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第五話 正体
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- 海賊5 -
「さあ上陸だぞ!お前ら!」
ニックがそう声をあげる。
「フォックス。船は任せたぞ。」
トーマスに肩を叩かれる。
だが、フォックスはそれどころでは無かった。
一瞬目がおかしくなったのかと思った。
しかし、スペンサー島に何年も住んでいたフォックスが間違えるはずが無い。
ここは、東海岸だ。
奴らの会議では、間違いなく西海岸に上陸予定だと言っていたはずだ。
フォックスはそれを聞いてアーマン大佐に連絡をし、西海岸に兵を置いた。
間違えた、のか?
考えていても無駄だ。
一刻も早くアーマン大佐に連絡をしなければ。
今、東海岸はガラ空きだ。
兵の一つもいない。
しかも、スペンサー島の王宮は東海岸側にあるのだ。
最後にエマが船を降りたのを確認し、アーマン大佐に無線を繋ぎ、現状を伝える。
「なんて事だ。東海岸から来るだなんて。だがこの国はついていた。幸いにもここにはまだ兵がいる。すぐに王宮の前に警備を置き、迎え撃つ準備をする。」
「なら、食い止める事は可能ですね!」
「ああ。とりあえず君は、その船を爆破し、王宮で待っている我々の軍に合流してくれ。いいな?」
「了解です。」
とにかく時間が無いため、フォックスは急いで爆破の準備を進める。
船中に火薬を仕掛け手短に爆破させる。
凄まじい轟音が鳴り響き、脆くも船は爆破して跡形もなくなった。
フォックスはその様を見て一息を吐き、足早にアーマン大佐に指定された場所へと向かう。
アーマン大佐が軍を敷いているのは王宮の東側に広がる森だという。
海賊の進行方向を考えての選択だろう。
当たりに木々が広がっている。
駆け足で森を移動していると、何かにぶつかった。
初めは木か?と思ったが、それは明らかに人であった。
しかも…
「大佐とお茶会でもしに行くのか?フォックスー?」
聴き慣れた声。
それは、間違いなくニックだった。
フォックスは後退りする。
なぜこいつが。
「おいおい、どこに行くんだ?フォックス?」
後退りするフォックスの背中に、また何かが当たった。
慌てて後ろを振り返ると、そこにはトーマスが居た。
挟まれた。
全部バレているのか?
怪しまれる様な動きはしていない筈。
なのに…
ガサガサガサ…
すると、さらに森の右側の木に隠れていたジェイムスとクリスが姿を現した。
万事休すか。
と思い、唯一誰もいない左に逃げようとした。
しかし、
そこからも木に隠れていたエマとメリザが姿を現した。
挟まれた、どころか、囲われている。
六人全員がフォックスに銃口を向けている。
数秒の沈黙が続いた後、ニックが口を開ける。
「船は爆破し終わったのか?」
ニックが薄笑いを浮かべながらそう言う。
まさか、気付かれていたのか。
フォックスに焦りが出始める。
だが、奴らがどこまで情報を知ってるのかが把握出来ない上、この状態で本当の事を言っても殺される運命に近付くだけだ、とフォックスは考え、あえてシラを切った。
だが、そんなフォックスの答えを無視し、ニックは言葉を続けた。
「あの船、気に入ってたんだけどな。お前にも気に入って貰えたと思ったんだがな。」
「ああ。俺もだ。驚いてる。真夜中に探検するぐらい船の事を気に入ってくれていると思ってたのに、爆破しちまうとはな。意外だぜ。」
ニックの言葉に、クリスが続ける。
「そうだな。楽しかったろ?真夜中の探検は。それだけじゃない。真夜中のドキドキの大佐との無線も、面白そうだったぜ。」
「てか、バレてないと思ってるのがウケる、あはは!」
メリザがケタケタと笑う。
「ああ。みんなで楽しんで聞いてたぜ。お前の無線。」
「当然、昨日のだーいじな無線もな。」
フォックスはその一言を聞いてハッとする。
全部知ってたのか。
全部分かっていたのか。
彼らに最早抵抗する術も無い、嘘を吐く余地も無いフォックスは、諦めてこう聞いた。
「いつから気付いてたんだ。」
「いい質問だ。教えてやろう。お前が、この海賊に入った時からだ。俺たちは全員知ってた。お前が、スペンサー島の手先だって事はな。」
ニックのその言葉にフォックスは絶句する。
いったい、今までの潜入は何だったんだ。
上手く泳がされてたって事か?
