惑星エラム 第四部 新世界編【ノーマル版】

第四十一章 ハレム騒動

０５ オブザーバーの方の訴え

　しかし、ここでアンリエッタさんたち、オブザーバーの方たちの要請がありました。
　つまり夫のある女にも、愛人の道を開けという要請です。
　これは揉めています。

　そもそもエラムでは、女が女の愛人を作るのは何ら不道徳でもなく、ごく普通の風習である。
　女性の比率が圧倒的に高いエラムです、このようになるのは理解できますが……

　一夫多妻制で、なお且つ女性婚多妻制という非常に変わった婚姻制度がまかり通り、さらに言えば女性は基本的に夫または女主人の財産であり、未婚の場合は父親または母親の財産です、売買婚が普通なのです。

　勿論、愛情がベースにあるのはたしかですが、上流階級になればなるほど、女性は売り物になるのです。
　このような制度なので、オブザーバーの方たちの要請はごく当然で、私のような高位の女にたいして、妻が愛人になるというのは、『珍しくない』というのです。

　でも百歩譲って、私がアンリエッタさんを抱くのですか？
　どのような顔をして抱くのですか？

　こればかりは出来ません、私は正直に打ち明けました。
　私の所属していた世界の論理感が、それを許さないということを……
　これが崩れると私が崩れてしまう。
　エラムの論理に合わせるべきでしょうが、堂々とは私には出来ません。

　こう言うとアンリエッタさんが、
「巫女様のお気持ちは理解できました、しかし私たちの立場をお考えください。」
「私たちは巫女様のお側に仕え、巫女様に抱かれもしない女、その様な魅力のない女を、なぜ主人は大事に飼っているのか、このようにいわれるのです。」

「私たちではなく、愛する主人が世間の嘲笑の的になるのです。」
「現にピエールは、その様なあざけりを受けています。」
「主人は武人ですから気にもしませんが、妻の私としては耐えられません。」

「一度でも巫女様にお仕えした以上、巫女様のお側を離れても、この嘲笑は付きまといます。」
「黒の巫女様のお側に居ながら、嫌われた女と……。」
「今、私はシビル神殿夫人の称号をいただいていますが、抱かれたことがないというのは、周知の事実です。」
　あのアンリエッタさんが、涙ながらに訴えました。

　サリーさんが、
「お嬢様、私もエラムの女、アンリエッタ首席女官長の訴えは本当です。」

「このエラムでは、そういうふうになると、社会的地位が揺らいでくるのです。」
「このようなことになるのは、女帝クラスですが、巫女様はエラムでは至高の存在、したがって世間の風も強いのです。」

「私はお嬢様をお呼びした時に、一度お嬢様の世界を垣間見ました。」
「だからお嬢様の論理感が、なぜこのように強固なのかは存知あげています。」

「それでもお願いいたします、このままではお嬢様の大事な臣下である、アポロ執政やピエール団長は、その地位にとどまれなくなります。」
「このままいくとトール隊長もリューリック団長も同様です。」
「もしピーター行政長官が妻をめとれば同じことが起こります。」

「一度でいいのです、御主人がたはお喜びになると、私が保障します、間違いなく安堵されるでしょう。」
「このあたりを御配慮願います。」

　このサリーさんの一言で、私は折れました。
「オブザーバーの方の訴えを了承いたします。」
「このあと、イーゼルの温泉へ保養に出ますので、その時、愛し合いましょう。」
「皆さん、これでよいでしょうね！」
　これには、ここにいる私の寵妃さんたちは、すぐに同意しました。