上 下
50 / 124
第四十四章 復興への努力はエラム的

07 見習い神官は食べ物を頂く

しおりを挟む

 ここは商都ホッパリア、リゲルと違い、何とか動乱を切り抜けた町です。
 私はアムリア王国イナンナ女王として、またまた即位することになりました。

 王宮はそのままアムリア公館を使います。
 拡張をと、元老院議会がいってくれれましたが、復興途上のアムリア王国に、その様な負担をかけるわけにはいきません。
 丁寧に丁寧にお断りしました。

 さてその昔、私はホッパリアをうろついたことがあります。
 ヴィーナス・セリムとして、図書館に通っていたました。
 当時の私はお気楽なものです。

 サリーとさんビクトリアさんと三人で観光をしていました。
 まだアムリア帝国は健在で、この町は繁栄を謳歌していました。
 まさか私がこの国の女王になるとは……どれほど創造をたくましくしても、無理でしたでしょう。

 いまのホッパリアは、姿かたちは変わりませんが、活気を失い、親を亡くした子犬が、悄然とうろついているような、そんなうらさびしさを感じます。

 あの時、あまりの経済力に酔いしれて、モラルの低下を感じた私でしたが、やはりそれは贅沢な感想だったと、今は思えます。

 私は見習い神官の服装で、町を散策しながら考えました。
 戦乱に舐めつくされたアムリアの国土には、この町の繁栄が必要です。

 ホッパリアから復興を初めて、その活力を利用して、アムリア全土に昔の繁栄を取り戻しましょう。
 アムリアの現状の前には、綺麗ごとは無しです。

 私の王宮は、アムリアが戦乱の中より立ち上がり、帝都リゲルがその威厳を取り戻した時、そのリゲルに作りましょう。
 その時は遠慮なく、でっかい王宮を作りましょう。

「そこの見習いさん、元気をだしなよ、腹が減ったのかい。」
 赤ら顔のおじさんというより、おっさんが声をかけてきます。
 一瞬、ぎょっとしましたが、私はフードをかぶって顔を隠しています。

「いえ、そういうわけでは……」
 いわれてみれば、朝からお食事をしていません。
 そんなに飢えた姿をしていたのでしょうか。

 いつの間にか、広場まで歩いていたようです。
「まぁ、これでも食べなよ、商品だがおごってやるよ、なにがいい?」
 私は一番安い札がついている物を、頂くことにしました。

「遠慮するんだね、さすがは神官さんだ、奥ゆかしいね。」
 私はフードを取り、
「ありがとうございます、頂きます。」
 とお礼をいいました。
 おじさんは私をしみじみと見つめています。

「何かついていますか?」
「いや、あんまり綺麗なもんだから、つい見ほれてしまって……いや失礼した。」
「それにしても見習いさんは別嬪さんだね。」

「あんたぐらいになれば、あのイシュタル女王がほっておかないだろう。」
「楽に暮らせるのに、なにもお腹をすかして彷徨わなくても。」
 ここでもイシュタルさんは女好きだそうです、しかたないと、近頃思いますが……

「この動乱でだれもが苦労しているからね、あんたもこの町へ流れてきたんだろ。」
「なんにもしてやれないが、ほれ、もう一つ持って行け、ただし宣伝してくれよ。」
「あんたがいえば必ず売れるから。」

 この人は私を知っているように思います、多分、顔を見た時にきずいているような感じがします。
 でも、おくびにも出さぬ所にはいたく感心しました。

 それでも私は頭を深々と下げました、ありがたかったです。
 最初は本当に親切心ですから、人の優しさは心を豊かにします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~

卯月らいな
ファンタジー
魔法が歌声によって操られる世界で、男性の声は攻撃や祭事、狩猟に、女性の声は補助や回復、農業に用いられる。男女が合唱することで魔法はより強力となるため、魔法学園では入学時にペアを組む風習がある。 この物語は、エリック、エリーゼ、アキラの三人の主人公の群像劇である。 エリーゼは、新聞記者だった父が、議員のスキャンダルを暴く過程で不当に命を落とす。父の死後、エリーゼは母と共に貧困に苦しみ、社会の底辺での生活を余儀なくされる。この経験から彼女は運命を変え、父の死に関わった者への復讐を誓う。だが、直接復讐を果たす力は彼女にはない。そこで、魔法の力を最大限に引き出し、社会の頂点へと上り詰めるため、魔法学園での地位を確立する計画を立てる。 魔法学園にはエリックという才能あふれる生徒がおり、彼は入学から一週間後、同級生エリーゼの禁じられた魔法によって彼女と体が入れ替わる。この予期せぬ出来事をきっかけに、元々女声魔法の英才教育を受けていたエリックは女性として女声の魔法をマスターし、新たな男声パートナー、アキラと共に高みを目指すことを誓う。 アキラは日本から来た異世界転生者で、彼の世界には存在しなかった歌声の魔法に最初は馴染めなかったが、エリックとの多くの試練を経て、隠された音楽の才能を開花させる。

