笑って。

れい

文字の大きさ
上 下
1 / 1

笑って。

しおりを挟む


ずっとずっと、キミのことを見ていたよ。


キミが初めて、息をしたとき。

私の指を、握ってくれたとき。

腕の中で、眠っているとき。

一人が寂しくて、突然大泣きしたとき。

小さな口で、ごはんを食べてくれたとき。

拙い声で、名前を呼んでくれたとき。

震える足で、歩けるようになったとき。

こけてしまって、大泣きしたとき。

好きなものを、選べるようになったとき。

知らない誰かに、間違えてついて行っちゃったとき。

おねしょをしちゃって、恥ずかしそうにしていたとき。

友達とケンカをして、怒って帰ってきたとき。

自転車に乗れて、嬉しそうにしていたとき。

いってきますと、学校に向かったとき。


キミとは少しずつ、一緒にいる時間が減って。

だけどそれでも、キミのことを見ているよ。


写真を嫌って、俯いた顔をしていたときも。

テストでいい点を取って、自慢してきたときも。

友達を連れて、はしゃぎながら帰ってきたときも。

宿題もしないで、ずっとゲームをしているときも。

面倒臭がって、ずるいことを思いついたときも。

怒られて拗ねて、部屋に篭ってしまったときも。


おかしいね。

他にもたくさんあったはずなのに、なんて事ないことばかり、思い出してしまうね。

それでもキミを見ていたことに、変わりはないけれど。


夢中になれるものを、見つけたときも。

嫌いな人の、文句を言うときも。

少しずつ帰りが、遅くなっていくときも。

言葉遣いがちょっとずつ、悪くなっていくときも。

実はこっそり好きな人が、できたときも。


ずっとずっと、見ていたよ。

いつまで傍で見ていられるか、分からないけど。


得意な運動を、がんばるときも。

苦手な勉強を、がんばるときも。

お腹いっぱい食べて、すぐに寝てしまうときも。

日付を越えて、帰ってきたときも。

朝早くに、出かけていくときも。


話す言葉も減っていって、それでもキミを、見ているよ。

いつか、一人で遠くに部屋を持って。

いつか、年に数回だけ、帰ってきて。

いつか、社会の仲間入りを果たして。

いつか、大事な人を、連れて帰ってきて。

いつか、誓いを交わすようになって。

いつか、守りたいものができて。


いつか、それも少しずつ、キミの手を離れて。


どこまで私は、見ていられるだろう。

どこまで私は、話を聞いてあげれるだろう。

それでも私は、ずっと見ているよ。

キミの行く末を、遠いいつの日か、私たちのところへ帰ってくるまで。


ずっとずっと、見ているよ。

だからだいじょうぶ。笑って。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...