「この潜入は軍事機密の筈だ。外に誰かが漏らすとも思えないが。」
「アハハ。おもしろいねあんた。全部筒抜けだよ、あんたらの動きは。実はね、あんたの潜入の話はマーランド島の奴らに相談されたんだよ。」
メリザが笑いながらそう言う。
「何だと!お前ら、まさかマーランド島の手先なのか!」
「手先?それはちょっと違う。あくまで奴らは俺達を雇っただけだ。」
ニックが不可解な事を言う。
「雇う?」
「ああ、そうだ。俺達は確かに海賊だ。だが、そこらに蔓延る海賊とは違う。俺達はビジネスの海賊なんだ。通称、雇われ海賊。」
雇われ海賊?
聞いた事の無い響きだ。
「世の中には海賊という名義が欲しい人間がいるんだ。直接手を下さないで、海賊という立場の俺達を使って、国を攻める。」
「そんな国がどこにいるんだ!」
フォックスは叫ぶ。
「マーランド島だよ。俺達はマーランド島の要請を受けて、ダッケ島やヨーケ島、海賊船の破壊を行った。あれは、全部マーランド島の援助を受けていたんだ。」
だから、異常な程に強かったのか。
フォックスの中で合点がいく。
「この作戦も、マーランド島の指示通りだ。奴らは、直接この島を落としたいとは考えていない。海賊である俺達を利用して、国を落とす気だ。」
「何だと…!?」
フォックスは唖然とする。
自分はとんでも無い事をしてしまったのだ。
たかが一海賊がここに押し寄せて来るだけじゃない。この島にはマーランド島の兵達も来る。
しかも、スペンサー島は海賊達の陽動作戦で、混乱状態にある。
いち早く軍備を整えて、スペンサー島を守らねばならない。
唖然とするフォックスは何かの音を察知する。
耳を澄ます。
すると、いきなり木の影から人が現れた。
「会いたかったぞ。フォックス。」
「さあ上陸だぞ!お前ら!」
ニックがそう声をあげる。
「フォックス。船は任せたぞ。」
トーマスに肩を叩かれる。
だが、フォックスはそれどころでは無かった。
一瞬目がおかしくなったのかと思った。
しかし、スペンサー島に何年も住んでいたフォックスが間違えるはずが無い。
ここは、東海岸だ。
奴らの会議では、間違いなく西海岸に上陸予定だと言っていたはずだ。
フォックスはそれを聞いてアーマン大佐に連絡をし、西海岸に兵を置いた。
間違えた、のか?
考えていても無駄だ。
一刻も早くアーマン大佐に連絡をしなければ。
今、東海岸はガラ空きだ。
兵の一つもいない。
しかも、スペンサー島の王宮は東海岸側にあるのだ。
最後にエマが船を降りたのを確認し、アーマン大佐に無線を繋ぎ、現状を伝える。
「なんて事だ。東海岸から来るだなんて。だがこの国はついていた。幸いにもここにはまだ兵がいる。すぐに王宮の前に警備を置き、迎え撃つ準備をする。」
「なら、食い止める事は可能ですね!」
「ああ。とりあえず君は、その船を爆破し、王宮で待っている我々の軍に合流してくれ。いいな?」
「了解です。」
とにかく時間が無いため、フォックスは急いで爆破の準備を進める。
船中に火薬を仕掛け手短に爆破させる。
凄まじい轟音が鳴り響き、脆くも船は爆破して跡形もなくなった。
フォックスはその様を見て一息を吐き、足早にアーマン大佐に指定された場所へと向かう。
アーマン大佐が軍を敷いているのは王宮の東側に広がる森だという。
海賊の進行方向を考えての選択だろう。
当たりに木々が広がっている。
駆け足で森を移動していると、何かにぶつかった。
初めは木か?と思ったが、それは明らかに人であった。
しかも…
「大佐とお茶会でもしに行くのか?フォックスー?」
聴き慣れた声。
それは、間違いなくニックだった。
フォックスは後退りする。
なぜこいつが。
「おいおい、どこに行くんだ?フォックス?」
後退りするフォックスの背中に、また何かが当たった。
慌てて後ろを振り返ると、そこにはトーマスが居た。
挟まれた。
全部バレているのか?
