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第六話 大佐
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「大佐!」
木の陰から現れたのは、紛れもなくアーマン大佐だった。
フォックスはすぐさま駆け寄ろうとする。
バァン!
思わぬ事態にフォックスは尻餅をつく。
アーマンが発砲したのだ。
フォックスに向かって。
何が起きているんだ。
「悪いなフォックス。俺はもうお前の大佐ではない。」
「な、何を…仰ってるんですか!」
困惑するフォックスにアーマンが答える。
「俺だってちゃんとお前の大佐だったし、本気でこの海賊共の対策を考えていたんだ。だが、三日前に全てが変わった。マーランド島から電話が掛かって来たんだ。」
混乱してものも言えないフォックスに構わず、アーマンが言葉を続ける。
「マーランド島の軍人からだった。用件を聞くとマーランド島の計画に協力して欲しい、という事だった。お前らは当然知ってるだろうが、マーランド島は海賊を用いてスペンサー島を落とそうとしている。初めは不思議に思ったよ。何でそんな乗る訳の無い話を持ち掛けてくるんだとね。だが、それを言ったら相手はこう言った。『もし協力すればお前をマーランド島の重要な役職に付けてやる』とな。」
「ま、まさか大佐!そんな下らない誘惑に乗ったんですか!」
フォックスが叫ぶ。
「ハハ。だけどな、俺はその一言を聞いてハッとしたよ。俺は元々この国の王、エドワードの一族が嫌いだった。狂った政治しかしない典型的な独裁者だ。この国であれを好きなやつなんていない。だが俺はそんなクソ野郎の下でペコペコ頭を下げて大佐をやってる。俺は正直馬鹿馬鹿しくなった。しかしだからと言って俺はマーランドの下につく気はねぇ。俺はスペンサー島もマーランド島にも従わねえ。俺はそんな奴らを潰して、ここを俺の国にする!」
「あんたがか?笑えるな。」
トーマスが嘲る。
「そう思うだろ?だが周りを見てみろ。お前らは俺の部下達に囲まれてるんだぜ?そう、そいつらは有志だ。三日で集めたもんだから大変だったが、優秀な軍人も沢山引き抜いた。要は皆、あのクソエドワードが嫌いなんだよ。」
「例え王が独裁者だとしても、スペンサー島を敵にするのは間違ってると思わないのか!」
フォックスが声を荒げる。
「あと一つ、お前らに忠告しておこう。お前ら海賊はすでにマーランドの野郎共に嵌められている。言っちゃ悪いがマーランドの奴らはお前らを生かしておくつもりなどない。陽動作戦の協力をして報酬を貰おうとしてたんだろ?今までみたいに。だが、今回はそうはいかない。」
「何だと!?」
ジェイムスが叫ぶ。
「奴らの計画は海賊に協力して国を取るつもりはない。海賊を殺して国を取ろうとしてるんだ。分かるか?この意味が。お前らは他所から見れば国を取りに現れた大悪党だ。つまり、その悪党を倒せば、英雄になる。そして、そのどさくさに紛れてスペンサー島の軍隊までもを滅ぼし、スペンサー島を何気ない顔で頂くつもりなんだ。」
「どうしてそんな回りくどい事をするんだ。マーランドは!」
今度はクリスがそう言う。
「キートソン帝国が興味を示してる。お前らは馬鹿じゃないから分かるよな?これがどういうことか。」
「嘘だろ…キートソン帝国だと!?」
ニックが仰天する。
「そう、あのキートソン帝国だ。我々スペンサー島やマーランド島の比ではないぐらいの強さだ。恐らく相手にならないだろう。キートソン帝国はかつての世界大戦にも圧勝し、最早軍事力で右に出る国など存在しない。そして、奴らの何よりの特徴は、見せしめ主義だ。自分達の正義を全うし、国内外からも支持を集め、同時に恐怖を与える。」
「ま、まさかじゃあ…」
「そうさ、今回の件はキートソン帝国から見ても海賊が悪党だ。さっきも言った様に、海賊を討ち取った者が英雄視される。そして見せしめ主義のキートソン帝国はその英雄に加担するだろう。つまり、この争いにおいて、海賊を討ち取った者がスペンサー島を手にすると言っても過言ではないだろう。」
「じゃあつまり、この島にいる輩は全員俺たち海賊の命を狙いに来てる訳だな。」
ニックがそう言う。
「その通りだ。もう察しただろう。お前たちは既に包囲されている。逃げ場などないんだ。お前たちには何の恨みも無いが、この俺の計画を実行する上でお前らを討ち取る事は必要不可欠なんだ。」
「ちょっと待って下さい!なんで俺まで!」
フォックスが喚く。
「気の毒だが、フォックス。キートソン帝国は海賊が七名だと思っているんだ。」
フォックスは言葉も出なかった。
ニック、クリス、ジェイムス、トーマス、メリザ、エマ。そして、フォックス。
増えた一名はそれを露呈していた。
「もうお喋りの時間は終わりだ。眠れ!海賊!おいニコラス、撮影を忘れるなよ。」
最早、海賊にも打つ手立ては無かった。
皆静かに、観念した表情を浮かべていた。
ここまでか。
フォックスは眼を瞑る。
「隊長!至急報告します!西海岸にいた我が兵達が、スペンサー島軍と思しき集団に襲撃を受けています!」
「何!?スペンサー島軍だと!?まさか勘付かれたか!?」
アーマンが銃を向けるのを止め、怒鳴る。
するとその時、またしても木の陰からガサゴソと音がした。
「今度は誰だ!!」
木の陰から現れたのは、紛れもなくアーマン大佐だった。
フォックスはすぐさま駆け寄ろうとする。
バァン!
