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第四十九章 フィンの二人の女王

12 パリス連合王国の成立

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 ハイドリア連合王国が成立後に、アウセクリス女王が即位する予定です。
 いま私はとても忙しく、二つのフィンを行き来しています。
 とくに、このフィン北部は、何かにつけて南部とはり合います。

「まるで子供の喧嘩ではありませんか?」
 とグリゴリー宰相に愚痴ります。
 このことはグリゴリーさんへの、宰相就任要請の時の会談の中でも話しをしました。

 そもそも南北の経済格差が激しく、資源の豊富な南部に対して、北部は鉄鉱石以外、これといった産業がない状態です。
 グリゴリー宰相の手腕で、内乱前の状態まで治安が戻ってきて、平穏になってきている北部としては、今後はこの南北格差を埋めるのが、北部の至上命題です。

 そもそもこの格差が、リヒャルトなどの北部王国の、指導者の不満を募らせた根本原因と思われます。
 グリゴリー宰相とは、そのためにこの際、遷都することで意見の一致を見ました。

 ちょうどハイドリアの話しが、宰相の耳にも漏れ聞こえたようで、北部の国民の対抗心に訴えて、これを実現させるとのことです。

 ルーシーとルーンの国境あたりの、私の直轄領になったタリンの併合地よりの、『パリス』という町を新都に選定し、王宮と五王国の公館を突貫工事で建設、改修しています。
 どうやら私の即位式には間に合う予定です。

 なぜこの地を選んだかというと、源兵衛さんの情報では、良質の石炭が埋蔵されており、一部では露天堀も可能な場所があるからです。

 そしてこのフィン北部は平野部が多く、多少乾燥しています。
 しかし日射量はそれなりにありますし、エラムの主食である、小麦のような穀物も何とか栽培出来そうです。
 要は水さえあれば、穀倉地帯も夢ではない場所です。

 幸いフィン北部を貫く大きな河川があります。
 ここから治水を兼ねて、環境破壊を起こさぬ程度に、農業用水を作り、水を調達することにしました。

「アウセクリス女王陛下、膨大な時間がかかります。国家百年の計には良いでしょうが、当座は間に合いません。」
「だれかがどこかでしなければなりません、一番効率のよいのはどこですか、最短で最新の場所を検討してください。」

 その結果、あちこちの中小河川と散在する泉を経由すると、かなりの地域に水を引けることが可能となります。
 またこの『パリス』の近くに、その川が流れているのも好都合です。

 石炭もこの水路を使用すれば、比較的楽に積み出すことができます。
 新設する水路は約二キロですが、この二キロというのはエラムでの二キロです、そもそもこのエラムでは度量衡はバラバラでした。

 私の統治下にある地域では、大人がエラム時間での一時間で歩く距離を一キロとしました。
 つまり地球で言うところの12/20 X4キロ、地球の2.4キロを一キロとしています。

 私はグリゴリー宰相に、財政負担がどれほどできるか聞きますと、どうやら財源がたりません。
 たった2キロですが1キロ分しかありません、しかたありません、あと一キロは何とかしましょう。

「グリゴリー宰相、私の信用で資金を調達しましょう。」
「突貫工事で行いますから少し高くつきますが、まぁ国民に仕事が作れるでしょう。」
「でも、できるだけ女性にも仕事を回してくださいね、賃金は半分になるかもしれませんが。」
「で、どこから借りましょうかね。」

 結局、カルシュから資金を調達することに決めました。
 アポロさんがむくれていましたが、金融を独占させるのはね。

 このごろカルシュの金融機関も復活してきて、このような大規模国家事業に、融資できるようになったのです。
 信金中央金庫みたいなものを設立、融資業務をみとめましたからね。

「ひと月で完成しましょう。」
 私の大号令で突貫工事が始まります、新しい国のためです、がんばりましょう。
 こうして用水は完成し、この『パリス』で私の即位式も行われます。

 グリゴリー宰相が、
「ここにパリス連合王国の成立を宣言する、アウセクリス女王に栄光あれ。」
 こうしてフィンに、二人の女王が誕生しました。

 そして二つの王国は、一つの協議機関を作りました、再び内乱が起こらぬように。
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