。
「これでどうかしら?髪をストレートにして、化粧を変えたわ」
「おお、さすがオリエッタだ。うんうん、あとはドレスを変えて行くぞ!若造のくせに威張りくさって!年長者を敬む気持ちもない!馬鹿王子が‼︎」
「とりあえず行きましょう。お父様。茶番もこれで終わりよ」
妹が私に近づく。下卑た笑みだ。
「汚いこと、お姉様はそうやって這いつくばっているのがお似合いだわ。私が帰る頃には、死んでいるかもね。いい気味だわ。さ・よ・う・な・ら。お姉様」
(ええ、さようなら)
意識が段々と薄れて行く。
最後に想い出すのは金の髪の男の人と、黒い髪のサクヤ……。
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