思わぬ事態にフォックスは尻餅をつく。
アーマンが発砲したのだ。
フォックスに向かって。
何が起きているんだ。
「悪いなフォックス。俺はもうお前の大佐ではない。」
「な、何を…仰ってるんですか!」
困惑するフォックスにアーマンが答える。
「俺だってちゃんとお前の大佐だったし、本気でこの海賊共の対策を考えていたんだ。だが、三日前に全てが変わった。マーランド島から電話が掛かって来たんだ。」
混乱してものも言えないフォックスに構わず、アーマンが言葉を続ける。
「マーランド島の軍人からだった。用件を聞くとマーランド島の計画に協力して欲しい、という事だった。お前らは当然知ってるだろうが、マーランド島は海賊を用いてスペンサー島を落とそうとしている。初めは不思議に思ったよ。何でそんな乗る訳の無い話を持ち掛けてくるんだとね。だが、それを言ったら相手はこう言った。『もし協力すればお前をマーランド島の重要な役職に付けてやる』とな。」
「ま、まさか大佐!そんな下らない誘惑に乗ったんですか!」
フォックスが叫ぶ。
「ハハ。だけどな、俺はその一言を聞いてハッとしたよ。俺は元々この国の王、エドワードの一族が嫌いだった。狂った政治しかしない典型的な独裁者だ。この国であれを好きなやつなんていない。だが俺はそんなクソ野郎の下でペコペコ頭を下げて大佐をやってる。俺は正直馬鹿馬鹿しくなった。しかしだからと言って俺はマーランドの下につく気はねぇ。俺はスペンサー島もマーランド島にも従わねえ。俺はそんな奴らを潰して、ここを俺の国にする!」
「あんたがか?笑えるな。」
トーマスが嘲る。
「そう思うだろ?だが周りを見てみろ。お前らは俺の部下達に囲まれてるんだぜ?そう、そいつらは有志だ。三日で集めたもんだから大変だったが、優秀な軍人も沢山引き抜いた。要は皆、あのクソエドワードが嫌いなんだよ。」
「例え王が独裁者だとしても、スペンサー島を敵にするのは間違ってると思わないのか!」
フォックスが声を荒げる。
「あと一つ、お前らに忠告しておこう。お前ら海賊はすでにマーランドの野郎共に嵌められている。言っちゃ悪いがマーランドの奴らはお前らを生かしておくつもりなどない。陽動作戦の協力をして報酬を貰おうとしてたんだろ?今までみたいに。だが、今回はそうはいかない。」
「何だと!?」
ジェイムスが叫ぶ。
「奴らの計画は海賊に協力して国を取るつもりはない。海賊を殺して国を取ろうとしてるんだ。分かるか?この意味が。お前らは他所から見れば国を取りに現れた大悪党だ。つまり、その悪党を倒せば、英雄になる。そして、そのどさくさに紛れてスペンサー島の軍隊までもを滅ぼし、スペンサー島を何気ない顔で頂くつもりなんだ。」
「どうしてそんな回りくどい事をするんだ。マーランドは!」
今度はクリスがそう言う。
「キートソン帝国が興味を示してる。お前らは馬鹿じゃないから分かるよな?これがどういうことか。」
「嘘だろ…キートソン帝国だと!?」
ニックが仰天する。
「そう、あのキートソン帝国だ。我々スペンサー島やマーランド島の比ではないぐらいの強さだ。恐らく相手にならないだろう。キートソン帝国はかつての世界大戦にも圧勝し、最早軍事力で右に出る国など存在しない。そして、奴らの何よりの特徴は、見せしめ主義だ。自分達の正義を全うし、国内外からも支持を集め、同時に恐怖を与える。」
「ま、まさかじゃあ…」
「そうさ、今回の件はキートソン帝国から見ても海賊が悪党だ。さっきも言った様に、海賊を討ち取った者が英雄視される。そして見せしめ主義のキートソン帝国はその英雄に加担するだろう。つまり、この争いにおいて、海賊を討ち取った者がスペンサー島を手にすると言っても過言ではないだろう。」
「じゃあつまり、この島にいる輩は全員俺たち海賊の命を狙いに来てる訳だな。」
ニックがそう言う。
「その通りだ。もう察しただろう。お前たちは既に包囲されている。逃げ場などないんだ。お前たちには何の恨みも無いが、この俺の計画を実行する上でお前らを討ち取る事は必要不可欠なんだ。」
「ちょっと待って下さい!なんで俺まで!」
フォックスが喚く。
「気の毒だが、フォックス。キートソン帝国は海賊が七名だと思っているんだ。」
フォックスは言葉も出なかった。
ニック、クリス、ジェイムス、トーマス、メリザ、エマ。そして、フォックス。
増えた一名はそれを露呈していた。
「もうお喋りの時間は終わりだ。眠れ!海賊!おいニコラス、撮影を忘れるなよ。」
最早、海賊にも打つ手立ては無かった。
皆静かに、観念した表情を浮かべていた。
ここまでか。
フォックスは眼を瞑る。
「隊長!至急報告します!西海岸にいた我が兵達が、スペンサー島軍と思しき集団に襲撃を受けています!」
「何!?スペンサー島軍だと!?まさか勘付かれたか!?」
アーマンが銃を向けるのを止め、怒鳴る。
するとその時、またしても木の陰からガサゴソと音がした。
「今度は誰だ!!」
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