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第六十六章 情事日程その三

09 特別高等警察誕生 其の一

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「アンリエッタさん、どうも一度は、冷たい所を見せなければならないようです。」
 私は本格的に、一人の男を探しました。
 いましたね、アルジャに向かいつつある一団が……

 私は念じました。
『ヨハン、すこし早いですが仕事を命じます。』

 驚いたようですね、しかしさすがです。
『どのようなことをお望みで……』
 と、念じ返してくれました。

 取りあえず部下はそのままアルジャへ向かわせ、ヨハン一人の出頭を命じました。
「さて今より一人の男をここへ呼びだします、信用のおける私の部下です、この者の知恵を借ります。」
 そう言うと、私はヨハンをここへ転送しました。

 いまの私は一人ででも、その様なことができるほどに、成長しているのです。
 少々驚いた顔でしたが、私の前に膝まづきます。

「ヨハンさん、ここはイーゼルの私の部屋、貴方は今ハレムのど真ん中にいるのです。」
「用件は人さらい組織の抹殺、または情報提供です。」

「バーバラさん、オリヴィアさんを連れて来てください。」
「そしてこの部屋には、だれも近ずくなと厳命してください。」
 ヨハンさんは、見たものをべらべらしゃべらないでしょう、そのぐらいの心得はある男です。

 私は取りあえず、判明していることを説明しました。
「もし人さらいなら、ホラズム南部に巣くう組織です。」
「この組織なら詳しいことは把握しています、命じられれば、すぐに壊滅させて見せましょう。」

「壊滅?」
 私はヨハンを見つめました。

「お心は分かりました、一人残らず消して見せます。」
「シャルルのひざ元で可能ですか?」

「できるならば、お話を通していただきたいのですが、さらに出来れば、ホラズム連邦王国宰相にも通していただければ助かります。」

「期間はどれぐらい必要ですか?」
「二月いただければ。」

「資金は?」
「必要経費で結構ですが、我らの給料はどのぐらい頂けるのでしょうか?」

「隊員の数は300名ほどですね。」
「もう少し少なく296名です。」

「野戦警察と同じ待遇とします。」
「名称は特別高等警察とし、表の任務はエラム世界の裏社会対策、裏は知っているでしょう、目には目をですね。」

「とにかくリューリックには、この手紙を渡しなさい、宿舎や庁舎を用意するように、いってあります、所でジャイアールの奴隷市場の支配人は、噛んでいませんね。」
「お約束できるかと……」
「よろしい。」

 そこへバーバラさんが、オリヴィアさんを連れてきました。
 ヨハンがすこし眺めて、
「薬が使用されています、毎日毎日飲むと、一月で思考能力がなくなる物です。」

「先ごろ、北方列島から流れてきた薬ですが、今は流通しておりません。」
「私はこの状態から、治す方法を知りません。」

「それは私が治療いたします、貴方はこの恥ずべき組織を抹殺してください。」
「情けは入りません、裏の者どもに、ふざけたことをすると、こうなると思い知らせます。」

「この間、巫女様が死神を出された時点で、だれも逆らう馬鹿はいないはず。」
「今は人さらい組織は震えあがっています、この上に、無慈悲に対処して解散を命じれは、一挙に組織は消えてなくなります。」

「裏は裏なりに、生きるすべが残されるということが、認識されればですが……」

 解散なんて生ぬるいのですよ、禍根は断つべきですからね。
「私は無慈悲な死の女王、では、二ヶ月後を楽しみにしています。」
 この一言で十分、念を押すこともないでしょう。
「分かりました。」
 私はヨハンを隊列に戻しました。
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