野生子グマの人生変転記

きこうダきこう
ファンタジー
「それじゃあ今日からコイツの事を······子グマだから"ベアーズ"って呼ぶ事にしよう、アッシュ兄ちゃん」「ハハッ。そうだな、レックス」  ある森に父ちゃんと暮らしていたボクは、ヒトが仕掛けていたワナによってケガをして動けなくなってしまった。そうしてうずくまっていたボクの所に来てケガを治してくれたのもヒトの子供達だった。そしてケガが治って自由にまた動き回れるようになった事でボクはケガを治してくれたその子供達、とりわけ皆から"レックス"って呼ばれている子を気に入った。  それからレックスが森に来る度にボクはレックスの傍に寄り、ついには彼が住んでいる"ムラ"の中にまで付いて行ったりした。そうした事もあってレックス達はボクや父ちゃんに名前を付けてくれたのだ。  けれども、ある時レックスは森から遠く離れた所にある"ガッコウ"って所に行くため森を離れてしまったのだった。  レックスに会えなくなって寂しがっていたんだけど、そのレックスがまた森に帰ってきた! と思ったらそのガッコウの用事でボクの力を一時的に借りに来ただけだった。  その用事が終わったらまたレックスと離ればなれに······そんなのイヤだ! そう思ったとたんボクはレックスの背中にしがみつき、絶対に離れまいとしたのだった。  そのボクの思いが通じて······レックスが行っているガッコウでレックス達と一緒に過ごせれるようになったのだった······。

妹は私のものを欲しがるのです・・・。だから私は・・・

かぜかおる
ファンタジー
1話目は妹視点、2話目は姉視点です。 ふんわり設定・・・

封印魔法の活用方法 ~スキルで自由に生きていく~

アイギス山本
ファンタジー
 山本 康介(18)は隠れオタクで特に親しい友達も居らず目立たない存在だった。そんな彼は高校の昼休み中に突如として現れた魔方陣により異世界に飛ばされてしまう。   転移した異世界でチートスキルに目覚め、覚えたての封印魔法で、封印されていた魔族の女の子を助ける。その後、一緒に冒険者となった二人はダンジョンを攻略しつつ、メンバーを増やしつつ成長していく…が  …彼女たちの取り巻く環境が、国が、世界が行く手を阻み、襲いかかってくる…これは━━そんな彼がチートを駆使し、女の子と仲良くしつつ、苦難を乗り越え…自由に生きようとする……そんな物語。

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

理不尽まみれの異世界転生~最弱から始まる成り上がりサバイバル~

灰猫さんきち@2シリーズ書籍化
ファンタジー
主人公ユウが異世界転生した先は、鬼畜難易度のゲームを思わせる理不尽まみれの世界だった。 ユウのステータスはオール1! 最弱の魔物にボコられて死にかける始末。 理不尽な目にあいまくって毎日生きているのがやっとの状態だ。 それでも少しずつお金を貯めて腕を上げ、じょじょに強くなっていく。 やがて仲間を増やして店を経営したり、鍛冶スキルを覚えて生産しまくったり、国と交渉して開拓村を作ったり。 挑戦を続けるユウはいつしか最強になっていく。 最後にユウがやり遂げる偉業とは!? 最弱から始まるユウのサバイバル&成り上がり物語。 ※ファンタジー小説大賞参加中!投票よろしくお願いします。

ある月の晩に  何百年ぶりかの天体の不思議。写真にも残そうと・・あれ?ココはどこ?何が起こった?

ポチ
ファンタジー
ある月の晩に、私は愛犬と共に異世界へ飛ばされてしまった それは、何百年かに一度起こる天体の現象だった。その日はテレビでも、あの歴史上の人物も眺めたのでしょうか・・・ なんて、取り上げられた事象だった ソレハ、私も眺めねば!何て事を言いつつ愛犬とぼんやりと眺めてスマホで写真を撮っていた・・・

処理中です...