39 / 86
第三章
エレオノーラ邸にて
しおりを挟む
◇
「ようこそ我が邸へ」
「お、お招きいただきありがとうございますわ」
魔境と王国を分断する大渓谷の中、巨大な岩を利用したエレオノーラの邸の外観は、まるで岩の中に埋もれている様な不思議なものだった。
エレオノーラに招かれ中に入ると、室内の壁は一部に剥き出しの岩肌を残しつつ、渓谷側の壁一面を使った大きな窓からはどこまでも続いていく雄大な渓谷の岩壁と、谷底を流れる大河が一望でき、その圧巻のスケールに初めてここを訪れたミリアム、エミリオ、レオナルドの三名は息を呑んだ。
「すごい眺めだな」
「まさか断崖絶壁の途中に邸があるとは…」
三人がエレオノーラの邸に召喚されると、すでにそこにはベアトリーチェ、ヴァレリア、ロビンが揃っていた。
「ミリィお姉さん!」
「まあ、ロビン!」
両手を広げながら嬉しそうにロビンが走ってくると、ミリアムも同じ様に両手を広げてロビンを抱きしめた。
それを見ていたエミリオとレオナルドだが、反応はそれぞれだ。
天使のような幼い少年と愛する妹の心温まる交流にレオナルドが頬を緩ませていると、わずかに眉間に皺を寄せたエミリオが口を開く。
「レオ、私はおかしいのだろうか」
「うん?」
「今ロビンに嫉妬している」
「…子供だぞ?」
ロビンに手を引かれベアトリーチェ達のいるサロンへと進むミリアム。そんな二人の姿を眺めながらエミリオは「はぁ」とため息をつく。
「私だってミリアム嬢と手を繋ぎたいし、抱き締めたいし、あんなに嬉しそうな顔で迎えられたい」
「…エミル、お前なかなか気持ち悪い奴だな」
話し込みなかなか進んでこない二人にミリアムが気付き、声をかける。
「お兄様、エミリオ様!どうされたのですか?」
手を振るミリアムを見てエミリオは頬を緩め、ミリアムに駆け寄って行った。
「…重症だな」
◇
「この図案の場合、ここはバックステッチよりチェーンステッチにした方が良くなる、ほら」
「まあ、本当ですわ!こちらの方が華やかになりますのね」
「ここまで刺したら声をかけて」
「はい!ありがとうございます」
本日刺繍を教わるついでに子守要員として呼ばれたミリアムが、ロビンの子守をしながら刺繍に勤しんでいる間に、他の者は一連の事件について話し合う。
「それじゃあ、今日は一連の事件について状況を整理しつつ、犯人の目論見を推測するわよぉ。それによって次に打つ手を考えましょう」
ベアトリーチェの声掛けに各々姿勢を正す。
今日エレオノーラの邸で会議をしているのは訳があった。
アレッシア誘拐事件の際、“ジル”の正体とフェリーネ家の事がわかった途端にアレッシアが解放された。おまけに花園の邸に踏み込んだ時にはすでに邸はもぬけの殻。恐らく王城内には間諜がいることが疑われた。
よって、一連の事件に関連していそうな“人為的異世界転移事件”、“黒龍事件”、“アレッシア誘拐事件”の3つは議会に通さずに秘密裏に捜査を進めることにした。
会議をしていること自体を悟らせない為、ベアトリーチェの邸に集まることを控えることにしたのだ。
ヴァレリアの邸はこれだけの人数が入るには手狭なので、今回エレオノーラの邸に集まることとなった。
「まずロビンの件。これが一番手掛かりが少ないが、異世界転移という点から考えると魔法に長けているものが絡んでいる事は確かだ」
「樹海でロビンを発見した位置から、最初にロビンが召喚された場所は恐らく王都周辺ね。あの辺りは猛獣も魔獣も比較的少ないから、捨てる方も樹海の奥まで入りやすい」
「おかげでロビンもヴァレリアが保護するまで無事でいられたわけだがな」
もし、捨てられたのが獣が多い場所だったらどうなっていたか…。考えただけでも恐ろしい。
現在は樹海の邸で共に暮らし、一番ロビンと一緒にいる時間の長いヴァレリアは怒りで眉を顰める。
「あの子の記憶では犯人は赤いローブの集団、あれこれ指示を飛ばしてた中心人物は中年の男だったわ。…樹海に捨てろと命じたのもそいつ。絶対に赦さない」
「シアの誘拐の時も実行犯は“赤いローブの集団”だったな。誘拐先での身の回りの世話は基本的には“ジル”と呼ばれる男、ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネが行っていたようだが、時折ジルに指示を仰ぎに来る赤いローブの人間を目撃したそうだ」
「じゃぁ、その中年の男は現フェリーネ伯なのかしらぁ?」
「それを決めつけるのはまだ時期尚早だな…状況証拠しかない」
