個性豊かな異世界召喚

佐原奏音

文字の大きさ
上 下
11 / 37
第一章 『始まりの一ヶ月』

9.5.『見通す者』

しおりを挟む
「やはり、倒れたか」

 ミナスが立ち上がり、現状を確認する。倒れたユウヤにユウヤに駆け寄るメリナ。
 そしてミナスはこのことを見越して、魔力を王都に帰れるくらいには残しておいた。ユウヤは魔力を残すことなんて考えないだろうと。そして保有魔力量が多いミナスは魔力を残すなんて簡単過ぎるほどであった。

「あ! ミナスさん! ユウヤさんは大丈夫なんですか!?」

「大丈夫だ。魔力が切れて眠っただけだよ」

 それを聞き、メリナは安心の息を漏らした。

「私はユウヤをおぶるから、メリナちゃんは荷物を持っててくれないか?」

「わかりました」

 メリナがトテトテと歩き、ミナスの荷物を背負う。それと同時に王都への歩みを進める。

 ミノタウロスなんてモンスターがなぜ、こんな辺鄙な森にいたんだ。アイツはダンジョンの奥地で潜んでいるボスモンスターだ。安易なことでは表に出てくることはない。
 この近くにまで魔王軍の幹部が来ているということか……? それなら、早くラートルの奴に伝えた方がいいな。いっそのこと、ライドに行かせるか? アイツならやれるかもしれない。だが、この辺の土地を消されるのは困るな。

「あの、ミナスさん」

「ん、なんだ? メリナちゃん」

 考え事の最中にメリナに話しかけられた。何かを伝えたそうにしている。

「ユウヤさんの師匠になったのは何故なんですか?」

「気になるか? 普通にコイツが無属性しか魔法が使えないから宮廷魔術師である私が直々に指導することになっただけだよ」

 メリナは何か嬉しそうに顔を緩める。

「……メリナちゃん。君、ユウヤのことが好きなのか?」

「え!? いや、その…………はい」

 メリナが頬を赤らめて答える。

「なんでわかったんですか?」

「私より先にユウヤに駆け寄ったからかな。まぁ、ハッキリとはわかってなかったよ。まさか、自分から自白してくるとは思わなかったけどね」

「……恥ずかしい」

 メリナが手で顔面を覆い、その赤らめた顔を見せないようにする。

「まぁ、ユウヤには黙っておくよ」

 多分だが、ユウヤもメリナちゃんのことが好きな気がする。両片思いの状態だな。それにメリナちゃんがお前を好いてるぞなんて言って、コイツがどんな反応とるかわからないしな。最悪、すぐ様襲うかもしれない。それに、この恋の行く末がどうなるのか見届けたい気もする。

「まぁ、この恋を叶える前に多くの困難に直面するだろうがな」

 いずれはアイツとも戦うことになるんだろうな。その為にも私は私なりにコイツに教えられることは教えておかないとな。

 ミナスは何かを見通すかのように夕暮れの空を見上げる。それは赤々と覆い尽くしており、この先に起こるであろう、激闘を表しているようであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

孤独な戦い(6)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

妻は誰に恋をしている? 愛人ができていたら、どうしよう。

Hibah
恋愛
妻が最近、エメラルドグリーンのドレスを買った。使用人の報告によると、今まで装飾品や洋服には興味がなかったはずなのに、ある日突然目覚めたように、新調したドレスを眺めるようになったとのこと。日を増すごとに、妻のことが気になってしまう……。見慣れぬ妻の姿に、心のどこかで揺さぶられるものがあった。このまま黙っているのは何かが違うと思い、話を切り出そうと決めた。

奇談

hyui
ホラー
真相はわからないけれど、よく考えると怖い話…。 そんな話を、体験談も含めて気ままに投稿するホラー短編集。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

【完結】苦しく身を焦がす思いの果て

猫石
恋愛
アルフレッド王太子殿下の正妃として3年。 私達は政略結婚という垣根を越え、仲睦まじく暮らしてきたつもりだった。 しかし彼は王太子であるがため、側妃が迎え入れられることになった。 愛しているのは私だけ。 そう言ってくださる殿下の愛を疑ったことはない。 けれど、私の心は……。 ★作者の息抜き作品です。 ★ゆる・ふわ設定ですので気楽にお読みください。 ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様にも公開しています。

贖罪のための求婚はお断りします ~虐げられ令嬢は自立したいけど王弟殿下は甘やかしたい~

真曽木トウル
恋愛
伯爵家長女のマージェリーは十年間家族に虐げられてきた。 八歳の時に誘拐された彼女は、危ないところで助けられ、生きて帰ることができたのだが、貴族社会でさらわれた女性は『もはや純潔ではない』という扱いにされる。 それゆえ、両親から家名を汚したと責められたのだ。 使用人以下の待遇でこき使われ、心身ともに追い詰められる日々。 つらい毎日の中で彼女が心の支えにしていたのは、誘拐犯から助けてくれた、見知らぬ年上の少年の記憶だった。 そんなある日、一人の青年がマージェリーを伯爵家の邸から助け出す。 それは十年前、彼女を助けてくれた少年で────なんと彼は国王の弟ロデリックだという。 だが、二度も助けてくれた恩人だというのに、ロデリックはなぜか、自分のせいでマージェリーが虐げられたと謝罪してくる。 おまけに罪滅ぼしと名誉回復のためにといって求婚してきて……!? 「殿下はお人が良すぎます!  贖罪のための求婚はお断りします」 そんな令嬢と王弟殿下の攻防劇。 冒頭スローペースです。求婚は8話~。 小説家になろうの方で先行して掲載。

[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな
BL
佐藤雪には恋人がいる。だが、その恋人はどうやら周りに女の子がたくさんいるハーレム状態らしい…どうにか、自分だけを見てくれるように頑張る雪。 果たして恋人とはどうなるのか? 主人公 佐藤雪…高校2年生  攻め1 西山慎二…高校2年生 攻め2 七瀬亮…高校2年生 攻め3 西山健斗…中学2年生 初めて書いた作品です!誤字脱字も沢山あるので教えてくれると助かります!

処理中です...