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第四十二章 思惑の国際会議

02 領土分捕り合戦

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 このやり取りをクルト宰相が見ていました。
 あとで話す機会があった時、密かに「さすがは巫女様、うまいですね。」といいます。
 その後、こうも云いました。

「巫女様は女好きで有名です、ご機嫌伺いに、必ず美女を献上してくるものがいます。」
「というより全員でしょうが、自選もいますから、気をつけてください。」
「モルダウもご多分もれず、準備はしております。」

「いえ、これ以上は……、勘弁してくださいよ。」

 会議はダフネさんが議長です。
 まずアムリア帝国領についてです。

 まず新しいアムリア帝国は、ほぼ半分ほどに縮小して、存続することになりました。
 大陸全土の15パーセントほどですが、ホッパリアを首都とし、帝国は王国と名を変えます。
 現在、君主は空位となります、この後に成立する議会で、決定することになっているのです。

 一院の議会制、寡頭制と呼ばれる、古代ローマ共和政に似ているホラズムの政体を、採用することになります。
 宰相の権力をけん制できるはずですが、当面は教団の保護下にはいります。
 次席賢者が政務を担当することで決着しました。

 軍事はロマノフ名誉騎士団団長が握ることになります。
 イワン団長を呼び、新しいアムリア王国の治安と、国家の再建に尽力するように命じました。

 しかし、だれか優秀な人材が必要です。アムリアを担う人材……、一人いますが……
 皆、ある人を頭に浮かべているのですが……この人が抜けると損失が大きいのです。

「だめです、ピーターさんを引き抜くと、教団の事務が滞ります、どうなるか想像できるでしょう!」
 やはりジジさんが断固反対しています。

 しかし宰相はピーターさんしかありえません、こちらが優先でしょう、内定しておきましょうね。
 絶対に、ピーターさんの妻は抱くことのないようにしなくては……私は固く決意しています。

「後任ですが、要は事務処理ができれば、当座はしのげるのでしょう。」
「巫女様の教え子の中の、簿記と算盤をできるものを採用すればどうですか。」
 と、ダフネさんがいいます。

 ジジさんが、
「行政府に女官ですか?」
 と云いましたが、ピーターさんの奥さん候補の件がありますので、それ以上の反対はありませんでした。

 クリスティーナさんは国母、これで肩の荷が一つ減りました。

 アムリアの残り半分は分割されます。
 まずキリー周辺はキリーに併合、ジャバ王国内の一つの自治領になりました。
 一応、アナスタシアさんが自治領主です。

 教団領も倍増します、これで教団領は大陸の一割ほどの領土です。

 アルジャ辺境伯領とガルダ村周辺は一括して、ダフネさんの提案で、私のお化粧料としての直轄領になりました。
 約大陸全土の3パーセントほどでしょう。
 ちなみにキリーは約2パーセントです。

 そして残りの5パーセントは、フィン連合王国に合併されました。
 フィンはもともと世界の二割ほど、構成する王国1つあたりの平均は、2~3パーセントですから、王国二つ分です。

 これがフィン北部のリヒャルト王のタリン王国に編入されました。
 新しいタリン王国は、新しいアムリア帝国の半分ほどもあります。
 これはこのままでは済まないでしょう。

 やはりフィンの新しい宰相は愚かです、ハイドリッヒが草葉の陰でなんと思うでしょうか。
 しかしタリンにとっては国威高揚です、リヒャルト王はタリン国民には英雄でしょうね。

 一応、私は言いました、
「戦死した兵士の家族のことを、大事にしてくださいね」と。

 タリンだけが繁栄するのは、ガルダで死んだフィンの、他の王国兵士が浮かばれません。
 いよいよなら、大陸の一割となった教団領で、ご遺族のことは何とかするつもりです。

 こうしてアムリア分割を話し合う、イーゼル会議の第一日はひとまず終わりました。

 夜、ダフネさんがクルト宰相とやってきました。
「タリンの野心はフィンを崩壊させますね。」
 と私がいいますと、クルトさんが、
「もう止められません、フィンも最後を迎えつつあります。」

「亡きハイドリッヒ王は、このことを懸念されていましたが……」
「モルダウはフィン南部の他の二つの王国と、連合王国を離脱するかもしれません、その時はお願いします。」

「他の王国は?」
「去就については本当に分かりませんが、タリンと共に行動すると思います。」

「戦争は避けてくださいよ!」

 クルト宰相が帰った後に、私はダフネさんに云いました。
「いつまで続くのでしょうか、この愚かな行いを、泣くのはいつも女なのですが。」
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