陰謀のブルースカイ

住原かなえ

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一行は思わぬ刺客の登場に驚嘆していた。これも風の扉経由で運んだというのか。運転席に座る男は、東洋人で間違いがなかった。

例の暴力団は、日本では知らない者がいない程の凶悪集団だと聞いた事があった。何でも財力が並大抵では無いらしく、警察も手をこまねいているという。このジープやヘリコプターにも説明がつく。
だが、最近はこの島に活動を集中させているのか、本島では鳴りを潜めており、ワイドショーからも姿を消していた。古川を操ったり、今度は自ら乗り込んだりと、相当この島に執着しているようだ。一体何故そんなにここに執着するかは理解し兼ねるが、稲葉の言うように、彼等も新兵器に餓えているのかもしれない。

「やけに重装備だ」
ジープには、素人目にも分かるような大掛かりな軍装が施されていた。

「島の動物を狩りにいくつもりなのか?」

「分からない。けれど、殺しはしないと思うよ」

「確かにな。だが、生け捕りにしてもな、相手はアレだぞ?あの科学者よろしく返り討ちに遭いそうなもんだがな」

「うん。でも、何か秘策はあるのかもしれない。生半可な準備では無さそうだし」

「まさか上手くいってるって事か?生き物達に遭遇していないのも」
ここまで動物とのエンカウントは無い。恐怖のエンカウントとはいえ、無ければ無いで、気味が悪い。

「とにかく、1ヶ月であの人達がかなり計画を着々と進めている事は言える」

「珍獣パークでも開くつもりか?」
稲葉が嘲笑する。
「あながち可能性は無くはないかもですよ。ここの動物達の利用価値は無限大ですから」
自分でリアリストを名乗るだけあって、稲葉なりに合理的にものを考えているのだろうか。
様々な考察を含ませたジープは、そのまま過ぎ去って行った。


「ジープは研究所から来てるよね。てことは、こっちが研究所へと向かう道じゃない?」
やはり薫は観察眼に優れている。

「しかし、よく考えたらこんな木だらけの場所をよく大きなジープが通過していけるものだな」
ジープの通った道は、偶然か図ってかは定かではないが、ギリギリ通れる程の道のりにはなっていた。

「言われてみれば。科学者が作っていたルートなのかな。でもこの道を辿れば、間違いなさそう」
薫と隼人は、互いに目配せした。

「名探偵ご夫妻だことで」
稲葉がまた嘲った。
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