上 下
22 / 46

21 ※ 愛されている証

しおりを挟む


 フレイが積極的な行動を取ったのは、初夜の一度きりだけだ。
 はしたない真似をしてしまったかもしれないと、フレイはヒヤヒヤしていたが、たちまちヴァレリオの顔が華やぐ。


「ああ、もう。本当にかわいいな、フレイは……」


 夜空色の瞳が熱を持ち、ヴァレリオの雰囲気が変わった。
 深く口付けるために、大きな手で後頭部を押さえつけられただけで、フレイは全身の力が抜けて、ヴァレリオにしなだれかかっていた。

「んっ……」

 熱い舌が差し込まれ、ゆっくりと絡み合う。
 ヴァレリオにしがみつくフレイは、つたない舌使いで、懸命に応える。

 不安な気持ちが膨らんでいたため、フレイはヴァレリオと触れ合いたくてたまらなかったのだ。


「フレイ……。わかっているとは思うけど、私以外に、こんなことをしてはいけないよ?」


 普段より少し低い声に、背筋がぞくりとする。
 なぜ、天地がひっくり返ってもありえない話をするのだろうか……。
 とろんとした目を開けば、壮絶な色気を醸し出すヴァレリオが、フレイを見下ろしていた。
 有無を言わさぬ瞳で見つめられ、フレイは慌てて頷く。

「いいね?」

「――っ、は、ぃ……っ」

 ゆっくりと押し倒され、ヴァレリオに求められていると感じたフレイは、歓喜する。

 共に過ごした日々の中で、ヴァレリオはフレイに対して恋愛感情が芽生えなかったとしても、情はあるのではないだろうか。
 ヴァレリオからは、思いやりや、慈しみの気持ちが感じられるのだから――。

 意識を飛ばしてしまう前に、フレイはヴァレリオの気持ちを確認することにした。


「僕は、ヴァレリオ様のことが大好き、ですっ。ずっと、一緒にいたいと思っています。……ヴァレリオ様も、僕と同じ気持ち、ですか……?」


 フレイが恐る恐る尋ねたからか、ヴァレリオはハッと目を見開いた。

(もし、お義父様の話した通り、ヴァレリオ様が僕を愛していなかったとしても、僕はヴァレリオ様を愛している……)

 期待と不安を抱えた瞳で返事を待っていれば、ヴァレリオはなんとも幸せそうに笑った。


「ああ、もちろんだ。愛してるよ、フレイ」

「っ……」


 強く抱きしめられ、フレイは涙が出そうだった。
 優しいヴァレリオのことだ。
 元婚約者のこともあり、フレイを不安にさせまいと、愛を囁いてくれたのだろう。

 フレイはみっともない行動を取ってしまったことを恥じていたが、フレイの全身に口付けを送るヴァレリオは、酷く嬉しそうだった。

「フレイには悪いけど、何があっても手放すつもりはないよ」

「っ、ふ、ぁ……」

 普段よりもきつく吸われ、フレイはビクッと体を震わせる。
 それから、フレイがぐったりとするまで全身を愛撫されてしまった。

「フレイ、おいで」

「っ……」

 そして、彫刻のような肉体を、惜しげもなくさらすヴァレリオが手招きをする。
 また膝の上に乗るように促されたが、フレイは恥ずかしくて「で、できません……っ」と首を横に振った。

「さっきはしてくれたのに?」

「っ、ぅぅぅう~~……」

 揶揄われたフレイが赤面すれば、ヴァレリオがくつくつと笑った。
 それから軽々と抱き上げられたと思ったら、すでに大きくなっているモノを、後蕾に押し付けられる。
 早く入りたいとばかりに擦り付けられただけで、後蕾はヒクヒクと期待するように動いてしまう。

「んんんぅ~っ、ヴァレリオ、さまっ……」

「っ、ああ、あまりに可愛い反応をするから……。意地悪してごめんね?」

「あっ! ひああぁァ――ッ!!」

 ぐっと奥まで突き上げられ、フレイの目の前に火花が散った。

「はぁ……ぁっ、……んんぅっ……」

 口付けながら、ゆっくりと突き上げられる。
 しっかりと抱きしめられ、至福の時間だ。

「はあー……幸せだ」

「っ、」

 思わずと言ったように漏らしたヴァレリオの言葉に、フレイは中をキュンとさせた。
 ぱちゅんぱちゅんと音が鳴り、耳を犯される。
 どこもかしこも気持ちよくて、もうヴァレリオのことしか考えられなくなっていた。

(こんなことされたら、誰だって、愛されていると勘違いしても、おかしくないよ……)

 フレイの全身には、赤い花が散っている。
 まるで、ヴァレリオに愛されている証のようだった。




















しおりを挟む
感想 108

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...