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第三章

76 頭がおかしい ※

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 寝台の中央で胡座をかいている美丈夫は、彫刻のような美しい体を、惜しげもなく曝け出す。

 その上に幼子のように抱きついて、四つん這いにされないように足をロックしている俺は、エリオット様の肩に顔を埋めていた――。

「イヴ? もう諦めて四つん這いになってくれ。この体勢じゃ、傷付いているか見えない」
「み、見なくても、傷付いてませんからっ!」
「そんなに恥ずかしいことじゃないだろう? 前回だって――」
 
 これ以上口を開けないように、俺は目の前の肩にガブリと噛み付く。

「ククッ……怒ったのか?」
「――別に? でも、エリオット様まで全裸になる必要はないと思いますけど?」
「……確実に怒っているな」

 くつくつと喉を鳴らしたエリオット様は、薬の入っている小瓶を放り投げ、甘い香りのする液体を用意して指に絡め始める。

 その指先で後蕾をくるくると撫でられて、俺の体はびくんと飛び跳ねた。

「そ、それ、薬じゃない……」
「ん? これも薬だぞ? イヴが気持ち良くなる薬だ」
「っ、そんなわけないでしょ! んぁっ……」
「ほらな?」
「~~ッ!!」

 甘い声で肯定するエリオット様の指先は、つぷりと後蕾に侵入してくる。

 まだ慣れない行為に、俺はぎゅっとしがみつく力を強めた。
 
「んんぅ……」
「はあ……甘えるイヴが可愛い」
「甘えてませんッ、ぁっ……ン」

 じゅぷっといやらしい水音がして、かっと顔が火照った。

 ゆっくりと動く指先は、俺の弱点をすぐに見つけ出し、すりすりと触れてくる。

「あっ……や……そこ、やだっ……ぁあっ……」
「ん? 中も傷付いているかもしれないから、たっぷり塗っておこう」
「ばっ、馬鹿なんですかっ……ひ、ぁッ!」

 悪態をつけたのはここまでで、それからはエリオット様の好きなようにされてしまう。

 気付けば指を三本も突っ込まれて、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を鳴らされる。

 気持ち良くて頭がぼーっとし始めた俺は、指をぎゅうぎゅう締め付けて喘いでいた。

「は、ン……もぅだめ……んぅ……くる……あ、や、だ……きちゃう……ぁあッ……ん、んん、んんんぅ────ッ!」

 射精とは違った快感に襲われて、ガクガクと体を震わせる。

 エリオット様の肩を涎まみれにさせる俺は、長い絶頂の余韻に浸っていた。

 再度埋もれる指が動き出し、きゅっと力が入る。

「ひ……や、やだ……ストップ! あっ、ぁあっ……やぁっ……んあぁっ……」
「五日も経っているからキツイな」
「は、ぁ……もぅ、だいじょーぶ……んんッ」
「ククッ。もう挿れて良いのか?」
「っあ……っ、く……」

 耳元で囁かれ、前回のことを思い出しただけで、中がキュンと疼く。

 鳥肌の立つ腕を動かして、俺は既に臨戦態勢になっているご立派な陰茎を握った。

 大きすぎるから、一回射精させてしまおうと、なんとか手を動かした。

「っ……イヴ……すまない。気付かなくて――」
「ん?」
「そんなに欲しがっていたとは」
「…………はあっ?!」

 信じられない言葉が聞こえ、俺は肩に乗せていた顔を勢いよく上げる。

 すると、乙女のように目尻を赤らめるエリオット様と目が合った。

 ……いや、眼福だけれども。

「ち、違いますっ! エリーのが大きいからっ」
「ああ、イヴは大きい方が好きなんだな?」
「っ……ば、馬鹿じゃないの……」
 
 頭のいかれたことを言い始めたエリオット様は、わかったとばかりに頷いた。

 誤解を解こうとしているのに、ひょいと持ち上げられて、後蕾にガチガチの陰茎を押しつけられる。

「や、なに、やだっ……あぁっ!」
「絶景だな」
「つっ……頭、おかし、い……ん、く……」

 険しい表情で見下ろせば、口角の上がるエリオット様は、危険な色香を放っていた。

 普段より魅惑的な表情に見惚れていると、ずぷりと亀頭を飲み込む。

「んああっ……」

 体が勝手にガタガタ震えて、腹が苦しいのに、後蕾はぐぷぐぷと素直に飲み込んでいく。

 このまま落ちていくのが怖いのに、ぞくぞくとした快感に襲われて、視界が歪む。

「はっ……ぁ、ン……エリーっ……」
「っ、イヴ……」

 真上から口付けて、ゆっくりと落ちていく。

「んっ……くるしっ……えりぃ……っ、あっ、んぁぁああ────ッ!!」

 急にぐっと突き上げられる。

 奥を刺激され、気持ち良すぎて体が仰け反った。

 陰茎からはピュクピュクと白濁が漏れ、中に埋もれる熱い陰茎を締め付ける。

 目がチカチカして力の抜けた体は、逞しい腕に支えられ、抱き寄せられていた――。



 暫くして震えが収まり、焦点が合う。

 ぐっと奥歯を噛み締めているエリオット様は、眉間に皺を寄せていた。

 なんだかすごく苦しそうで、指先ですりすりと眉間の皺をほぐす。

 はっとした様子のエリオット様と目が合えば、すごく嬉しそうに微笑まれる。

 顔を寄せて唇に吸い付き、ゆったりと舌を絡ませ合う。

 甘い口付けが心地良くて、このまま眠ってしまいそうだ。

 カクンと首が揺れて唇が離れるが、すぐに口付けて舌を吸い、唾液を啜った。

「イヴ……大丈夫か?」
「ん……もっと、キスしたい……」

 気遣ってくれるエリオット様に、俺は甘えるようにしなだれかかる。

 閉じかけている目をとろんとしたまま、綺麗な漆黒色の瞳を見つめた。

「おねがい、えりぃ……」
「ああ、イヴ……っ、すまない、限界だ」
 
 急に表情が険しくなったエリオット様に尻たぶを鷲掴みにされて、ゆさゆさと突き上げられる。

「ああッ! あっ……ああっ、」
「イヴっ」
「んっ……だめッ……ぁあ……奥、いやっ……ン」

 貪るように激しく口付けられて、拒否の言葉を遮られる。

 混ざり合う唾液を飲み込めず、ぽたぽたと口の端から零れ落ちる。

 再度硬くなる陰茎が、見事に割れている腹筋に当たり、触れているところ全てが気持ち良くて、快楽で頭がいっぱいになった。

 俺の中で暴れる陰茎が膨れ上がったのを感じ、射精が近いのだと伝わってくる。

「あっ……おっき……ん、く……ぁああッ!」
「っ、」
「んあッ、きもちい、えりぃ……ひ、あああァ、イクッ……」
「くっ……出すぞ」
「あァッ、あっ、出してっ、中に、だし、てっ、~~~~ッ!」

 ギラリと目付きが鋭くなったエリオット様は、色っぽいが恐ろしい雰囲気で、身震いする。

 ガンガンと容赦なく突き上げられて、辛すぎる快感に声も出ない。

 ぐっと奥を突かれて、開きっぱなしの唇に口付けられる。

 俺が達した瞬間に、ドクドクと白濁を注がれた中も熱くなって、頭がおかしくなりそうだ。

 俺の陰茎からもピュッと白濁が漏れ、エリオット様の腹を汚した。

 イキ狂ってだらしない顔になっていると思うのに、息を荒げる美丈夫は、鋭い視線のまま俺の顔を凝視していた。

 ハァハァと懸命に呼吸する俺を、ただひたすら眺め続けるエリオット様。

 中で力を無くしたはずの陰茎が、硬くなっていくのを感じて、俺は閉じそうになる目を見開いた。
 
「悪い子だな」
「っ……も、だめ……むりっ、」
 
 ゆっくりと押し倒されて、顔を囲むように手を置いたエリオット様は、にたりと笑みを浮かべて俺を見下ろす。

 角度が変わって、悲鳴のような嬌声を上げた。

「私を煽ったイヴが悪い」
「っ、し、してな、いっ……ぁああッ!」
「奥が辛いなら、イヴの良いところだけにする」
「やっ、それも……だめっ、は、あァっ……」
 
 気持ち良いところを集中的に刺激されて、勝手に涙が溢れる。

 中に一度出ているからか、ぐじゅぐじゅといやらしい水音が酷くうるさい。

「は、可愛い、イヴ……。気持ち良いな?」
「んんんッ……や、やらっ……死ぬ、ぅうっ、あ、ああっ……やぁ……」

 頭がおかしくなりそうなほどの快感から逃げようと身を捩るが、その分ぐっと突き上げられる。

「イヴ、気持ち良い?」

 ギラつく瞳に見下ろされる。

 有無を言わさぬ態度に、俺はこくこくと必死に頷いていた。

「あっ……ん、んん……いいっ……きもち、いッ……えりぃっ……もう、ゆるし、てっ……ひ、あン、あっ、ぁぁああァ────ッ!」

 くっと唸るエリオット様に激しく突き上げられ、俺は泣きながら絶頂する。

 二度目の精を吐き出され、ごくごくと飲んでいるかのように中が蠢いた。

 言葉にならない声が出続けて、その口を優しく塞がれる。

 口付けをしたいのに、もう一ミリも動けなくて、そのままプツリと意識が途切れた。


 昼間は魔物を討伐し、夜は俺との激しい運動をするエリオット様は、無尽蔵のスタミナの持ち主だった――。













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