怪しまれる様な動きはしていない筈。
なのに…
ガサガサガサ…
すると、さらに森の右側の木に隠れていたジェイムスとクリスが姿を現した。
万事休すか。
と思い、唯一誰もいない左に逃げようとした。
しかし、
そこからも木に隠れていたエマとメリザが姿を現した。
挟まれた、どころか、囲われている。
六人全員がフォックスに銃口を向けている。
数秒の沈黙が続いた後、ニックが口を開ける。
「船は爆破し終わったのか?」
ニックが薄笑いを浮かべながらそう言う。
まさか、気付かれていたのか。
フォックスに焦りが出始める。
だが、奴らがどこまで情報を知ってるのかが把握出来ない上、この状態で本当の事を言っても殺される運命に近付くだけだ、とフォックスは考え、あえてシラを切った。
だが、そんなフォックスの答えを無視し、ニックは言葉を続けた。
「あの船、気に入ってたんだけどな。お前にも気に入って貰えたと思ったんだがな。」
「ああ。俺もだ。驚いてる。真夜中に探検するぐらい船の事を気に入ってくれていると思ってたのに、爆破しちまうとはな。意外だぜ。」
ニックの言葉に、クリスが続ける。
「そうだな。楽しかったろ?真夜中の探検は。それだけじゃない。真夜中のドキドキの大佐との無線も、面白そうだったぜ。」
「てか、バレてないと思ってるのがウケる、あはは!」
メリザがケタケタと笑う。
「ああ。みんなで楽しんで聞いてたぜ。お前の無線。」
「当然、昨日のだーいじな無線もな。」
フォックスはその一言を聞いてハッとする。
全部知ってたのか。
全部分かっていたのか。
彼らに最早抵抗する術も無い、嘘を吐く余地も無いフォックスは、諦めてこう聞いた。
「いつから気付いてたんだ。」
「いい質問だ。教えてやろう。お前が、この海賊に入った時からだ。俺たちは全員知ってた。お前が、スペンサー島の手先だって事はな。」
ニックのその言葉にフォックスは絶句する。
いったい、今までの潜入は何だったんだ。
上手く泳がされてたって事か?
「この潜入は軍事機密の筈だ。外に誰かが漏らすとも思えないが。」
「アハハ。おもしろいねあんた。全部筒抜けだよ、あんたらの動きは。実はね、あんたの潜入の話はマーランド島の奴らに相談されたんだよ。」
メリザが笑いながらそう言う。
「何だと!お前ら、まさかマーランド島の手先なのか!」
「手先?それはちょっと違う。あくまで奴らは俺達を雇っただけだ。」
ニックが不可解な事を言う。
「雇う?」
「ああ、そうだ。俺達は確かに海賊だ。だが、そこらに蔓延る海賊とは違う。俺達はビジネスの海賊なんだ。通称、雇われ海賊。」
雇われ海賊?
聞いた事の無い響きだ。
「世の中には海賊という名義が欲しい人間がいるんだ。直接手を下さないで、海賊という立場の俺達を使って、国を攻める。」
「そんな国がどこにいるんだ!」
フォックスは叫ぶ。
「マーランド島だよ。俺達はマーランド島の要請を受けて、ダッケ島やヨーケ島、海賊船の破壊を行った。あれは、全部マーランド島の援助を受けていたんだ。」
だから、異常な程に強かったのか。
フォックスの中で合点がいく。
「この作戦も、マーランド島の指示通りだ。奴らは、直接この島を落としたいとは考えていない。海賊である俺達を利用して、国を落とす気だ。」
「何だと…!?」
フォックスは唖然とする。
自分はとんでも無い事をしてしまったのだ。
たかが一海賊がここに押し寄せて来るだけじゃない。この島にはマーランド島の兵達も来る。
しかも、スペンサー島は海賊達の陽動作戦で、混乱状態にある。
いち早く軍備を整えて、スペンサー島を守らねばならない。
唖然とするフォックスは何かの音を察知する。
耳を澄ます。
すると、いきなり木の影から人が現れた。
「会いたかったぞ。フォックス。」
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