エレオノーラは先日魔女二人に見せた小瓶を棚から取り出し、エミリオとレオナルドに渡す。
「これは?」
「恐らくは黒龍の幼体の血液を固めたものだ。渓谷の谷底に消音の魔法陣がいくつか敷かれ、そこに設置されていた」
「消音の魔法陣?」
「ああ、そこには黒龍の幼体の悲鳴が籠められている。今は封印しているから大丈夫だが、何もしなければ常にその赤い石から悲鳴が発され続ける。それでは人間の耳にも聞こえてしまうから、消音の魔法陣の上に設置することで聴覚が異常発達した黒龍にだけに聞こえるようにしたんだ」
「つまり、黒龍の若い個体は人為的に誘い出された…となるのですね」
「酷いことを…」とエミリオとレオナルドが眉間に皺を寄せる。
「ですが、なぜわざわざそんな事を?黒龍の髭と漆黒の魔石が目的ならば、幼体を仕留めた時点で目的は達せられているはずです」
エミリオの言葉にエレオノーラは自嘲ぎみに答える。
「恐らくは、若い個体を使って私を消そうとしたんだろう」
「エレオノーラ様をですか!?まさか救国の魔女に手をかけるなど!」
「多くの者は代替わりしていると思っているが、真実を知る者の中には私をよく思わない者は多い。私はダークエルフと人間のハーフだからな」
「エリー…」
「それでな、フェリーネ侯爵家が起こした“救国の魔女排除運動”について思い出していたんだが、今回の騒動はその続きなんじゃないのか?」
エレオノーラの発言にヴァレリアはハッとする。
「そうか!フェリーネ家では白銀の髪に金色の瞳の人間は聖なる竜の血を色濃く受け継いでいる者だと信じられていた。これを“混ざりあいし者”と解釈した」
「“ジル”はイヴァンに高貴な血筋の美しい娘を探していると言って近づいてきたと言ったな。それが“高貴なる者”か…」
「それで“遠きところより遣わされし者”を得るために異世界転移…なるほど。しかし、疑問があるのだが」
レオナルドの言葉に全員が振り返る。
「“高貴なる者”、“遠きところより遣わされし者”が娘である必要はあるのか?しかも“高貴なる者”の時には態々高貴な血筋の美しい娘と言っているが?」
「それはたぶん犯人の趣味でしょうね!」
ヴァレリアの言葉に一同は「え、何かすごく嫌だな」と遠い目になった。
「ようこそ我が邸へ」
「お、お招きいただきありがとうございますわ」
魔境と王国を分断する大渓谷の中、巨大な岩を利用したエレオノーラの邸の外観は、まるで岩の中に埋もれている様な不思議なものだった。
エレオノーラに招かれ中に入ると、室内の壁は一部に剥き出しの岩肌を残しつつ、渓谷側の壁一面を使った大きな窓からはどこまでも続いていく雄大な渓谷の岩壁と、谷底を流れる大河が一望でき、その圧巻のスケールに初めてここを訪れたミリアム、エミリオ、レオナルドの三名は息を呑んだ。
「すごい眺めだな」
「まさか断崖絶壁の途中に邸があるとは…」
三人がエレオノーラの邸に召喚されると、すでにそこにはベアトリーチェ、ヴァレリア、ロビンが揃っていた。
「ミリィお姉さん!」
「まあ、ロビン!」
両手を広げながら嬉しそうにロビンが走ってくると、ミリアムも同じ様に両手を広げてロビンを抱きしめた。
それを見ていたエミリオとレオナルドだが、反応はそれぞれだ。
天使のような幼い少年と愛する妹の心温まる交流にレオナルドが頬を緩ませていると、わずかに眉間に皺を寄せたエミリオが口を開く。
「レオ、私はおかしいのだろうか」
「うん?」
「今ロビンに嫉妬している」
「…子供だぞ?」
ロビンに手を引かれベアトリーチェ達のいるサロンへと進むミリアム。そんな二人の姿を眺めながらエミリオは「はぁ」とため息をつく。
「私だってミリアム嬢と手を繋ぎたいし、抱き締めたいし、あんなに嬉しそうな顔で迎えられたい」
「…エミル、お前なかなか気持ち悪い奴だな」
話し込みなかなか進んでこない二人にミリアムが気付き、声をかける。
「お兄様、エミリオ様!どうされたのですか?」
手を振るミリアムを見てエミリオは頬を緩め、ミリアムに駆け寄って行った。
「…重症だな」
◇
「この図案の場合、ここはバックステッチよりチェーンステッチにした方が良くなる、ほら」
「まあ、本当ですわ!こちらの方が華やかになりますのね」
「ここまで刺したら声をかけて」
「はい!ありがとうございます」
本日刺繍を教わるついでに子守要員として呼ばれたミリアムが、ロビンの子守をしながら刺繍に勤しんでいる間に、他の者は一連の事件について話し合う。
