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11 可愛い可愛い双子の妹 クラレンス
しおりを挟む「つまんないのッ!」
「まぁ、あれが頭を下げたんだ。許してやるほかないだろう。それに、この力のことは、身内とてなるべく知られたくはないからな」
肩を竦める可愛い可愛い僕の双子の妹は、とにかく優しすぎるんだ。
戦神クラレンス様と同じ能力を宿しているというのに、僕のために秘密にしてくれている。
その力があれば、天下を取れるっていうのに。
五歳の頃にクラウディアに問われた。
「クラレンスは癒しの力を宿しているか?」
って。
最初は意味がわからなかった。
でも、クラウディアは自然に愛された美少女だったんだ。
僕には癒しの力なんて宿ってもいなければ、自然にも愛されていない、ただ少し良いところに産まれた男の子だ。
あ、超絶美男子ね?
ここ重要。
二人の女神様の伝説は今も語り継がれているけど、特別な力があるからこそ崇められていた。
現代では男尊女卑が根強い社会となっているから、同じ力量だとしても、男の僕の方が目立つ。
実際に、いずれは次期騎士団長として周囲から期待されているんだけど、みんなは知らないんだ。
クラウディアの圧倒的な強さを……。
僕は妹の良さを周囲に知らしめてやりたいんだけど、そうなると僕が平凡な人間だとレッテルを貼られることになる。
幼い頃ならまだしも、今はもう大人になったっていうのに、僕の精神が病まないようにって気を遣ってくれているんだ。
「あれだけ女だからと蔑んだ目で見ていたくせに、今更手のひら返しされても不愉快だ」
「ふふっ、そうだね」
──嘘つき。
本当は僕のことを愛しているからだよね?
わかってるよ、大好きなクラウディア。
だからね、ラウル殿下には勿体ない。
ロベルト殿下も良い奴だけど、二人が破局することを待っているだけなら、僕は応援出来ない。
クラウディアの心を守ってくれるのは、あのお方しかいないんだってわかってる。
クラウディアの力に気付いたであろう父様の元へ向かった。
未だに稽古場のど真ん中に座り込み、置物のようになっている大男に声を掛ける。
「父様も認めざるを得ないですよね? 本当は、もっと前から薄々勘付いていたんじゃないんですか?」
放心状態の父様は、今なにを考えているのだろう?
自分が娘より弱いことに悲観しているのなら、それは大きな間違いだ。
「ラウル殿下との婚約を解消するとして。クラウディアのことは、あのお方に任せるべきかと」
「…………」
「王都にいるより、辺境の地で自由に戦わせてあげましょう? うまくいけば、隣国との争いの中で、死者が出ることなく、向こうが降伏することになるかもしれません」
その言葉に、父様がゆっくりと頷いた。
本当は、クラウディアを傷付けた元凶との接点を無くしてあげたいからだ。
でも、女性の心を配慮することを知らない父様には、国のためだと言った方が良いだろう。
「クレアはそれで良いのか?」
「え? まさか、父様まで僕のために知らぬふりをしていたってわけじゃないですよね?」
一瞬、瞳が揺れたのを見逃さなかった僕は、深い溜息を吐いた。
「同情しないでくれませんか? 僕も、父様を余裕でコテンパンに出来ますよ?」
「フッ、それは頼もしいな」
「おっさんはさっさと引退しろ」
「……何か言ったか?」
いいえ? と、にこりと笑った僕は、さっさと陛下に文を出せと、父の尻を叩く。
大好きなクラウディアが世界に羽ばたき、その名を轟かすことになる未来を想像し、僕の頬が蕩けるように緩んだ。
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