「それじゃあ、今日は一連の事件について状況を整理しつつ、犯人の目論見を推測するわよぉ。それによって次に打つ手を考えましょう」
ベアトリーチェの声掛けに各々姿勢を正す。
今日エレオノーラの邸で会議をしているのは訳があった。
アレッシア誘拐事件の際、“ジル”の正体とフェリーネ家の事がわかった途端にアレッシアが解放された。おまけに花園の邸に踏み込んだ時にはすでに邸はもぬけの殻。恐らく王城内には間諜がいることが疑われた。
よって、一連の事件に関連していそうな“人為的異世界転移事件”、“黒龍事件”、“アレッシア誘拐事件”の3つは議会に通さずに秘密裏に捜査を進めることにした。
会議をしていること自体を悟らせない為、ベアトリーチェの邸に集まることを控えることにしたのだ。
ヴァレリアの邸はこれだけの人数が入るには手狭なので、今回エレオノーラの邸に集まることとなった。
「まずロビンの件。これが一番手掛かりが少ないが、異世界転移という点から考えると魔法に長けているものが絡んでいる事は確かだ」
「樹海でロビンを発見した位置から、最初にロビンが召喚された場所は恐らく王都周辺ね。あの辺りは猛獣も魔獣も比較的少ないから、捨てる方も樹海の奥まで入りやすい」
「おかげでロビンもヴァレリアが保護するまで無事でいられたわけだがな」
もし、捨てられたのが獣が多い場所だったらどうなっていたか…。考えただけでも恐ろしい。
現在は樹海の邸で共に暮らし、一番ロビンと一緒にいる時間の長いヴァレリアは怒りで眉を顰める。
「あの子の記憶では犯人は赤いローブの集団、あれこれ指示を飛ばしてた中心人物は中年の男だったわ。…樹海に捨てろと命じたのもそいつ。絶対に赦さない」
「シアの誘拐の時も実行犯は“赤いローブの集団”だったな。誘拐先での身の回りの世話は基本的には“ジル”と呼ばれる男、ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネが行っていたようだが、時折ジルに指示を仰ぎに来る赤いローブの人間を目撃したそうだ」
「じゃぁ、その中年の男は現フェリーネ伯なのかしらぁ?」
「それを決めつけるのはまだ時期尚早だな…状況証拠しかない」
エレオノーラは先日魔女二人に見せた小瓶を棚から取り出し、エミリオとレオナルドに渡す。
「これは?」
「恐らくは黒龍の幼体の血液を固めたものだ。渓谷の谷底に消音の魔法陣がいくつか敷かれ、そこに設置されていた」
「消音の魔法陣?」
「ああ、そこには黒龍の幼体の悲鳴が籠められている。今は封印しているから大丈夫だが、何もしなければ常にその赤い石から悲鳴が発され続ける。それでは人間の耳にも聞こえてしまうから、消音の魔法陣の上に設置することで聴覚が異常発達した黒龍にだけに聞こえるようにしたんだ」
「つまり、黒龍の若い個体は人為的に誘い出された…となるのですね」
「酷いことを…」とエミリオとレオナルドが眉間に皺を寄せる。
「ですが、なぜわざわざそんな事を?黒龍の髭と漆黒の魔石が目的ならば、幼体を仕留めた時点で目的は達せられているはずです」
エミリオの言葉にエレオノーラは自嘲ぎみに答える。
「恐らくは、若い個体を使って私を消そうとしたんだろう」
「エレオノーラ様をですか!?まさか救国の魔女に手をかけるなど!」
「多くの者は代替わりしていると思っているが、真実を知る者の中には私をよく思わない者は多い。私はダークエルフと人間のハーフだからな」
「エリー…」
「それでな、フェリーネ侯爵家が起こした“救国の魔女排除運動”について思い出していたんだが、今回の騒動はその続きなんじゃないのか?」
エレオノーラの発言にヴァレリアはハッとする。
「そうか!フェリーネ家では白銀の髪に金色の瞳の人間は聖なる竜の血を色濃く受け継いでいる者だと信じられていた。これを“混ざりあいし者”と解釈した」
「“ジル”はイヴァンに高貴な血筋の美しい娘を探していると言って近づいてきたと言ったな。それが“高貴なる者”か…」
「それで“遠きところより遣わされし者”を得るために異世界転移…なるほど。しかし、疑問があるのだが」
レオナルドの言葉に全員が振り返る。
「“高貴なる者”、“遠きところより遣わされし者”が娘である必要はあるのか?しかも“高貴なる者”の時には態々高貴な血筋の美しい娘と言っているが?」
「それはたぶん犯人の趣味でしょうね!」
ヴァレリアの言葉に一同は「え、何かすごく嫌だな」と遠い目になった。
0
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる